兄弟で相続した実家、「とりあえず共有」のままにしていませんか?――もめる前に知っておきたい共有不動産の3つの落とし穴
投稿日:2026年06月30日

朝4時起きの名古屋の税理士丸山です。
親から受け継いだ実家やアパートを、兄弟姉妹で「とりあえず共有名義」にしたまま何年も過ぎている
――そんなご相談をよくいただきます。
共有は一見、平等で角が立たない分け方に見えます。
ところが「持分どおりに負担すればいい」「いつでも好きなときに分けられる」という思い込みのまま放置すると、固定資産税の請求・分けるときの税金・連絡の取れない共有者という三つの場面で、思わぬ損やトラブルが顔を出します。
今日は、共有不動産をお持ちの方が知らないと損をする3つの視点を整理します。
◆目次
1.固定資産税は「自分の持分だけ」では済まない――連帯納付義務という落とし穴
2.共有を解消するとき、税金がかかる分け方とかからない分け方
3.連絡の取れない共有者がいても、もう打つ手はある
4.「共有のまま放置」が一番危ない――相続登記の義務化と早めの設計
1.固定資産税は「自分の持分だけ」では済まない――連帯納付義務という落とし穴
共有不動産の固定資産税は、市区町村から共有者の代表者一人に「全額」の納税通知書が届きます。
これは地方税法第10条の2が、共有者全員に「連帯納付義務」を課しているためです。
連帯納付義務とは、自分の持分ぶんだけを納めればよいというものではなく、共有者の誰もが税額の全額について納める義務を負う、という意味です。
持分が3分の1だからといって3分の1だけ払えば免れる、という関係ではありません。
代表者が立て替えて全額を納めた場合、他の共有者に対して持分に応じた負担を求める「求償権」(民法第442条)を持ちますが、相手が応じなければ自分が一旦かぶることになります。
「兄が払っているはず」とお互いが思い込んだ結果、誰も払わず、代表者である自分のところに督促が来る
――そんな事態も起こり得ます。
共有を続けるなら、誰が立て替え、どう精算するのかを最初に文書で決めておくことが、関係を壊さない第一歩です。
持分「ぴったり半分」が招く身動きの取れなさ 共有不動産を人に貸したり、修繕したりする「管理行為」は、民法上「持分の過半数」で決めることができます。
しかし、ここでよくあるのが「兄弟2人で2分の1ずつ」という持ち方です。
この場合、一方が「貸そう」「直そう」と言っても持分は50%にとどまり、「過半数(50%超)」に達しません。
つまり、2人の意見が一致しない限り、老朽化した屋根の修理ひとつ、入居者の募集ひとつ進められず、不動産が荒れ放題のまま塩漬けになってしまうという恐ろしいリスクが潜んでいるのです。
2.共有を解消するとき、税金がかかる分け方とかからない分け方
共有をやめて土地を分けるとき、その分け方しだいで税金の扱いはまったく変わります。
一筆の土地を持分に応じて切り分ける「現物分割」であれば、所得税基本通達33-1の7により、その分割は譲渡がなかったものとして扱われ、譲渡所得税も贈与税もかかりません。
ポイントは、分けた後のそれぞれの土地の「価額の比」が共有持分の割合とおおむね等しいことです。
面積の比が持分とずれていても、角地や接道で1平方メートル当たりの価値が違うなら、価額ベースで持分どおりになっていれば差し支えありません。
逆に注意したいのが、片方が土地を取り、もう片方がお金を受け取る「代償分割(価格賠償)」です。
お金で精算を受けた側には、その持分を相手に売ったのと同じように譲渡所得課税が生じます。
「きれいに半分こ」のつもりで安易に現金で清算すると、思わぬ譲渡税が顔を出すのです。
分ける前に、現物で分けるのか、お金を絡めるのかで、手取りは大きく変わります。
分け方をめぐる話し合い(協議)がまとまらず、どうしても共有関係を解消したい場合、最終的には裁判所に「共有物分割訴訟」を起こすことになります。
しかし、裁判に勝てば希望通りになるわけではありません。
裁判所が現物分割も代償分割も難しいと判断した場合、最終手段として「不動産を競売にかけて、そのお金を持分に応じて分けなさい(換価分割)」という判決を下すことがあります。
競売になれば、通常の市場価格よりもかなり安値で手放すことになり、結果的に共有者全員が損をする結末を招きかねません。
もめる前に専門家を交えて設計することがいかに重要か、お分かりいただけるかと思います。
3.連絡の取れない共有者がいても、もう打つ手はある
共有でもっとも厄介なのが、「いつでも好きなときに売れる」というのも大きな勘違いです。
共有不動産全体を第三者に売却したり、建物を大規模にリフォームしたりするには、民法上、共有者「全員の同意」が必要になります。
もし兄弟のうち一人でも「思い出の実家だから売りたくない」と反対すれば、他の全員が売りたくても売却はできません。
「連絡の取れない共有者」がいるケースです。
遠縁の相続人や、何代も前から名義がそのままになっている持分があると、売るにも分けるにも全員の同意が要るため、これまでは手が出せませんでした。
しかし令和3年の民法改正(令和5年4月1日施行)で、状況が変わりました。
所在等が不明な共有者がいる場合でも、裁判所の決定を得て、その持分を他の共有者が取得したり(民法第262条の2)、第三者へ売却するためにまとめて譲渡したり(民法第262条の3)できる制度が新設されたのです。
持分を取得された側には、時価相当額を請求する権利が残り、その分はあらかじめ供託しておく仕組みになっています。
ただし注意点として、相続によって生じた共有については、相続開始から10年を経過するまではこの制度を使えません。
「行方不明だから一生動かせない」とあきらめていた共有も、要件を満たせば前に進められる時代になっています。
4.「共有のまま放置」が一番危ない――相続登記の義務化と早めの設計
そして見落とされがちなのが、「何もしない」こと自体のリスクです。
令和6年4月1日から相続登記が義務化され、相続で不動産を取得したことを知った日から3年以内に登記をしないと、正当な理由がなければ10万円以下の過料の対象になります。
施行前に発生していた相続も対象で、令和9年3月31日までの猶予が設けられています。
共有のまま登記を放置していると、世代が変わるたびに共有者が雪だるま式に増え、いざ売ろう・分けようとしたときには十数人の同意が必要、という事態に陥ります。
共有は「とりあえず平等」ではなく、「先送りされた問題」になりがちです。
早い段階で、持ち続けるのか・分けるのか・売るのかをご家族で話し合い、税負担まで含めて設計しておくことが、結局はいちばんの節約になります。
当事務所では、相続した不動産を「共有のまま持ち続けるか、今のうちに整理するか」の判断を、税負担とご家族の関係の両面から一緒に考えます。
数字とご事情を並べてみると、最適な一手は思いのほかはっきり見えてくるものです。
私たちは経営理念「ともに未来を描く」のもと、目先の損得だけでなく、次の世代まで安心して引き継げる形づくりをお手伝いします。
共有不動産のことで気がかりがあれば、こじれてしまう前に、どうぞお気軽にご相談ください。
【免責事項】本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の税務・法務上の判断を保証するものではありません。税制・法令は改正される場合があり、実際のお取扱いにあたっては、具体的なご事情に基づき税理士等の専門家にご相談ください。
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この記事の監修
税理士
丸山会計事務所代表 丸山 和秀(1986年生まれ)
税制支援20年以上、不動産税務、事業承継&M&A、法人資産税、設備投資時の優遇税制を得意とする。
「ともに未来を描く」を経営理念として、お客様と一緒に未来を描くことができる、提案型の“攻める税理士”として、経営ビジョンやニーズに寄り添い、適切なタイミングで、お客様のお悩みを解決するご提案を行う。


