長期修繕計画から逆算する 大家の積立実践戦略
投稿日:2026年06月09日

朝4時起きの税理士、丸山です。
本日は「不動産投資における修繕コストと積立の考え方」についてお話しします。
「築浅だから大規模修繕はまだ先」「家賃収入から都度払えばいい」
——そう考えている大家さんは少なくありません。
しかし実際には、築12〜15年あたりで外壁塗装・屋上防水・給排水管・給湯器更新といった大型工事が一斉に到来し、数百万円から物件規模によっては数千万円のキャッシュアウトが発生します。
積立を怠ったオーナーが、いざ工事見積もりを取ってから慌てて追加融資を申し込む
——そんなケースを私は何度も見てきました。
修繕は「やってきたら対応する」ものではなく、「あらかじめ逆算しておく」もの。今日はその実務戦略をお伝えします。
1. 長期修繕計画から逆算する積立額の決め方
修繕コストの目安は、構造と築年で大きく変わります。
RC造マンションは12〜15年で大規模修繕、木造アパートは外壁塗装で約10年周期、屋上・屋根防水で約15年周期が一般的な目安です。
たとえば10戸の木造アパートでざっくり試算すると、外壁塗装150万円、屋根・防水120万円、給湯器交換20万円×10戸=200万円、外構や室内設備の更新を加えると、10年で500万〜700万円の支出が見込まれます。
実務的には、家賃収入の5〜8%を積立に回すのが目安。
月の家賃収入が80万円なら、毎月4万〜6.4万円を別口座に確保しておきたい計算です。
融資返済とは別枠で「修繕用口座」を物理的に分けるのがコツ。
同じ口座で管理すると、必ずと言っていいほど他の支出に消えます。
2. 税務上「修繕費」で落とせる条件と限界
修繕の支出は、税務上「修繕費(一括損金)」と「資本的支出(減価償却)」の2種類に分かれます。
判断軸は、現状回復か機能向上か。原則は実質判定ですが、形式基準として「20万円未満」または「3年以内の周期工事」は修繕費でOK。
さらに、資本的支出か修繕費か区分が明らかでない場合には、「60万円未満」または「前期末取得価額のおおむね10%以下」を修繕費として処理できる形式基準もあります(法人税基本通達7-8-4/所得税基本通達37-13)。
注意したいのは外壁塗装。
同じ色・同じグレードへの塗り替えなら修繕費ですが、「遮熱・断熱機能を追加」「色を変えて意匠性を向上」となると資本的支出と認定されるリスクがあります。
税務調査で多いのが、領収書1枚で「修繕費500万円」と一括計上しているケース。
工事内容ごとに見積書・仕様書・写真を残し、どの部位にいくら使ったかを明確に区分しておくことが防御策です。
3. 修繕積立金は「経費」ではない――資金管理の発想転換
ここで多くの個人大家さんが誤解されるのが、「修繕用に毎月積み立てた金額は経費になりますか?」という点。
答えはNOです。
個人事業の場合、実際に修繕を支出した年に初めて経費(必要経費)として落とせます。
積み立てているだけでは1円も経費になりません。
ただし例外として、分譲マンションの一室を賃貸している場合に管理組合へ毎月支払う修繕積立金は、返還されない・修繕目的に限定されている等の一定要件を満たせば「支払時」に必要経費へ算入できる取扱いがあります(ワンルーム投資のオーナーは要チェックです)。
つまり修繕積立は「節税策」ではなく「キャッシュフロー設計」。
法人化していれば会計上「修繕引当金」を計上できますが、税務上は損金不算入で別表加算となります。
それでも、銀行融資の審査では引当を計上している決算書のほうが「先を見据えている」と評価されることがあり、決算書の見せ方として別の意味を持ちます。
4. 攻める税理士が描く修繕税務ロードマップ
丸山会計事務所では、長期修繕計画と財務シミュレーションを連動させた「修繕税務ロードマップ」をオーナー様ごとに作成しています。
物件取得時点から10年・15年・20年の修繕タイミングを描き、その時点のキャッシュ残高・借入残高・税負担を一枚の表で見える化する。
これだけで、いつ追加投資をすべきか、いつ売却を検討すべきかの判断軸が明確になります。
物件のライフサイクル全体を見据え、税務・資金繰り・出口戦略まで一気通貫でサポートします。
まとめ
修繕は「来てから慌てる」から「計画から逆算」へ。
家賃収入の5〜8%を目安に別口座で積み立て、修繕費か資本的支出かの判断は工事前に税理士に相談を。
賢い大家さんは、工事を発注する前から動いています。修繕タイミングは節税と投資促進税制を活用する絶好の機会でもあります。
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の税務相談については専門家にご確認ください。
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この記事の監修
税理士
丸山会計事務所代表 丸山 和秀(1986年生まれ)
税制支援20年以上、不動産税務、事業承継&M&A、法人資産税、設備投資時の優遇税制を得意とする。
「ともに未来を描く」を経営理念として、お客様と一緒に未来を描くことができる、提案型の“攻める税理士”として、経営ビジョンやニーズに寄り添い、適切なタイミングで、お客様のお悩みを解決するご提案を行う。


