副業大家の初確定申告 つまずく5つのQ&A
投稿日:2026年07月22日

朝4時起きの税理士、丸山です。
本日は、会社勤めのかたわら不動産投資を始めた「副業サラリーマン大家さん」が、初めての確定申告でつまずきやすい疑問についてお話しします。
「副業の家賃収入が年20万円以下だから、申告はしなくていいですよね?」——この春、当事務所にはこうしたご相談が数多く寄せられました。
実はこの思い込みが、後々の追徴課税や余計な税負担につながることが少なくありません。
今日は、大家さんから実際によくいただく5つの質問に、具体的な数字を交えてお答えします。
Q1.家賃収入20万円以下なら申告不要?
いいえ、そうとは限りません。
「20万円ルール」は、給与を1か所から受け取る会社員が対象で、しかも“収入”ではなく経費を引いた後の“所得”が20万円以下の場合に、所得税の確定申告を省略できるという制度です。
たとえば家賃収入が年80万円でも、経費が65万円なら所得は15万円となり所得税の申告は不要です。
ただし住民税にこのルールはなく、市区町村への申告は別途必要です。
また判定は物件ごとではなく不動産所得全体の合計で行う点にも注意が必要です。
ここを見落とすと、後から住民税の追徴通知が届き、本業の勤務先に副業が知られるきっかけになることもあります。
+αの視点:住民税を「自分で納付(普通徴収)」にしても赤字だとバレる?
会社に副業を知られたくないサラリーマン大家さんの多くが、確定申告書で住民税の徴収方法を「自分で納付(普通徴収)」にチェックしています。
しかし、Q5で後述する「不動産所得の赤字を給与所得と相殺(損益通算)」して還付を受けた場合、本業の給与から天引きされる住民税の額が通常よりも「安く」なってしまいます。
これにより、会社の給与担当者が「この社員、給与のわりに住民税が不自然に安い」と気づき、結果的に副業(あるいは何らかの別事業)をしていることがバレてしまうリスクがある点には十分ご注意ください。
Q2.減価償却は必ず計上しないといけない?
個人の大家さんの場合、減価償却は「強制償却」で、任意に金額を調整することはできません。
むしろ、これを味方につけるのが攻めの節税です。
たとえば築25年の中古木造アパートを建物2,000万円で購入した場合、耐用年数は法定22年を超えているため「22年×20%=4年」で償却できます。
年間500万円もの経費を4年間計上でき、給与所得との相殺で大きな効果を生みます。
建物と土地の按分、設備の分離計上まで踏み込めるかで、初年度の手取りは大きく変わります。
Q3.自宅や車の費用はどこまで経費になる?
賃貸業に使った分は「家事按分」で経費化できます。
物件の管理や記帳に使う自宅の一室、現地確認に使う車のガソリン代、入居者とのやり取りに使うスマートフォン代などが対象です。
ポイントは“合理的な基準”で按分すること。
たとえば車を週1回・仕事で使うなら利用日数で7分の1、自宅なら使用面積で按分するといった具合です。
根拠なく「5割経費」とすると税務調査で否認されるおそれがあります。
按分の割合そのものよりも、その割合を導いた根拠を説明できるかどうかが問われます。
使用記録やメモを残しておくことが、攻めと守りの両立につながります。
Q4.青色申告にすると何が変わる?
初年度こそ青色申告を選ぶべきです。
事業的規模(目安は5棟10室以上)であれば最大65万円の特別控除、家族へ支払う専従者給与の経費算入、そして赤字を3年間繰り越せる純損失の繰越控除が使えます。
規模が小さくても10万円控除は受けられます。
青色申告承認申請書は原則その年の3月15日まで、開業初年度は開業から2か月以内が期限です。
この一枚を出し忘れるだけで、数十万円の節税機会を失うことになります。
+αの視点:初年度の罠「青色申告特別控除では還付金を増やせない」
強力な青色申告の特別控除ですが、初年度においてよくある勘違いがあります。
それは「不動産所得が赤字のときに、さらに65万円を引いて赤字を拡大させ、給与との相殺(還付金)を増やせる」という誤解です。
青色申告特別控除はあくまで「所得から差し引く」ものであるため、そもそも経費等で不動産所得がゼロ以下の(赤字の)年は、控除枠を使うことができません。
初年度の青色申告の本当の狙いは、控除ではなく「赤字の3年間繰越し」という強力なカードを手に入れることにあるのです。
Q5.不動産の赤字は給与と相殺できる?
できます。
これが副業大家の最大の魅力で、不動産所得の赤字は給与所得と「損益通算」できるため、源泉徴収された所得税の還付を受けられます。
ただし注意点があり、土地取得のための借入金利子に対応する赤字部分は損益通算の対象外です。
建物と土地の借入をどう構成するかで、通算できる金額が変わります。
番外編:高所得サラリーマンを狙う「海外中古不動産」節税の終焉
給与との損益通算を狙い、「海外の木造中古不動産を買って、短い耐用年数で多額の減価償却費を計上して赤字を作り、本業の税金を取り戻す」という節税スキームが、かつて高所得サラリーマンの間で大流行しました。
しかし、令和3年(2021年)以降の税制改正により、この手法は一部封じ込められました。
現在では、国外中古「建物」の減価償却費から生じた不動産所得の赤字については、給与所得など他の所得とは「損益通算できない(なかったものとみなされる)」ルールとなっています。
ここは自己流で進めると取りこぼしが出やすい領域で、購入前の資金計画の段階から設計しておくことで、還付額を最大化できます。
初年度は不動産取得税や登記費用など一時的な支出が重なり赤字になりやすいため、還付インパクトも大きくなります。
丸山会計事務所からのメッセージ
私たち丸山会計事務所は、単なる記帳代行や申告作業にとどまらず、「知らないことで損をした」をなくすことを使命としています。
初めての確定申告は、その後何年も続く不動産経営の“設計図”を描く最初の一手です。
物件の取得直後こそ、減価償却の組み方や法人化のタイミングまで見据えた提案ができる、まさにお金が大きく動く場面です。
経営理念「ともに未来を描く」のもと、私たちは守りの節税で終わらせず、一歩踏み込んだ“攻める税理士”として、名古屋から全国の大家さんの手取りを最大化するお手伝いをしています。
まとめ
副業大家の確定申告は、「20万円以下なら申告不要」という思い込みが落とし穴になりがちです。
住民税は別、減価償却は強制、家事按分は合理的基準で、青色申告は初年度から、そして損益通算には土地利子の例外がある——この5点を押さえるだけで、初めての申告は大きく変わります。
迷ったら、動く前にご相談ください。
本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の税務相談については専門家にご確認ください。
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この記事の監修
税理士
丸山会計事務所代表 丸山 和秀(1986年生まれ)
税制支援20年以上、不動産税務、事業承継&M&A、法人資産税、設備投資時の優遇税制を得意とする。
「ともに未来を描く」を経営理念として、お客様と一緒に未来を描くことができる、提案型の“攻める税理士”として、経営ビジョンやニーズに寄り添い、適切なタイミングで、お客様のお悩みを解決するご提案を行う。


