賃貸不動産の「法人化」、管理会社を作れば節税できると思っていませんか?——所得を分散して手取りを残す3つの視点
投稿日:2026年06月26日

おはようございます。
朝4時起きの名古屋の税理士丸山です。
「賃貸経営の利益が増えてきたので、そろそろ法人化して節税したい」。
ご相談でよく伺うテーマです。
ところが、「管理会社を一つ作れば家賃が法人に移って税金が下がる」と思い込んでいる方が少なくありません。
実際には法人化には複数の“型”があり、選び方とコストの見積もりを誤ると、手間をかけたのに効果がほとんど出ない、あるいは思わぬ税金や否認リスクを抱える、ということが起こります。
今日は不動産の法人化で損をしないために押さえたい3つの視点
——「3つの方式の違い」「初期コストの抑え方」「家賃水準と否認リスク」——
を整理します。
目次
1. 法人化には3つの方式がある——「管理委託」だけでは効果は限定的
2. 見落としがちな初期コスト——“建物だけ移す”が定石
3. 法人化が得になる家賃水準には分岐点がある
4. やりすぎ注意——財産評価基本通達「総則6項」の否認リスク
1. 法人化には3つの方式がある——「管理委託」だけでは効果は限定的
不動産の法人化には、大きく分けて3つの方式があります。
1つ目は「不動産所有方式」で、建物を法人へ移転し、家賃収入そのものを法人で受け取る形です。
2つ目は「不動産管理委託方式」で、土地建物は個人所有のまま、管理業務だけを法人に委託して管理料を支払う形です。
3つ目は「サブリース方式(一括借上げ)」で、法人が建物を一括で借り上げ、入居者へ転貸する形です。
ここで誤解が多いのが管理委託方式です。
法人に移るのは「管理料」だけで、その料率は否認を避けるため市中相場と同程度の3〜8%程度に収めるのが一般的です。
たとえば年間家賃収入が2,500万円でも、管理料5%なら法人に移るのは125万円にとどまります。
一方、不動産所有方式なら家賃収入のほとんどが法人に移り、所得分散の効果は格段に大きくなります。
「管理会社を作った=節税できている」とは限らない、というのが最初の視点です。
2. 見落としがちな初期コスト——“建物だけ移す”が定石
所有方式が効果的だとしても、建物を法人へ移すときには「移転コスト」がかかります。
代表的なのが登録免許税と不動産取得税です。
登録免許税は固定資産税評価額の建物が2%(20/1000)、土地が1.5%(15/1000 本則は2%) 不動産取得税は土地は固定資産税評価額の2分の1に対して3%、建物は住宅用たてものは固定資産税評価額の3%(非住宅は4%)が目安となります。
下記のような物件があったとします。
| 項目 | 金額 | 備考 |
| 土地の譲渡金額(市場相場) | 150,000千円 | 市場売買相場 |
| 建物の譲渡金額 | 70,000千円 | 個人所有建物の未償却残高 |
| 土地の固定資産税評価額 | 105,000千円 | 売買相場の70%と仮定 |
| 建物の固定資産税評価額 | 70,000千円 | — |
ここで効いてくるのが「土地は動かさず、建物だけ移す」という定石です。
本書のシミュレーション例では、土地建物の両方を移すと登録免許税が約298万円・不動産取得税が約368万円かかるのに対し、建物のみを移せば登録免許税は約140万円・不動産取得税は約210万円まで圧縮できます。
土地を個人に残しても、家賃を生むのは建物ですから、所得分散の目的は建物の移転でおおむね達成できます。
初期コストを軽くする、これが2つ目の視点です。
3. 法人化が得になる家賃水準には分岐点がある
では、いくらの家賃なら法人化が得になるのか。
鍵は「税率構造の違い」です。個人の所得税は所得が増えるほど税率が上がる超過累進税率(最高45%、住民税と合わせると55%)で、法人税はおおむね一定の税率です。
家賃収入が小さいうちは累進税率が低く個人のままが有利ですが、収入が大きくなると一定税率の法人が有利に逆転します。
つまり法人化には「損益分岐点」があるということです。
さらに、家族を役員にして役員報酬を分散すれば、一人に所得を集中させるより全体の税負担を下げられます。
ただし役員報酬は実態に見合った金額でなければ否認されますので、「いくらから・誰に」を数字で試算することが3つ目の視点になります。
4. やりすぎ注意——財産評価基本通達「総則6項」の否認リスク
最後に見落とせないのが「やりすぎ」のリスクです。
財産評価基本通達の総則6項は、通達どおりの評価が「著しく不適当」と認められる場合に、国税庁長官の指示で別の評価(不動産鑑定評価額など)に置き換えるという定めです。
令和4年4月19日の最高裁判決では、相続の直前に多額の借入れで不動産を購入して評価額を大きく圧縮した申告に対し、総則6項が適用され、鑑定評価額で課税されました。
法人化や借入れによる対策も、税負担の軽減だけを目的とした行き過ぎた節税とみなされれば否認されえます。
動機や時期、そして実態の伴った取引であることが問われる、という点は必ず押さえておきたいところです。
当事務所からのご案内
不動産の法人化は、「方式の選択」「初期コスト」「家賃水準」「否認リスク」という複数の要素を、ご自身の年齢・資産構成・家族構成・収支に当てはめて総合的に判断するものです。
数字でシミュレーションして初めて、有利か不利かが見えてきます。当事務所では、こうした法人化の有利判定を、税額・キャッシュフロー・将来の相続税まで含めて具体的な数字で試算し、お客様ごとの最適解をご提案しています。
経営理念に掲げる「ともに未来を描く」の言葉のとおり、目先の節税だけでなく、長く安心して資産を承継できる形を一緒に考えてまいります。
法人化をご検討の際は、ぜひ一度ご相談ください。
免責事項
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の税務・法務上の判断や助言を行うものではありません。税制は改正される場合があり、適用には個別の事実関係の確認が必要です。実際のご判断にあたっては、税理士等の専門家にご相談ください。
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この記事の監修
税理士
丸山会計事務所代表 丸山 和秀(1986年生まれ)
税制支援20年以上、不動産税務、事業承継&M&A、法人資産税、設備投資時の優遇税制を得意とする。
「ともに未来を描く」を経営理念として、お客様と一緒に未来を描くことができる、提案型の“攻める税理士”として、経営ビジョンやニーズに寄り添い、適切なタイミングで、お客様のお悩みを解決するご提案を行う。


