現金1億円を賃貸に変えて相続税評価を圧縮する実務
投稿日:2026年07月17日

朝4時起きの税理士、丸山です。
本日は「不動産を使って相続税の評価額を圧縮する」実務についてお話しします。
「相続税対策といえば、毎年コツコツ生前贈与」——そう思っている資産家の方は少なくありません。
もちろん贈与も有効です。
しかし、手元に現金や預金を多く抱えている方の場合、一番の“重し”になっているのは、実はその現金そのものです。
現金1億円は、相続の場面では額面どおり1億円として課税されます。
1円の値引きもありません。
ところが同じ1億円でも、賃貸不動産に姿を変えるだけで、評価額は半分近くまで下がることがあるのです。
なぜ現金は相続で最も“重い”資産なのか
相続税は、亡くなった時点の財産を「相続税評価額」で計算します。
現金・預金の評価額は額面と完全に一致するため、圧縮の余地がゼロです。
財産1億円に対して数千万円単位の相続税がかかることも珍しくありません。
ここで効いてくるのが、不動産だけに認められた“評価の下がる仕組み”です。
土地は時価ではなく路線価(相続税計算のための国税庁の価格)で評価され、これは実勢価格のおおむね8割程度。
建物は固定資産税評価額で評価され、建築費のおおむね6割程度にとどまります。
つまり不動産に変えた瞬間に、まず評価が2〜4割下がるのです。
なお、令和9年1月以降については課税上問題ない場合には取得時の80%で5年間評価を行います。
現金1億円を賃貸物件に変えると評価はここまで下がる
具体的に数字で追ってみましょう。
現金1億円を、土地6,000万円・建物4,000万円で賃貸アパートに組み替えたケースです。
土地は路線価ベースで約4,800万円に下がり、さらに人に貸すことで『貸家建付地』となり、借地権割合と借家権割合に応じておよそ18%の評価減。
結果、土地は約3,900万円になります。
建物は固定資産税評価額で約2,400万円、さらに賃貸中の『貸家』として30%減となり約1,680万円。
合わせて約5,600万円です。
額面1億円だった現金が、賃貸不動産に変えるだけで評価額は約5,600万円——4割以上も圧縮されたことになります。
小規模宅地等の特例でさらに半分に
圧縮はここで終わりません。
賃貸用の土地は『貸付事業用宅地等』として、小規模宅地等の特例の対象になり得ます。
200㎡までの部分について、評価額をさらに50%減額できる制度です。
先ほどの土地約3,900万円のうち対象部分に特例が使えれば、評価はさらに大きく下がります。
ただしこの特例は、相続開始前3年以内に新たに貸付を始めた不動産は原則対象外になるなど、適用要件が細かく定められています。
『相続直前に慌てて建てる』では間に合わないケースがあるため、時間の余裕を持った設計が欠かせません。
+α①の視点:やりすぎは禁物!伝家の宝刀「総則6項」による否認の恐怖
不動産を活用した評価圧縮は非常に強力ですが、「過度な借入金」を利用して相続直前に不動産を取得するような対策には黄信号が灯っています。
令和4年4月の最高裁判決では、このような極端な租税回避目的の対策に対し、国税庁が伝家の宝刀と呼ばれる「評価通達6項(総則6項)」を発動し、路線価等での低い評価を否認して時価(鑑定評価額)による多額の追徴課税を行った処分が適法とされました。
全体の資産背景に比して過度な融資を伴うような「節税額」だけを追い求めた無理な不動産購入は、かえって一族を危機に晒す恐れがあります。
+α②の視点:アパート「建築中」に相続が起きると評価減が十分に受けられない
「時間的な余裕」がなぜ必要かというと、アパートの「建築中」に相続が発生してしまった場合、大きな不利益を被るからです。
建築中の家屋は、投下した建築費(費用現価)の70%で評価されてしまい、完成後のような低い固定資産税評価額や貸家(30%引き)としての評価減が受けられません。
さらに恐ろしいことに、まだ人に貸していないため、土地も「貸家建付地」にはならず原則として「自用地(満額)」として評価されてしまいます。
駆け込みでの建築は、想定外の増税リスクと隣り合わせなのです。
丸山会計だからできる“出口まで描く”提案
私たち丸山会計事務所は、こうした評価圧縮を『やって終わり』にはしません。
賃貸物件は、建てた後に空室や借入返済という現実が続きます。
目先の相続税だけを見て無理な借入で建て、キャッシュフローが回らなくなっては本末転倒です。
私たちは相続税のシミュレーションと、その後の賃貸経営・納税資金・次世代への承継までを一本の線で描いたうえで提案します。
守りの節税で終わらせず、資産全体を増やしながら税負担を下げる——それが『攻める税理士』としての私たちの流儀であり、経営理念『ともに未来を描く』の実践です。
まとめ
現金は相続で最も重い資産です。
賃貸不動産への組み替えは、路線価・固定資産税評価・貸家評価減・小規模宅地の特例を重ねることで、評価額を大きく圧縮できます。
ただし適用要件と時間軸、そして建てた後の経営が成否を分けます。
『知らずに損をした』を防ぐため、早めのご相談をおすすめします。
本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の税務相談については専門家にご確認ください。
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この記事の監修
税理士
丸山会計事務所代表 丸山 和秀(1986年生まれ)
税制支援20年以上、不動産税務、事業承継&M&A、法人資産税、設備投資時の優遇税制を得意とする。
「ともに未来を描く」を経営理念として、お客様と一緒に未来を描くことができる、提案型の“攻める税理士”として、経営ビジョンやニーズに寄り添い、適切なタイミングで、お客様のお悩みを解決するご提案を行う。


