不動産を売った利益、まるごと課税だと思っていませんか?――手取りを守る3つの特別控除の分かれ道

投稿日:2026年06月30日

不動産を売った利益、まるごと課税だと思っていませんか?――手取りを守る3つの特別控除の分かれ道

朝4時起きの名古屋の税理士丸山です。

「不動産を売って利益が出たら、その2割は税金で持っていかれる」

――そう聞くと、売却そのものをためらってしまう方は少なくありません。

 

確かに譲渡益には所得税・住民税がかかりますが、売る不動産が「自宅」「相続した実家」「使っていない土地」のいずれかに当てはまるなら、利益の大部分を非課税にできる特別控除が用意されています。

問題は、これらの特例が“使える状態”のうちに動かないと取りこぼしてしまうこと。

今日は、売却の場面別に手取りを左右する3つの分かれ道を整理します。

目次

1. なぜ「売却益=まるごと課税」ではないのか

2. 自宅を売るなら――3,000万円控除と軽減税率は“重ねて”使える

3. 実家を相続して売るなら――空き家の3,000万円控除は期限と要件に注意

4. 使っていない土地を売るなら――低未利用土地の100万円控除

1. なぜ「売却益=まるごと課税」ではないのか

不動産の譲渡益にかかる税率は、所有期間で大きく変わります。

売った年の1月1日時点で所有5年超なら長期譲渡として20.315%(所得税・復興特別所得税15.315%+住民税5%)、5年以下の短期なら39.63%と、ほぼ倍です。

まずここを取り違えて「あと数か月待てば長期だった」というケースが実際にあります。

そのうえで、譲渡益から差し引ける特別控除があるかどうかで手取りはさらに変わります。

控除は譲渡益=(売却代金−取得費−譲渡費用)から直接差し引けるため、効きが大きいのが特徴です。

取得費が不明なら売却代金の5%を概算取得費として使えますが、当時の契約書が残っていれば実額のほうが有利なことが多く、書類探しが最初の一手になります。

2. 自宅を売るなら――3,000万円控除と軽減税率は“重ねて”使える

マイホームを売ったときは、所有期間に関係なく譲渡益から最高3,000万円を控除できる「居住用財産の3,000万円特別控除」が使えます。

ここまではご存じの方も多いのですが、見落とされがちなのが軽減税率との併用です。

売った年の1月1日時点で所有期間が10年を超えていれば、3,000万円を引いたあとの課税譲渡所得のうち6,000万円以下の部分について、税率が14.21%(所得税10.21%+住民税4%)まで下がります。

3,000万円控除と軽減税率は別々の特例で、両方を同時に適用できるのが大きなポイントです。

たとえば譲渡益5,000万円なら、3,000万円を控除した残り2,000万円に軽減税率14.21%で約284万円。

軽減税率を使えない場合の20.315%なら約406万円ですから、併用の有無だけで120万円ほど差が出ます。

ただし、住宅ローン控除を受けている住宅では併用に制限があり、入居の前後一定期間にこの控除を使うとローン控除側が受けられないなどの調整が入ります。

買い替えを伴うときは、どちらが得かを必ず試算してから動いてください。

3. 実家を相続して売るなら――空き家の3,000万円控除は期限と要件に注意

親から相続した実家を空き家のまま売る場合にも、3,000万円特別控除(いわゆる空き家特例)が使えることがあります。

 

ただし要件が細かい。

対象になるのは、昭和56年5月31日以前に建てられた家屋で、区分所有建物(マンション等)ではなく、相続開始の直前に被相続人がひとりで住んでいた(同居者がいなかった)ものに限られます(※要介護認定等を受けて老人ホームに入所していた場合などは、例外として認められる救済措置があります)。 

そのうえで、家屋を耐震改修して売るか、取り壊して更地で売るかのどちらかが必要でした。

 

令和6年からは、売った後に買主が一定期間内に耐震改修や取壊しを行う場合も対象に加わり、使い勝手が広がっています。

注意したいのは期限と金額です

適用できるのは令和9年12月31日までの譲渡で、かつ相続開始日から3年を経過する日の属する年の12月31日までという二重の期限があります。

さらに令和6年1月1日以後の譲渡では、相続人が3人以上いる場合、控除額がひとり当たり2,000万円に縮小されます。

譲渡対価が1億円を超えると使えない点も合わせて、早めの判断が肝心です。

4. 使っていない土地を売るなら――低未利用土地の100万円控除

最後は、地方の遊休地や使い道のない小さな土地です。

都市計画区域内にある「低未利用土地」を令和7年12月31日までに売ると、譲渡益から100万円を控除できる特例があります。

 

控除額こそ大きくありませんが、もともと利益の小さい土地では効果が相対的に大きく、譲渡益が100万円未満ならその全額が控除されます。

要件は、売った年の1月1日時点で所有期間が5年超であること、市町村長による確認を受けること、そして譲渡対価が原則500万円以下(市街化区域など一定の区域内は800万円以下)であることです。

売却後の用途がコインパーキングになる場合は対象外となります。

「二束三文だから」と放置していた土地ほど、この控除で税負担をほぼゼロに抑えられる可能性があります。

おわりに

当事務所では、売却前の段階で取得費の資料確認から特例の適用可否、複数特例の有利判定までを一括でシミュレーションし、「売る前に手取りが見える」状態をつくることを大切にしています。

不動産の売却は、一度動けばやり直しがききません。だからこそ、お客様一人ひとりの状況に寄り添い、ともに未来を描くパートナーとして、最適な出口を一緒に考えてまいります。

気になる物件があれば、契約のサインをする前に、ぜひ一度ご相談ください。

免責事項

本記事は一般的な税務情報の提供を目的としたものであり、個別の税務判断や申告を保証するものではありません。実際の適用にあたっては、要件・期限・最新の税制改正により取扱いが異なる場合があります。具体的なご判断は、必ず税理士等の専門家にご相談のうえ行ってください。

 

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この記事の監修

丸山会計事務所 税理士 代表 丸山和秀

税理士
丸山会計事務所代表 丸山 和秀(1986年生まれ)

税制支援20年以上、不動産税務、事業承継&M&A、法人資産税、設備投資時の優遇税制を得意とする。
「ともに未来を描く」を経営理念として、お客様と一緒に未来を描くことができる、提案型の“攻める税理士”として、経営ビジョンやニーズに寄り添い、適切なタイミングで、お客様のお悩みを解決するご提案を行う。

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