共有の土地を分けるだけなら税金はかからない?——共有物分割で損しない3つの分かれ道

投稿日:2026年09月07日

共有の土地を分けるだけなら税金はかからない?——共有物分割で損しない3つの分かれ道

朝4時起きの名古屋の税理士丸山です。

 

相続で兄弟の共有になった土地を、そろそろ分けたい。
「他人に売るわけではなく、自分たちの間で分けるだけだから税金はかからないはず」——このご相談は多いのですが、ここが一番危ないところです。
共有物分割は原則として課税されません。

 
ただしそれは「条件を満たしたとき」の話で、条件を一つ外した瞬間に譲渡所得税・贈与税・登録免許税が顔を出します。

 
今日は、結果が分かれる3つのポイントに絞ります。

目次

1. 共有物分割は、税務上は「交換」として扱われる

2. 分かれ道① 非課税の条件は「面積」ではなく「価額」

3. 分かれ道② 分け方の型で、課税が丸ごと変わる

4. 分かれ道③ 書面に何と書くかで、登録免許税が5倍になる

1. 共有物分割は、税務上は「交換」として扱われる

はじめに前提を一つ。
相続で共有になった土地でも、遺産分割が済んでいなければ共有物分割はできません(民法258条の2第1項)。
土俵は遺産分割のほうです。

 
しかも遺産分割で支払う代償金には、譲渡所得税はかかりません。
後で述べる共有物分割の調整金が原則課税なのと、逆の扱いです。
登記簿を見ても遺産共有かどうかは判別できないことが多いので、まずここをご確認ください

 

以下は遺産分割が終わった後の共有を前提にお話しします。
兄Aと弟Bが2分の1ずつ共有する土地を、東側はA、西側はBの単独所有にする。
民事上は、これで共有関係が解消されます。

 

ところが税務は違う見方をします。
東側についてはBの持分がAへ移り、西側についてはAの持分がBへ移った——つまり互いに持分を交換した、と捉えるのです(最高裁昭和42年8月25日判決)。
形式だけ見れば資産の譲渡ですから、本来は譲渡所得税や法人税の対象です。

 

もっとも実質を見れば、潜在的に持っていた権利が具体化しただけで、値上がり益が生まれたわけではありません。
そこで税務には二つの逃げ道が用意されています。

 
①共有物分割の基本通達(所得税基本通達33-1の7、法人税基本通達2-1-19)と、

②固定資産の交換の特例(所得税法58条、法人税法50条)です。

2. 分かれ道① 非課税の条件は「面積」ではなく「価額」

本日いちばんお伝えしたい論点です。

 

共有物分割の基本通達が譲渡はなかったものとして扱うのは、「共有持分に応じた」現物分割です。
さらに注書きで、分割後のそれぞれの土地の価額の比が持分割合とおおむね等しければ、これに該当するとされています(所得税基本通達33-1の7注2)。
判定するのは面積ではなく、価額です。

 

たとえば時価1億円、200平方メートルの土地を兄弟が2分の1ずつ共有しているとします。
100平方メートルずつ分けても、東側が角地で6,000万円、西側が4,000万円なら価額の比は6対4。
持分の5対5とズレています。

 
この場合は通達による非課税が使えず、原則どおり譲渡として扱われます。
しかも弟から兄へ1,000万円分を無償で渡した形ですから、贈与税の問題まで生じ得ます
逆に面積が120平方メートルと80平方メートルでも、価額が5,000万円ずつなら通達の範囲内です。
等分の線を引くべきなのは、メジャーではなく評価額のほうなのです。 

 

では差額を金銭で調整すればよいか、という発想が出てきます。

 
この金銭を、民事では賠償金、税務では調整金と呼びます。
ただし調整金があると共有物分割の基本通達は使えません
使えるのは固定資産の交換の特例で、交換差金が高いほうの資産の価額の20%以内であれば適用でき、調整金の部分だけが課税されます。

 
20%を1円でも超えれば特例そのものが飛びます
分割線と調整金はセットで設計してください。

 

もう一つ、事故が多いのが「土地が複数あるとき」です。
離れた甲土地と乙土地を、甲は兄、乙は弟の単独所有に整理する。
民法上はこれも共有物分割で可能です(最高裁昭和62年4月22日判決)。

 
ところが通達が想定しているのは「一の土地」の現物分割です。
別の土地どうしで持分を交換する形になると、持分が一部に集約されただけという実体がないため通達は使えず、交換の特例で組むしかありません

 
その要件には「取得する資産は相手方が1年以上所有し、交換のために取得したものでないこと」まで含まれます。
土地が複数あるときは、分ける話ではなく交換を設計する話です。

3. 分かれ道② 分け方の型で、課税が丸ごと変わる

共有物分割には、現物分割のほかに、売却して代金を分ける「換価分割」、一人が取得して他方に金銭を払う「全面的価格賠償」があります。
押さえておきたいのは、非課税の取扱いがあるのは現物分割だけという点です。

 

換価分割は共有者全員による第三者への共同売却と同じ状態ですから、普通に譲渡所得税がかかります。
全面的価格賠償も共有者間の持分の売買と同じで、手放した側に譲渡所得税が生じます。

 

将来に効く論点もあります。
所有期間の判定です。
分割が「譲渡はなかった」として扱われた場合、その後に売却したときの短期・長期の判定は分割前後を通算します。

 
課税扱いになった場合は分割の時点が起算点にリセットされます。
分割の翌年に売れば短期譲渡、税率は約39%。
長期の約20%のほぼ倍です。

 

分割の方法を決めることは、5年後10年後の税率まで決めることです。
出口から逆算して型を選んでください

4. 分かれ道③ 書面に何と書くかで、登録免許税が5倍になる

最後は流通税です。
不動産取得税は、かつては共有物分割にも課税されていましたが、現在は持分に応じて分割する場合は課税対象から除かれています(地方税法73条の7第2号の3)。
ただし持分割合と整合しない差額部分には課税されます。

 

注意したいのは、譲渡所得税の例外規定と不動産取得税の例外規定が、それぞれ独立して判断される点です。
片方だけ課税ということが起こり得ます。

 

そして登録免許税。
共有物分割による所有権移転の税率は固定資産評価額の1,000分の4、売買・交換は原則1,000分の20。
5倍の差です。

 
しかもこの判定では書面の表記が重視されます。
実質は共有物分割でも、合意書や和解調書に「交換」と書けば、通常は共有物分割の税率が適用されません。
評価額1億円の土地なら40万円で済むはずが200万円。
文言ひとつで160万円が動きます

 

分けない場合の落とし穴も一つ。
共有の賃貸物件で賃料を持分割合と違う配分で受け取っていると、ズレた部分が贈与税の対象になり得ます。
当人どうしが納得していても、税務上は別の話です。

結び

共有物分割は非課税が原則です。
だからこそ要件を外したときの落差が大きい
分割線を引く前に評価額を押さえ、調整金の有無と20%ラインを確認し、そのうえで書面の文言を決める。
この順番を守るだけで手取りは変わります。

 

当事務所では共有不動産のご相談をいただいた際、まず「その不動産を5年後・10年後に誰が持っているか」から逆算し、現物分割・換価分割・全面的価格賠償の3案について、譲渡所得税・不動産取得税・登録免許税と手取りキャッシュを並べた比較表をお出ししています。
経営理念に掲げる「ともに未来を描く」のとおり、次の世代へ渡すときの姿までご一緒に考えます。
分割協議書に署名する前に、一度ご相談ください。

 

免責事項

本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の税務判断を保証するものではありません。
税制は改正される場合があり、実際の取扱いは個別の事実関係により異なります。
ご判断にあたっては、必ず顧問税理士等の専門家にご確認ください。

 

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この記事の監修

丸山会計事務所 税理士 代表 丸山和秀

税理士
丸山会計事務所代表 丸山 和秀(1986年生まれ)

税制支援20年以上、不動産税務、事業承継&M&A、法人資産税、設備投資時の優遇税制を得意とする。
「ともに未来を描く」を経営理念として、お客様と一緒に未来を描くことができる、提案型の“攻める税理士”として、経営ビジョンやニーズに寄り添い、適切なタイミングで、お客様のお悩みを解決するご提案を行う。

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