不動産は「現物」で持つのが当たり前?——証券化の仕組みに学ぶ、税コストと資金調達の3つの知恵

投稿日:2026年06月21日

不動産は「現物」で持つのが当たり前?——証券化の仕組みに学ぶ、税コストと資金調達の3つの知恵

おはようございます。

朝4時起きの名古屋の税理士丸山です。

「不動産証券化」と聞くと、REITや大手デベロッパーの世界の話で、自分の会社には関係ない

——そう感じる経営者・オーナーの方がほとんどだと思います。

 

しかし、証券化の実務には「不動産をどう持てば、資金繰りと税負担が軽くなるか」という知恵が凝縮されており、その発想は中小企業や個人オーナーの不動産戦略にもそのまま応用できます。

今日は、①売らずに資金をつくるオフバランス、②信託受益権という持ち方、③二重課税を避ける導管性、の3つの視点でご紹介します。

「うちには関係ない」と読み飛ばすには、もったいない内容です。

【目次】

1. 売らずに資金をつくる——「オフバランス」という発想

2. 「信託受益権」で持つと流通税が変わる

3. 二重課税を避ける「導管性」という知恵

4. 中小企業・個人オーナーはどう活かすか

1. 売らずに資金をつくる——「オフバランス」という発想

不動産証券化の出発点は、資金調達です。

所有する不動産をSPC(特別目的会社)に譲渡し、その不動産が生み出す賃料収入を裏付けに、投資家や金融機関から資金を集めます。

最大の特徴は、会社の信用力ではなく「物件の収益力」でお金を調達できること。

業績が厳しい局面でも、優良な収益物件があれば有利な条件での資金化があり得るのです。

 

さらに会計上は、その不動産に係るリスクと経済価値のほとんど全てが買い手側に移転していると認められれば、売却処理(オフバランス)が認められ、貸借対照表が軽くなって財務指標が改善します。

加えて、賃料収入の変動や資産価値の下落、災害損失といった「不動産を持ち続けるリスク」そのものを投資家側に移転できるのも、この仕組みの大きな効果です。

実際、バブル崩壊後に銀行借入が難しくなった企業が、保有不動産の流動化によって資金を確保し、財務を立て直してきた歴史があります。

 

「本社ビルや賃貸物件を持ち続けるか、資金化するか」という問いは、決して大企業だけのものではありません。

2. 「信託受益権」で持つと流通税が変わる

証券化の実務では、現物の不動産ではなく「信託受益権」の形で売買するのが一般的です。

理由のひとつが、取得時にかかる税金の違いです。

不動産取得税は、不動産の取得に対して固定資産税評価額を基礎として本則4%で課税されますが、信託受益権の取得は地方税法上の「不動産」の取得に当たらないため、課税されません。

 

また、信託を設定する際の委託者から受託者への所有権の移転も、形式的な移転として非課税とされています。

受益権の売買であれば所有権移転登記も不要となるため、登録免許税の負担も大きく変わります。

物件価格が大きいほど、この「持ち方の違い」だけで数百万円単位の差が生じることもあります。

3. 二重課税を避ける「導管性」という知恵

法人で不動産収益を上げると、まず法人税が課され、税引後の利益を配当すれば株主側でも課税される

——いわゆる二重課税です。

証券化で使われるTMK(特定目的会社)やREIT(投資法人)は、配当可能利益の90%超を配当するなどの「導管性要件」を満たすことで、支払配当を損金に算入でき、この二重課税を制度上回避しています。

 

組合型のスキームであれば、そもそも組合自体には課税されず、出資者に直接損益が帰属する形(パススルー)も選ばれています。

こうした仕組み自体を中小企業がそのまま使うことはできませんが、「収益を誰に帰属させ、課税を何回受けるか」という視点は、不動産の法人化や資産管理会社の設計とまったく同じです。

投資家に収益を届ける前に税金で削られない「素通しの器」をどう用意するか

——器の選び方ひとつで、最終的な手取りは大きく変わります。

4. 中小企業・個人オーナーはどう活かすか

明日からREITを作りましょう、という話ではありません。

持ち帰っていただきたいのは次の3点です。

 

第一に、不動産は「何を持つか」だけでなく「どう持つか」

——現物か信託か、個人か法人か——で税コストもリスクも変わること。

 

第二に、「売却」だけが資金化の手段ではないこと。

 

第三に、課税を受ける回数を意識して器を選ぶこと。

たとえば、収益物件の法人化を検討する際、移転コストとしての流通税まで含めて比較している方は意外と少ないものです。

いずれも、物件を買う前・売る前・承継する前の設計段階でこそ効果を発揮します。

動いてしまった後では、選べる選択肢は大きく減ってしまうのです。

「持ち方」は一度決めると簡単には変えられないからこそ、最初の設計が肝心です。

おわりに

当事務所では、不動産の取得・保有・売却・承継について、税負担とキャッシュ・フローの両面からシミュレーションを行い、お客様に合った「持ち方」の設計をお手伝いしています。

経営理念である「ともに未来を描く」のとおり、目先の節税にとどまらず、5年後・10年後の資産の姿から逆算したご提案を大切にしています。

不動産の持ち方に少しでも迷いがある方は、どうぞお気軽にご相談ください。

【免責事項】本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の取引や税務処理を推奨するものではありません。記事の内容は執筆時点の法令等に基づいています。実際の税務判断にあたっては、最新の法令をご確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。

 

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この記事の監修

丸山会計事務所 税理士 代表 丸山和秀

税理士
丸山会計事務所代表 丸山 和秀(1986年生まれ)

税制支援20年以上、不動産税務、事業承継&M&A、法人資産税、設備投資時の優遇税制を得意とする。
「ともに未来を描く」を経営理念として、お客様と一緒に未来を描くことができる、提案型の“攻める税理士”として、経営ビジョンやニーズに寄り添い、適切なタイミングで、お客様のお悩みを解決するご提案を行う。

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