賃貸物件の減価償却、正しく計算できていますか?——中古建物の耐用年数・定額法の縛り・借入金の落とし穴

投稿日:2026年06月18日

賃貸物件の減価償却、正しく計算できていますか?——中古建物の耐用年数・定額法の縛り・借入金の落とし穴

朝4時起きの名古屋の税理士丸山です。

賃貸物件を購入したオーナーから「毎年の申告で減価償却費を計上しているのに、思ったより節税になっていない」という声をいただくことがあります。

その背景には、耐用年数の計算ミス、償却方法の選択制限の見落とし、借入金利子の扱いの誤解、という3つの落とし穴が潜んでいます。

本日は、賃貸不動産の税務で見落とされがちな「減価償却と損益通算の3つの盲点」を整理します。

<目次>

1.中古建物の耐用年数は「簡便法」で計算する

2.建物は定額法のみ——定率法が使える資産との境界線

3.土地取得借入金の利子は損益通算できない

4.3つを押さえて、実効節税を最大化する

1.中古建物の耐用年数は「簡便法」で計算する

 賃貸用の不動産を中古で購入した場合、建物の耐用年数は法定耐用年数をそのまま使うのではなく、「簡便法」によって計算し直すことができます。計算式は2パターンです。

 ①耐用年数の全部を経過しているとき:法定耐用年数 × 0.2

  → 例:木造住宅(法定耐用年数22年)で30年経過の場合 → 22 × 0.2 = 4年

 ②耐用年数の一部を経過しているとき:法定耐用年数 −(経過年数 × 0.8)

  → 例:木造住宅で築20年の場合 → 22 −(20 × 0.8)= 6年

 

取得価額1,000万円の建物が耐用年数4年であれば、毎年250万円の減価償却費を計上できます。

短期間で大きな経費を確保できるこの仕組みは、取得直後の所得圧縮に大きく貢献します。

 

ただし簡便法を適用するには「実際の経過年数」の把握が必要です。

築年数が不明な場合は合理的な推定も認められますが、根拠資料(建物図面・現況写真・固定資産評価証明など)は取得時に必ず保存してください。

なお、計算した年数に1年未満の端数が出た場合は『切り捨て』となり、計算結果が2年に満たない場合は『2年』とします。

2.建物は定額法のみ——定率法が使える資産との境界線

 減価償却の計算方法には「定額法」と「定率法」があります。

定率法は取得直後の償却費が大きく、初期に多くの経費を計上できます。

しかし建物についてはこの選択肢がありません。

 

 平成10年4月1日以降に取得した建物は、定額法のみとされています。

また、平成28年4月1日以後に取得した建物附属設備(エアコン・給排水設備など)および構築物も定額法のみです。

個人・法人を問わずこのルールが適用されます。

 

 ただし建物附属設備は耐用年数が比較的短く(設備の種類によって6〜15年程度)、平成28年4月1日より前に取得したものは法人であれば定率法を選択できます。

また建物本体と附属設備の取得価額を区分して計上することで、附属設備の早期償却が可能になります。

建物と附属設備を一括して「建物」として計上している申告は少なくなく、区分し直すことで節税余地が生まれるケースがあります

3.土地取得借入金の利子は損益通算できない

 賃貸物件をローンで購入した場合、不動産所得の赤字は給与所得や事業所得と損益通算できます。

これが賃貸経営における借入活用の基本的な節税メカニズムです。

しかし一点、重要な制限があります。

 

不動産所得が「赤字」になった場合、その赤字のうち「土地等を取得するために借り入れた負債の利子に相当する金額」は損益通算の対象から除外されます。

 

たとえば、不動産所得の赤字が200万円あり、そのうち土地部分に対応する利子が120万円であれば、120万円は給与所得等との損益通算に使えません(残りの80万円のみ通算可能です)。

※なお、不動産所得の赤字が土地の利子(120万円)より少ない場合は、その赤字全額が通算不可となります。

 

逆に、不動産所得が黒字であれば、土地の利子も全額経費として引くことができます。  

土地と建物を同一人から一括購入した場合には、借入金はまず建物の取得に充てられたものとする特例が使えます。

この特例の活用可否で節税効果は大きく変わります。

売買契約書に建物価格が明示されているか、融資の形態はどうかを取得前に確認しておくことが重要です。

 

さらに令和3年分の申告以降、国外の中古建物について簡便法等で耐用年数を計算している場合、その償却費相当額の損失は損益通算できないとされています。

国内・国外を問わず、何の資産の何の費用が損益通算の対象になるかを個別に確認する姿勢が求められます。

4.3つを押さえて、実効節税を最大化する

 中古建物の耐用年数簡便法・建物附属設備の区分計上・土地借入金利子の制限の3点は、いずれも取得前の段階から意識すべき事項です。

 

取得時に契約書・融資条件を整え、初年度から適切に計上することが長期的な節税の基盤となります。

購入前の段階から専門家に相談することで、税務上の最適解を見つけやすくなります。

 

 当事務所では、賃貸不動産の取得前シミュレーション、減価償却の最適設計、確定申告から法人化の検討まで、一貫してご支援しています。

「今の申告が正しいか確認したい」「新たに物件を取得したい」とお考えの方は、ぜひお気軽にご相談ください。

当事務所の経営理念「ともに未来を描く」のとおり、お客様の資産形成の先を一緒に考えることが、私たちの使命です。

 

【免責事項】本記事は一般的な税務情報の提供を目的としたものであり、個別の税務相談・アドバイスではありません。税法は毎年改正されます。具体的な税務判断・申告については、必ず税理士等の専門家にご相談ください。本記事の内容を参考にした結果生じた損害について、当事務所は一切の責任を負いかねます。

 

 ▼経営に役立つ情報をもっと知りたい方は
→ メルマガ登録はこちら
→ 丸山会計へのお問い合わせはこちら



この記事の監修

丸山会計事務所 税理士 代表 丸山和秀

税理士
丸山会計事務所代表 丸山 和秀(1986年生まれ)

税制支援20年以上、不動産税務、事業承継&M&A、法人資産税、設備投資時の優遇税制を得意とする。
「ともに未来を描く」を経営理念として、お客様と一緒に未来を描くことができる、提案型の“攻める税理士”として、経営ビジョンやニーズに寄り添い、適切なタイミングで、お客様のお悩みを解決するご提案を行う。

まずは事業継承について
詳しく話をきいてみたい

対面はもちろん、
オンラインのご相談も承ります!

簡単なご質問からでもお気軽に

無料相談は
こちらから!
TOP

×