固定資産税の精算金は経費?取得価額?—不動産購入直後に税負
投稿日:2026年05月23日

朝4時起きの名古屋の税理士丸山です。
「契約と引渡しが終わって、ようやく一段落」。
そんなタイミングで届くのが、固定資産税の精算書、印紙税、登録免許税、そして遅れて届く不動産取得税の通知書です。
これらを反射的に「初期費用=その年の経費」と仕訳してしまっていませんか。
実は、この処理の選び方ひとつで、その年の損金額も、その後数十年分の減価償却費も静かに動きます。
本日は、購入直後にまず通る3つの実務分岐を整理します。
■ 目次
1.固定資産税の精算金は「経費」ではなく「取得価額」になる
2.土地と建物の按分次第で、減価償却費が大きく動く
3.不動産取得税・登録免許税・印紙税は、取得価額と費用のどちらにもできる
4.「届いたから処理する」では遅い—購入前に決めておきたい論点
1.固定資産税の精算金は「経費」ではなく「取得価額」になる
固定資産税・都市計画税は、毎年1月1日時点で不動産を所有している者に納税義務が生じる地方税です(地方税法第343条、第359条)。
法令上は、年の途中で買主が支払った精算金に納税義務上の根拠はありません。
それでも不動産取引の慣行では、引渡日を境に売主と買主が日割で精算するのが一般的です。
ここで誤解が多いのが、買主側の処理です。
この精算金は、税金そのものの精算ではなく、不動産売買金額の調整分として取り扱われます。
法人税法上も、消費税法上も、不動産を取得するための対価の一部として取得価額に算入することとされており(消費税法基本通達10―1―6)、会計上も原則として取得に付随する精算額として取得価額の構成要素になります。
影響は地味ですが、長く効きます。
土地分は減価償却されないため帳簿価額にそのまま乗り、将来の売却時の取得費に反映されます。
建物分は耐用年数にわたって徐々に費用化されます。
「精算金は当年度の損金」と誤って処理すると、初年度の損金が過大計上となり、税務調査で否認されるリスクがあります。
2.土地と建物の按分次第で、減価償却費が大きく動く
土地・建物を一括で取得した場合、合計取引価額をどう按分するかで、その後の損益が大きく変わります。
土地は非減価償却資産、建物は減価償却資産だからです。
同じ1億円の物件でも、建物の按分が2割か4割かで、毎年の減価償却費は数百万円単位で変わります。
按分方法の原則は、不動産鑑定評価における土地・建物の構成比率を用いる方法です。
鑑定評価がない場合は、建物の再調達価額から既経過年数分の減価償却額を控除した未償却残額を建物価額とし、残額を土地価額とする方法や、固定資産税評価額の比率を用いる方法もよく使われます。
建物の躯体と附属設備の按分も同様で、エンジニアリングレポートで再調達価額を算定し、未償却残額比で按分するのが客観的です。
注意したいのは、建物の未償却残額を差し引いて残りを土地とする方法を選んだ場合で、全体の取引価額が積算価額を上回るときです。
乖離額をすべて土地に乗せて建物価額を不当に低くすると減価償却費を取りそこなう一方で、税務上は恣意的配分として否認されるおそれもあります。
「どの方法で、なぜその比率になったのか」を根拠資料として残しておくことが、後年の安全弁になります。
3.不動産取得税・登録免許税・印紙税は、取得価額と費用のどちらにもできる
意外に知られていないのが、不動産取得税・登録免許税・印紙税の3つの税金の扱いです。
法人税法上、これらは取得価額に算入せず、支出時の損金とすることが認められています(法人税基本通達7―3―3の2)。
一方で会計上は、原則として不動産の取得に付随する費用として取得価額に算入する処理がスタンダードです。
ここに、税務と会計のずれが発生する余地があります。
会計で取得価額に算入し、税務では損金にしたい場合は、申告調整で対応することになります。
さらに不動産取得税は、納税通知書が届くまで数か月かかるのが普通で、税務上は納税通知書の発行日(または納付日)の属する事業年度から取得価額に加算して減価償却を計算する取扱いがあるため、会計上で取得時点に遡って原価算入していると、減価償却超過が発生する可能性があります。
税率の前提も押さえておきたい論点です。
不動産取得税の標準税率は本則4%ですが、住宅または土地を令和9年3月31日までに取得した場合は3%の特例税率となります(地方税法附則第11条の2)。
さらに宅地評価土地は、同じく令和9年3月31日までの取得について、課税標準を価格の2分の1とする特例があります(同附則第11条の5)。
土地の所有権移転登記の登録免許税も、令和8年3月31日までは1.5%(本則2%)と軽減されています(租税特別措置法第72条)。
期限延長の有無は、毎年度の税制改正で必ず確認すべき項目です。
4.「届いたから処理する」では遅い—購入前に決めておきたい論点
ここまでの3つに共通するのは、通知書や精算書が「届いてから」処理を考えると選択肢が狭まる、という点です。
固定資産税精算金は売買契約書のどの項目で扱うか、登記費用や仲介手数料は取得価額か費用か、土地建物の按分は何の資料で根拠を残すか。
購入前の段階で会計処理の方針を固めておくと、申告調整や減価償却シミュレーションが格段にやりやすくなります。
■ 結び
当事務所では、不動産購入時の初期費用の処理方針づくりから、土地と建物の按分根拠の整備、減価償却シミュレーション、申告調整までを一連の流れとしてご支援しています。
私たち丸山会計事務所の経営理念は「ともに未来を描く」。目先の損金計上だけで終わらせず、将来の減価償却と税負担までを見渡したご提案を心がけています。
不動産購入をご検討中の方、購入直後で処理に迷われている方は、ぜひ一度ご相談ください。
【免責事項】本記事は2026年5月時点の税法・通達・特例措置の内容に基づく一般的な解説であり、個別事案への適用や結果を保証するものではありません。記載の数値・期日・税率は今後の税制改正により変更される可能性があります。実際の判断・申告は、必ず顧問税理士その他の専門家にご相談のうえで行ってください。
▼経営に役立つ情報をもっと知りたい方は
→ メルマガ登録はこちら
→ 丸山会計へのお問い合わせはこちら
この記事の監修
税理士
丸山会計事務所代表 丸山 和秀(1986年生まれ)
税制支援20年以上、不動産税務、事業承継&M&A、法人資産税、設備投資時の優遇税制を得意とする。
「ともに未来を描く」を経営理念として、お客様と一緒に未来を描くことができる、提案型の“攻める税理士”として、経営ビジョンやニーズに寄り添い、適切なタイミングで、お客様のお悩みを解決するご提案を行う。


