取得費が分からない不動産売却 5%概算の罠とQ&A

投稿日:2026年07月30日

取得費が分からない不動産売却 5%概算の罠とQ&A

朝4時起きの税理士、丸山です。
本日は不動産売却の譲渡益課税のなかでも、最も税額を左右する「取得費」についてQ&A形式でお話しします。

 

「先祖代々の土地で、買ったときの契約書なんて残っていない。
だから売却代金の5%で申告するしかないですよね」——売却されたオーナーから、毎年のようにこの言葉を聞きます。
しかし、これは大きな誤解です。
契約書がない=5%確定、ではありません
むしろこの一点を詰めるかどうかで、納税額は数百万円単位で変わります
売値を数百万円上げる交渉より、取得費を立証するほうがよほど確実に手取りが増える
今日はそこを掘り下げます。

Q1.なぜ「取得費」が譲渡税の主戦場なのか

譲渡所得は「譲渡価額 −(取得費+譲渡費用)− 特別控除」で計算し、所有期間5年超の長期譲渡なら税率は20.315%(所得税15%+復興特別所得税+住民税5%)です。

 

たとえば5,000万円で土地を売却したケース。
取得費が不明として概算取得費5%(250万円)で申告すると、譲渡所得は約4,750万円、税額はおよそ965万円になります。
ところが実額で取得費2,000万円を立証できれば、譲渡所得は約3,000万円、税額はおよそ609万円。
その差は約356万円です。

 

同じ売却、同じ手取り交渉。
違うのは書類だけ
ここに手をかけない理由がありません。

Q2.契約書がなければ本当に5%で確定なのか

結論から言うと、違います。
概算取得費(措置法31条の4)は「取得費が譲渡価額の5%を下回る場合でも5%は認める」という納税者を守るための下限規定であって、「5%しか使えない」という制限規定ではありません。
実額を合理的に説明できる資料があれば、そちらで申告できます

 

実務で武器になる資料はこんなものです。
購入時の預金通帳の出金記録、住宅ローンの金銭消費貸借契約書、抵当権設定登記の債権額、建築時の請負契約書、当時の分譲パンフレットや価格表、売主側に残る売買契約書の写し。
ローンの借入額が分かれば購入価格の相当部分を説明できることは少なくありません

 

さらに、日本不動産研究所の「市街地価格指数」を使って購入時価格を推計する方法もあり、過去には東京地裁で認められた事案もあります。

 

ただし近年の裁決では否認されるケースも目立ちます。
指数の前提(対象地域・地目・時期)と実際の物件が本当に合致しているか、他の資料で裏づけができるか。
そこを詰めずに指数だけで押すのは危険です。
不動産鑑定士による過去時点の鑑定評価と組み合わせる、といった補強が有効になります。

Q3.土地と建物の按分で、なぜ税額が変わるのか

一括で購入した土地建物を売る場合、建物部分の取得費からは減価償却費相当額を差し引きます。
非業務用の建物なら、法定耐用年数の1.5倍の年数で旧定額法により計算し、取得価額の90%を基礎に償却していきます。
つまり土地と建物の内訳が変われば、控除される償却費が変わり、譲渡所得も変わるのです。

按分の方法は主に4つ。

 

①売買契約書に土地・建物の金額が区分記載されていればそれを使う、

②契約書に記載された消費税額から建物価格を逆算する(建物価格=消費税額÷税率)、

③固定資産税評価額の比で按分する、

④不動産鑑定評価による。 

 

「とりあえず固定資産税評価額比で」と流している方が多いのですが、築古物件や土地値の高いエリアでは、方法を変えるだけで有利不利が入れ替わります。
複数の方法で試算して比較する
これだけで数十万円から数百万円が動きます

Q4.譲渡費用はどこまで認められるのか

譲渡費用に入るのは、仲介手数料、売買契約書の印紙税、借家人への立退料、土地を売るために行った建物の取壊し費用、境界確定のための測量費、より有利な条件で売るために前の契約を解除した際の違約金などです。

 

一方で入らないものも明確です。
修繕費や固定資産税といった維持管理費用、抵当権抹消の登記費用、売主自身の引越し代。
また売却前のリフォームは、資産価値を高めるものであれば譲渡費用ではなく取得費に加算する扱いになります。

 

判定軸はシンプルで、「その資産を売るために直接必要だったか」
ここを曖昧にしたまま申告すると、調査で真っ先に指摘されます。

Q5.丸山会計事務所は取得費をどう「攻める」のか

私たちが売却案件を受けたとき、最初にお願いするのは決済の前にご相談いただくことです。

 

売った後では、契約書の区分記載も、取壊しの時期も、譲渡の年もすべて確定済み。
打てる手が一気に減ります
逆に売る前なら、契約書への内訳明記、5年の壁を意識した引渡し時期の設計、取得費の資料収集、必要に応じた鑑定評価の手配まで、順番に組み立てられます。

 

そして取得費が不明なケースこそ、私たちが最も手をかける場面です。
通帳を遡り、登記簿を取り寄せ、当時の資料を探し、必要なら不動産鑑定士と連携する。
手間はかかりますが、数百万円の納税額が動くなら、その手間には十分な意味があります
もちろん、節税効果以上の報酬がかかる提案はしません。

 

確定申告書を作るだけなら誰でもできます。
お金が大きく動くその瞬間に、選べる道を全部並べて一緒に選ぶ
これが「攻める税理士」としての私たちの仕事であり、経営理念「ともに未来を描く」の中身です。
「知らなかったから5%で申告した」——そんな理由で数百万円を失う方を、名古屋から一人でも減らしたいと思っています。

まとめ

不動産売却の税額は、売値ではなく取得費で決まると言っても過言ではありません。
契約書がなくても、通帳・ローン契約・登記情報・鑑定評価を積み上げれば実額での立証は十分に可能です。
土地建物の按分方法、譲渡費用の線引きも、それぞれ数十万円から数百万円を動かす論点です。
売った後では打てる手が限られます
動く前にご相談ください。

本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の税務相談については専門家にご確認ください。

 

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この記事の監修

丸山会計事務所 税理士 代表 丸山和秀

税理士
丸山会計事務所代表 丸山 和秀(1986年生まれ)

税制支援20年以上、不動産税務、事業承継&M&A、法人資産税、設備投資時の優遇税制を得意とする。
「ともに未来を描く」を経営理念として、お客様と一緒に未来を描くことができる、提案型の“攻める税理士”として、経営ビジョンやニーズに寄り添い、適切なタイミングで、お客様のお悩みを解決するご提案を行う。

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