売った不動産の税金、言われるままに払っていませんか?——譲渡所得で損しない4つの勘所

投稿日:2026年08月08日

売った不動産の税金、言われるままに払っていませんか?——譲渡所得で損しない4つの勘所

朝4時起きの名古屋の税理士丸山です。

不動産を売って手元に残るのは、「売った金額」そのものではありません。
そこから取得費と譲渡費用を差し引いた“もうけ”に対して税金がかかります。
ところが、この取得費や所有期間の数え方をほんの少し取り違えるだけで、納める税金が数十万円単位で変わってしまうことも珍しくありません。
今日は、売却の場面で「知らないと損をする」譲渡所得の勘所を、4つの視点でお話しします。

目次

1. 取得費が分からないと、すぐ「5%」で計算していませんか

2. 相続した不動産を売るなら「取得費加算の特例」を使い切る

3. 長期か短期かは“売った年の1月1日”で決まる——税率はほぼ2倍

4. 譲渡費用に入るもの・入らないもの——最後の取りこぼしを防ぐ

1. 取得費が分からないと、すぐ「5%」で計算していませんか

昔から持っている土地や、親から受け継いだ家。
「買ったときの契約書が見当たらない」というご相談はとても多いです。
取得費が分からないとき、税法では収入金額の5%を概算取得費として使うことが認められています
ただ、これはあくまで最後の手段です。
売値の5%しか経費にできないということは、残りの95%が“もうけ”とみなされ、そこに課税されるということでもあります。
売買契約書、住宅ローンの金銭消費貸借契約書、購入当時のパンフレットや通帳の記録など、実際の取得価額を裏づける資料が一つでも残っていれば、5%よりずっと有利に計算できる可能性があります。
「分からないから5%」と決めてしまう前に、まずは手元の資料を探すことをおすすめします。

番外編:契約書がなくても、「建物の取得費」は計算できる救済策

いくら探しても土地建物の契約書が見つからず、購入代金が不明な場合でも、建物部分については国税庁が公表している『建物の標準的な建築価額表』を用いて取得費を計算できる実務上の救済策があります。
建築年と構造(木造や鉄筋コンクリート造など)から当時の標準的な建築単価を割り出し、そこから減価償却費を差し引いて建物の取得費を算出します。
土地は5%になっても、建物だけでもこの計算を使えば、全体を5%で済ませるより大幅に税金を減らせるケースが多いのです。

2. 相続した不動産を売るなら「取得費加算の特例」を使い切る

相続で受け継いだ不動産を売るなら、ぜひ押さえていただきたいのが「取得費加算の特例」です。
これは、支払った相続税のうち、売却した不動産に対応する部分を取得費に上乗せできる制度です。
取得費が増えれば、その分もうけが圧縮され、譲渡にかかる税金が軽くなります。
ただし期限が厳格で、相続税の申告期限の翌日から3年以内、つまり相続開始からおおむね3年10か月以内に売却する必要があります。
この期限を1日でも過ぎると使えません。
「まだ売り時ではないから」と保留にしているうちに、期限を逃してしまう方が実際にいらっしゃいます。
相続した不動産の売却をお考えなら、この3年10か月を意識してスケジュールを組んでください

αの視点:概算取得費「5%」と「取得費加算の特例」はダブルで使える

1でお話しした「概算取得費(5%)」と、この「相続税の取得費加算の特例」ですが、実は併用が可能です。
取得費がどうしても分からず、やむを得ず5%で計算する場合でも、そこに特例による相続税額をしっかりと「上乗せ」することができます
両者は性質が異なるため、ダブルで取得費として加算することが税務上認められているのです。
取得費が不明だからといって、相続税の加算まで諦める必要はありません

3. 長期か短期かは“売った年の1月1日”で決まる——税率はほぼ2倍

不動産の譲渡益にかかる税率は、所有期間が5年を境に大きく変わります。
所有期間が5年を超えていれば長期譲渡で税率はおよそ20.315%(所得税・復興特別所得税15.315%+住民税5%)、5年以下なら短期譲渡でおよそ39.63%(所得税・復興特別所得税30.63%+住民税9%)。
ほぼ2倍です。
ここで落とし穴になるのが、5年の数え方です。
判定の基準日は「売った日」ではなく、“譲渡した年の1月1日”時点で所有期間が5年を超えているかどうかで見ます。
たとえば令和2年の暮れに取得した物件を令和7年の秋に売っても、令和7年1月1日時点ではまだ5年を超えていないため短期扱いになります。
あと数か月待って年明けに売れば長期になり税率が半分、というケースは決して珍しくありません。

αの視点:相続した不動産の所有期間は、亡くなった親が「買った日」から引き継ぐ

親から相続した不動産を売る場合、「自分が相続した日」から5年を数えるわけではありません。
税務上、相続や贈与で取得した不動産の所有期間は「亡くなった親(被相続人)が取得した日」をそのまま引き継ぐルールになっています。
つまり、親が何十年も前に買っていた実家であれば、自分が相続してすぐに売却したとしても余裕で「長期譲渡(5年超)」の条件を満たし、低い税率が適用されるのです。

売却の時期は、この1月1日基準で一度確認する価値があります。

4. 譲渡費用に入るもの・入らないもの——最後の取りこぼしを防ぐ

最後に、意外と取りこぼしが多いのが譲渡費用です。
売却のために直接かかった費用は、もうけから差し引けます。
仲介手数料、売買契約書の印紙税、測量費、そして土地を売るために建物を取り壊した費用や、借家人に支払った立退料もここに含められます。
一方で、譲渡費用にならないものもあります。
売る前に行った修繕費、固定資産税、住宅ローンを完済した際の抵当権抹消費用などは対象外です。
どこまでが差し引ける費用かを正しく仕分けするだけでも、課税されるもうけは変わってきます。
手元の領収書を「売却に関係するものかどうか」という視点で、もう一度見直してみてください。

結び

当事務所では、不動産の売却前の段階から、取得費の裏づけ資料の確認、各種特例の適用可否、売却時期の検討まで、お客様と一緒に手を動かしながらサポートしています。
売った後に「もっと早く相談すればよかった」とならないよう、動く前のご相談を大切にしています
私たちは経営理念「ともに未来を描く」を胸に、目の前の税負担だけでなく、その先の資産の活かし方までご一緒に考えてまいります

【免責事項】本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の税務・法務上の助言を行うものではありません。
実際のご判断にあたっては、必ず税理士等の専門家にご相談ください。
また、税制は改正される場合がありますので、適用にあたっては最新の情報をご確認ください。

 

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この記事の監修

丸山会計事務所 税理士 代表 丸山和秀

税理士
丸山会計事務所代表 丸山 和秀(1986年生まれ)

税制支援20年以上、不動産税務、事業承継&M&A、法人資産税、設備投資時の優遇税制を得意とする。
「ともに未来を描く」を経営理念として、お客様と一緒に未来を描くことができる、提案型の“攻める税理士”として、経営ビジョンやニーズに寄り添い、適切なタイミングで、お客様のお悩みを解決するご提案を行う。

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