共有名義の不動産、「分けると税金がかかる」と思っていませんか?——知らないと損する共有の解消3つの分岐

投稿日:2026年07月14日

共有名義の不動産、「分けると税金がかかる」と思っていませんか?——知らないと損する共有の解消3つの分岐

おはようございます。

朝4時起きの名古屋の税理士丸山です。

親から相続した土地を兄弟で共有のまま、あるいは投資仲間と持分を出し合って買った収益物件——。
「共有を解消したいけれど、分ければ多額の譲渡税がかかるのでは」と動けずにいる方は少なくありません。
ところが実際には、分け方しだいで課税されないこともあれば、「タダで手放しただけ」のつもりが相手に贈与税が及ぶこともあります。

 
今日は、共有不動産を整理するときに知らないと損をする3つの分岐——「分けても課税されない原則」「持分放棄に潜む贈与税」「連絡の取れない共有者がいても動ける新制度」——を順に見ていきます。

目次

1. なぜ共有のまま放置すると「あとで損」をしやすいのか

2. 分けても課税されないのが原則——ただし「持分どおり」が条件

3. 「ただで手放す」つもりが贈与税に——持分放棄の落とし穴

4. 連絡の取れない共有者がいても動ける——令和5年施行の新制度

1. なぜ共有のまま放置すると「あとで損」をしやすいのか

共有不動産のやっかいさは、ひとつの不動産に複数の所有者がいることそのものにあります。
売却や大規模な変更は、原則として共有者全員の同意が必要で、賃貸や管理に関する事項も持分の価格の過半数で決めることになります。
一人でも反対すれば塩漬けになり、世代が代わるごとに共有者は雪だるま式に増えていきます。
最初は兄弟2人でも、それぞれに相続が起きれば、会ったこともない甥や姪と共有する事態にもなりかねません。
共有は「持っているだけ」で固定資産税はかかり続け、いざ動かそうとしたときの手間と税負担は年々重くなります。
だからこそ、関係がこじれる前に「どう分けるか」を知っておくことが、結果的にいちばんの節税になります。

2. 分けても課税されないのが原則——ただし「持分どおり」が条件

意外に思われるかもしれませんが、共有している土地を持分に応じて現物で分ける「現物分割」は、原則として譲渡所得税の対象になりません。
税務上、分割は「もともと持っていた持分を、形を変えて確認しただけ」とみなされ、譲渡はなかったものとして扱われるためです。

 
ここで落とし穴になるのが「持分どおりかどうか」
たとえば持分2分の1ずつのはずが、分けた後の土地の価値に差が出て、一方が多くもらった分を現金(代償金・差金)で精算した場合、その差額部分は「持分を超えて譲り受けた」とみなされ、譲渡所得課税の対象になります。
同じ「分割」でも、面積や評価額が持分とずれていないかで結論が変わるのです。
分割線の引き方ひとつで課税の有無が分かれるため、図面を引く前の設計が肝心です。
なお、現物では分けにくい一棟の建物などは、いったん売却して代金を分ける「換価分割」が選ばれることもありますが、この場合は売った全員にそれぞれ譲渡所得課税が生じます。
どの分け方を選ぶかで、誰に・いくら課税されるかが大きく変わる点に注意してください。

αの視点:換価分割で「とりあえず代表者の単独名義」にする際の贈与税リスク

不動産を売却して代金を分ける「換価分割」を行う際、買主との交渉や契約手続きをスムーズにするため、「便宜上、代表者(長男など)の単独名義に相続登記」をしてから売却するケースがよくあります。
しかし、遺産分割協議書等に「これは換価分割のための便宜的な名義であり、売却代金は分配する」という旨を明確に残しておかないと、後で売却代金を他の兄弟に分けた瞬間に「長男から兄弟への贈与」と税務署にみなされ、多額の贈与税を課されるという最悪の事態を招く恐れがあります。

αの視点:「別々の土地」の持分を交換して単独所有にするのは原則「課税」される

1つの土地を分割線で分ける「現物分割」は非課税とお話ししましたが、注意したいのが「複数の土地」が共有になっている場合です。
たとえば「A土地にある弟の持分」と「B土地にある私の持分」を交換し、それぞれを単独所有にする場合、これは1つの土地の分割ではなく「持分の交換(譲渡)」とみなされ、原則として双方に譲渡所得税が課税されます。
この場合は、税金を先送りできる「固定資産の交換の特例」の厳しい要件を満たすかどうか、別の角度からの綿密な検証が必要になります。

3. 「ただで手放す」つもりが贈与税に——持分放棄の落とし穴

「自分の持分はいらないから放棄する」。
一見すると、相手に迷惑をかけない円満な解決に見えます。
しかし税務では話が別です。
民法は、共有者の一人が持分を放棄したとき、その持分は他の共有者に帰属すると定めています(民法255条)。
つまり放棄した側はタダで手放したつもりでも、受け取った側は「無償で財産をもらった」ことになり、みなし贈与として贈与税の対象になります。
放棄する人に課税が及ばないからと安易に選ぶと、残った親族に思わぬ納税が降りかかります。
持分を整理したいなら、放棄ではなく売買や交換、あるいは持分の買取りといった手段と、どちらが税負担を抑えられるかを並べて比べることが欠かせません。

番外編:「離婚」による共有解消(財産分与)で、渡した側に譲渡税がかかる罠

夫婦で共有名義にしていたマイホームを、離婚に伴い「財産分与」として一方が持分をすべて引き受ける(単独名義にする)ケースも共有解消の代表例です。
しかし税務上、財産分与で不動産の持分を手放した側は、「財産分与の義務が消滅した」という経済的利益を受け取ったと解釈され、「当時の時価で持分を譲渡した」ものとして譲渡所得税がかかる場合があります。
タダで渡したつもりが後から税務署に指摘される典型的な落とし穴ですので、マイホーム特例(3,000万円特別控除)の活用も含めた事前のシミュレーションが欠かせません。

4. 連絡の取れない共有者がいても動ける——令和5年施行の新制度

共有でいちばん厄介なのが、「どこにいるか分からない」「返事をくれない」共有者の存在です。
一人でも所在不明だと、これまでは売却も分割も事実上止まっていました。
ここに風穴を開けたのが、令和5年4月1日に施行された改正民法です。
裁判所の決定を得たうえで、所在等不明共有者の持分を他の共有者が取得したり、第三者へ譲渡する権限を得たりできるようになりました。
ただし手放しではありません。
不明な共有者の取り分に相当する時価相当額を供託する必要があり、取得すればその後の売却時の取得費として、第三者へ売れば譲渡所得として、いずれにせよ税金の論点がついて回ります。
「塩漬けだから仕方ない」と放置せず、制度を使って動ける時代になったことは、ぜひ押さえておいてください。

むすびに

共有不動産の整理は、民法・登記・税務がからみあい、選んだ一手で手取りが大きく変わります。
当事務所では、こうした共有の解消について、ご家族やお仲間の関係にも配慮しながら、課税の生じない分け方や、いちばん税負担の軽い手順を一緒に設計しています。
「ともに未来を描く」——これが私たちの経営理念です。
共有は時間が経つほど当事者が増え、選べる手が狭まります。
先送りにしてきた共有名義こそ、関係が良いうちに、お早めにご相談ください。

※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の税務・法務上の判断を保証するものではありません。実際のご対応にあたっては、具体的な事実関係に基づき、税理士等の専門家にご相談ください。

 

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この記事の監修

丸山会計事務所 税理士 代表 丸山和秀

税理士
丸山会計事務所代表 丸山 和秀(1986年生まれ)

税制支援20年以上、不動産税務、事業承継&M&A、法人資産税、設備投資時の優遇税制を得意とする。
「ともに未来を描く」を経営理念として、お客様と一緒に未来を描くことができる、提案型の“攻める税理士”として、経営ビジョンやニーズに寄り添い、適切なタイミングで、お客様のお悩みを解決するご提案を行う。

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