空室物件の出口戦略 損切りで差がつく税務の5視点

投稿日:2026年07月21日

空室物件の出口戦略 損切りで差がつく税務の5視点

朝4時起きの税理士、丸山です。
本日は、空室や家賃下落で収益が悪化した物件の「出口戦略」についてお話しします。

 

「赤字続きの物件を売れば、その損で税金が戻ってくるはず」——そう考えている大家さんは少なくありません。
ですが、これは大きな誤解です。
個人が保有する賃貸用不動産を売って出た譲渡損失は、原則として給与所得や事業所得と損益通算できません
つまり“損切り”したつもりでも、税金は1円も戻らないケースがあるのです。
出口の設計を誤ると、含み損を抱えたまま高い税金だけを払い続けることになりかねません。

 
今日は、空室物件を手放すときに押さえたい5つの視点を整理します。

① 「持ち続ける」か「手放す」かの分岐点

まず見極めたいのは、その物件を持ち続ける意味があるかどうかです。
目安は3つ。

 
第一に空室率が3割を超え、家賃を下げても半年以上埋まらない
第二に毎月のローン返済が家賃収入を上回る「キャッシュフローの逆転」が続いている
第三に大規模修繕が数年内に迫り、積立が足りない

 
たとえば家賃10万円の部屋が3室空けば年間360万円の減収で、そこにローン返済と固定資産税が重なれば、手元資金はみるみる削られます。
よくあるのが「もう少し待てば埋まるはず」と数年粘り、結局は売却価格まで下がってしまうパターンです。
この状態が2年続くなら、感情ではなく数字で出口を検討すべきタイミングと言えます。
持ち続けるコストと、いま売って損を確定させるコストを、必ず両にらみで比べてください。

② 売却損には“使える損”と“使えない損”がある

ここが最重要ポイントです。
個人が賃貸不動産を売って出た譲渡損失は、同じ年の他の不動産の譲渡益とは相殺できますが、給与や事業所得とは通算できません(マイホームの買換え等、一部の特例を除く)。
つまり本業で高い所得税を払っている方が「損切りで税金が戻る」と期待しても、その損失は宙に浮いてしまうのです。

 
一方、法人が保有していれば、売却損は本業の利益と相殺でき、実質的な節税につながります
たとえば含み損2,000万円の物件を、法人なら本業黒字と相殺して約600万円前後の税を圧縮できる場面でも、個人だと同じ損失が“死に損”になることがあります。
同じ損切りでも、個人か法人かで手取りは数百万円変わるのです。
だからこそ、損の出そうな物件は、売る前に「どの器で持っているか」を点検することが欠かせません。

αの視点:含み益のある物件と「同じ年」に売却して税金を相殺する

給与所得などとは相殺できない個人の不動産売却損ですが、唯一の例外が「同じ年に売却した別の不動産の譲渡益」との相殺(内部通算)です。
もし他に「売ると多額の税金がかかる(含み益がある)物件」をお持ちであれば、この赤字物件と意図的に「同じ年」に売却することで、利益と損失をぶつけて不動産譲渡税を大幅に圧縮、あるいはゼロにすることができます。
使えない損を「使える損」に変える、まさに複数物件を保有するオーナーならではの高度な出口戦略です。

③ 「売る」以外の出口——組替えという選択肢

出口は売却だけではありません。
収益性の低い物件を手放し、より収益力のある物件へ「組替え」れば、資産全体の利回りを立て直せます。
たとえば地方の空室アパートを売り、需要の底堅い都市部の物件や、より管理の手間が少ない物件に乗り換えるイメージです。
一定の要件を満たせば、事業用資産の買換え特例により譲渡益の一部への課税を将来へ繰り延べられる場合もあります。
売って終わりではなく、売った資金をどこに向けるかまで設計してこそ意味があります
空室物件を“塩漬け”にして固定資産税と管理コストを払い続けるより、次の一手に資金を回す。
これも立派なリスク対策であり、攻めの資産防衛です。

④ 売却の“5年の壁”とタイミング設計

譲渡益が出る場合は、所有期間にも注意が必要です。
売った年の1月1日時点で所有期間が5年以下だと短期譲渡として約39%、5年超なら長期譲渡として約20%(いずれも住民税等を含む概算)と、税率がほぼ倍違います
空室で焦って売り急ぐと、あと数か月待てば税率が半分になったのに——という事態も起こります。
出口は“売りたくなった時”ではなく、カレンダーから逆算して設計するものです。

αの視点:「5年の壁」を越えるための「契約日・引渡日」の選択テクニック

所有期間が5年を超えるかどうかの判定において、「あともう少しで5年超になるのに!」というギリギリのタイミングの時に使える税務上の合法的なテクニックがあります。

不動産の取得日や譲渡日は原則として「引渡しの日」で判定しますが、納税者の選択により「契約日」を基準とすることも認められています。

つまり、「取得日は契約ベース、譲渡日は引渡ベース」という有利な組み合わせを選ぶことで、実際の保有期間を数ヶ月引き延ばし、税率が半分になる「5年超(長期譲渡)」の条件をクリアできるケースがあるのです。

⑤ 丸山会計の視点——出口は数年前から一緒に描く

私たち丸山会計事務所は、出口を売買契約の瞬間ではなく、その数年前から逆算して設計することを大切にしています。
個人保有のままか法人へ移すか、いつ・どの順番で売るか、組替えるか。
お金が大きく動くこのタイミングでこそ、提案型の“攻める税理士”の力が効きます。
「知らなかったから損をした」をなくし、お客様とともに未来を描く
それが私たちの役割です。

まとめ

空室や家賃下落は、持ち続けることだけがリスクではありません。
出口の税務を知らないまま売ると、損失が税負担の軽減に結びつかない事態も起こります。
個人か法人か、売却か組替えか、そしていつ売るか——選択肢を数年前から準備することが、最終的な手取りを大きく左右します。
含み損を抱えた物件でお悩みなら、早めにご相談ください。

本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の税務相談については専門家にご確認ください。

 

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この記事の監修

丸山会計事務所 税理士 代表 丸山和秀

税理士
丸山会計事務所代表 丸山 和秀(1986年生まれ)

税制支援20年以上、不動産税務、事業承継&M&A、法人資産税、設備投資時の優遇税制を得意とする。
「ともに未来を描く」を経営理念として、お客様と一緒に未来を描くことができる、提案型の“攻める税理士”として、経営ビジョンやニーズに寄り添い、適切なタイミングで、お客様のお悩みを解決するご提案を行う。

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