不動産オーナーの敷金・保証金・礼金 — 「預ったお金」で税負担が動く3つの分岐

投稿日:2026年05月25日

不動産オーナーの敷金・保証金・礼金 — 「預ったお金」で税負担が動く3つの分岐

朝4時起きの名古屋の税理士丸山です。

「敷金は預り金だから、税金とは関係ない」

――そう思い込んでいた大家さんが、税務調査で数百万円の追徴を受けるケースは少なくありません。

敷金、保証金、礼金、更新料。名前は似ていても、税務上の取扱いは大きく異なります。

さらに、2027年4月から始まる新しいリース会計基準が、不動産賃貸の経理実務を静かに塗り替えようとしています。

今日は、不動産オーナーが押さえておきたい「預ったお金」の税務分岐を、3つの視点で整理します。

【目次】

1. 「返ってくる敷金」と「返ってこない保証金」――預り金と益金の境界線

2. 礼金・更新料の収益計上タイミング――貸主と借主で扱いが真逆

3. 2027年4月施行の新リース会計基準――預り敷金の経理が変わる

4. まとめ――契約書ベースで処理方針を組み立てる

1.「返ってくる敷金」と「返ってこない保証金」――預り金と益金の境界線

敷金や保証金は、その全額が「預り金(負債)」になるとは限りません。整理のポイントは「契約上、いつ、いくら返さないと決まっているか」です。

契約上、退去時に返還される部分は、受入敷金・保証金など固定負債の科目で計上し、収益にはしません。

一方、「敷引き」や「保証金償却」といった形で返還しないことが定められている部分については、その返還しないこととなった日の属する事業年度の益金に算入する必要があります(法人税基本通達2-1-41)。

 

例えば、保証金100万円を受け取り、そのうち20万円が『契約終了時に返還しない(敷引き)』と最初から定められている場合、税務上は原則として『受領した事業年度』に一括して益金算入する必要があります。

ここを『退去時に収益にすればいい』と勘違いして申告漏れを指摘されるケースが後を絶ちません。

一方、入居中の滞納など、後発的な事由で返還しないことが確定した部分については、その事由が発生した年度の益金となります(法人税基本通達2-1-41)ここで意外と見落とされるのが消費税です。

住宅家賃に紐づく保証金は非課税、店舗・事務所の保証金で返還しない部分は課税売上として扱う必要があります。

2.礼金・更新料の収益計上タイミング――貸主と借主で扱いが真逆

礼金・更新料は、契約の締結や更新時に賃借人から賃貸人へ支払われる、返還を要しない金銭です。同じお金でも、貸主側と借主側でその会計税務処理は真逆になります。

貸主(オーナー)側は、返還を要しないため、原則として受取時に全額を収益計上します。不動産賃貸業を営む法人であれば、「不動産賃貸収入」などの科目で営業損益に計上するのが一般的です。

借主(テナント)側は、税法独自の繰延資産として処理します。礼金・更新料は「資産を賃借するために支出する権利金等」に該当し(法人税法施行令14条)、支出の効果が1年以上に及ぶものは、賃貸期間または5年間(いずれか短い期間)で月割均等償却していきます。

ただし、礼金・更新料の金額が20万円未満であれば、支出時に全額費用処理することが認められています(法人税法施行令134条)。「20万円ライン」はテナント側の経理でしばしば判断ミスが起きる金額帯ですので、契約書を細かく確認してください。

3.2027年4月施行の新リース会計基準――預り敷金の経理が変わる

2027年4月1日以後開始する事業年度から、新しい「リースに関する会計基準」(企業会計基準第34号)が強制適用となります。中小企業の会計に関する指針を採用している中小法人には直接の影響はありませんが、上場会社の連結子会社や会社法上の大会社にあたる規模の不動産オーナー法人にとっては、預り敷金等の経理処理が大きく変わります。

主な変更点は二つあります。一つは、預り敷金等の会計処理が、これまでの「金融商品会計に関する実務指針」から「新リース適用指針」第86項に移行することです。もう一つは、返還しないことが契約上定められている金額について、「賃貸予定期間にわたり定額法により収益に計上する」という処理方法が明示化されたことです。これまで「重要性が乏しければ一括計上」と運用してきた処理は、見直しが必要となります。

借主側の影響はさらに大きく、オフィスや店舗の賃貸借契約のほとんどが「使用権資産」と「リース負債」としてオンバランス化されます。差入敷金についても、返還されない部分は使用権資産の取得価額に含めるという処理が定められました(新リース適用指針34項)。

なお、この新基準が適用されると、第2項で触れた『礼金・更新料』についても、貸主側は受取時の一括計上ではなく『リース期間にわたる定額法による収益計上』が原則となるため、売上計上のタイミングが大きく後ろ倒しになります。

4.まとめ――契約書ベースで処理方針を組み立てる

敷金・保証金・礼金・更新料は、呼び名で判断してはいけない、というのが今日の結論です。契約書のどこに「返還しない」と書かれているか、その金額はいくらか、消費税の課税区分はどうか――この三つを確認するだけで、税負担の分岐は驚くほど明確になります。さらに、2027年4月の新リース会計基準を見据え、今のうちから自社の処理ポリシーを整理しておくことが、将来の手戻りを防ぎます。

当事務所では、こうした会計税務の分岐点を契約書ベースで一つひとつ整理し、お客様と一緒に最適な処理方針を組み立てています。経営理念に掲げる「ともに未来を描く」とは、目先の節税だけでなく、新基準への移行も含めた中長期の経理体制まで伴走することです。敷金・保証金・礼金の処理に少しでも不安があれば、ぜひ一度ご相談ください。

【免責事項】

本記事は一般的な情報提供を目的として執筆したものであり、個別の税務判断・法律判断を保証するものではありません。実際の取扱いは契約内容や事業年度ごとの状況、最新の通達・基準改正によって異なる場合があります。具体的なご判断は、必ず税理士・公認会計士等の専門家にご確認ください。

 

 

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この記事の監修

丸山会計事務所 税理士 代表 丸山和秀

税理士
丸山会計事務所代表 丸山 和秀(1986年生まれ)

税制支援20年以上、不動産税務、事業承継&M&A、法人資産税、設備投資時の優遇税制を得意とする。
「ともに未来を描く」を経営理念として、お客様と一緒に未来を描くことができる、提案型の“攻める税理士”として、経営ビジョンやニーズに寄り添い、適切なタイミングで、お客様のお悩みを解決するご提案を行う。

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