「身内だから安く売る」——その不動産、贈与税や“みなし課税”で高くつきませんか?親族・同族間売買で損しない3つの分かれ道
投稿日:2026年07月25日

朝4時起きの名古屋の税理士丸山です。
親族や同族会社との不動産売買で、「身内同士なら相場より安くしても問題ないだろう」と考えていませんか。
ところが、安く売っただけで、売った人・買った人・関係する会社やその株主にまで、思わぬ税金が生まれることがあります。
ポイントは、税務の世界では「いくらで売買したか」よりも「その不動産の“時価”はいくらか」で課税が決まる、という点にあります。
今日は、①贈与税がかかる“時価”の落とし穴、②売り手自身に課税される「みなし譲渡」、③一つの取引が三重課税になる仕組み、の3つの視点から、損をしない値付けのポイントを整理します。
目次
1. 「相続税評価額で売れば安心」ではない——時価は“通常の取引価額”で判断される
2. 自分の会社へ“時価の半分未満”で売ると、売った側に「みなし譲渡」課税
3. 一つの売買が三重課税に——会社の受贈益・株価上昇による株主への贈与
4. 「時価」は税目ごとに違う——動く前に必ず確認を
1. 「相続税評価額で売れば安心」ではない——時価は“通常の取引価額”で判断される
親族や同族関係者の間で不動産を売買するとき、多くの方が「相続税評価額(路線価)を基準にすれば安心」と考えます。
確かに、相続税評価額どおりの価額で売買した場合は、原則として「著しく低い価額」には当たらないとした裁判例があります。
しかし注意したいのは、贈与とみなす際の“時価”は相続税評価額ではなく、通常の取引価額(客観的交換価値)で判断されるという点です。
実勢とかけ離れた安値で売れば、時価との差額が贈与とみなされ、買った側に贈与税がかかります(相続税法7条・みなし贈与)。
過去には、時価の7割程度の価額でもみなし贈与とされた裁決・裁判例があります。
逆に、相続税法7条には所得税のような明確な数値基準がなく、「どこまで下げたら著しく低いのか」は個別事情で判断されるため、「身内だから」という感覚だけで値付けするのは危険です。
+αの視点:身内じゃなくても油断禁物!「第三者間」でもみなし贈与は発動する
みなし贈与(相続税法第7条)は「親族間の租税回避を防ぐためのもの」と思われがちですが、実は条文上、取引当事者の関係性についての制限は一切ありません。
過去には、親族関係のない「知人(第三者)」に対して相場より著しく低い価額で土地を売却したケースにおいて、「第三者間の自由な取引であっても、著しく低い価額で財産を譲り受けたのであればみなし贈与が適用される」と判断された裁判例(平成17年1月12日さいたま地裁判決)が存在します。
「赤の他人だからいくらで売っても問題ないだろう」という油断も、思わぬ贈与税を招く危険があるのです。
2. 自分の会社へ“時価の半分未満”で売ると、売った側に「みなし譲渡」課税
売る相手が「自分の資産管理会社」など法人の場合、もう一つの落とし穴があります。
個人が法人へ時価の2分の1未満で不動産を譲渡すると、時価で売ったものとみなして売主に譲渡所得課税が行われます(所得税法59条1項2号、所得税法施行令169条・みなし譲渡)。
「安く譲ったのだから儲かっていない」という感覚とは正反対に、手元に入っていない売却益に対して税金がかかるのです。
含み益の大きい先祖代々の土地などでは、この差は決して小さくありません。
法人ではなく「個人(子どもなど)」へ時価の2分の1未満で安く譲った場合はどうなるでしょうか。
この場合、売主である親に「みなし譲渡課税」は行われず、実際に売った低い金額で収入が計算されます。
しかし、買った値段(取得費)より安く売って「赤字(譲渡損失)」が出たとしても、そのマイナスは税務上「なかったものとみなす」という厳しいルール(所得税法第59条第2項)があります。
つまり、他の不動産の売却益と相殺して税金を減らすような使い道は一切できなくなってしまうのです。
さらに厄介なのは、時価の2分の1以上で売った場合でも安心できないことです。
同族会社の行為計算否認に該当すると判断されれば、時価まで引き上げて課税されることがあります(所得税基本通達59-3)。
「半分以上なら大丈夫」と単純に線引きできない点に注意が必要です。
3. 一つの売買が三重課税に——会社の受贈益・株価上昇による株主への贈与
そして最も見落とされがちなのが、一つの取引で課税が何重にも重なることです。
個人が会社へ不動産を低額で譲渡すると、①売主本人に前述のみなし譲渡課税、②譲り受けた会社には時価との差額に受贈益課税(法人税法22条)、③会社の株式価値が上がることで、既存株主(多くはご家族)へのみなし贈与課税(相続税法9条)——と、最大で三方向に税が生じ得ます。
実際に、個人から会社へ不動産を低額で譲渡したところ、株式価値が上昇して株主に相続税、会社に法人税が課された裁判例もあります(東京地裁令和2年10月23日判決(令和2年(行ウ)113号等))。
会社に資産を移して身軽にしたつもりが、かえって一族全体の税負担を膨らませてしまうこともあるのです。
+αの視点:会社から会社への安売りは「寄附金」と「受贈益」のダブルパンチ
個人ではなく、「自分が経営するA社から、同じく自分が経営するB社へ」と、法人間で不動産を時価より安く売買した場合はどうなるでしょうか。
この場合、売ったA社では時価との差額が「B社への寄附金(法人税法第37条)」とみなされ、原則として経費(損金)に落とすことが制限されます。
一方で、買ったB社では時価との差額が「受贈益(法人税法第22条)」として利益に計上され、しっかり法人税が課税されます。
「グループ会社間の単なる資産の付け替え」という軽い感覚で行った取引が、両方の会社に重い法人税の負担を強いる結果となるため、法人間取引こそ厳密な時価算定が不可欠です。
4. 「時価」は税目ごとに違う——動く前に必ず確認を
やっかいなのは、ここでいう“時価”が税目ごとに異なることです。
譲渡所得では通常の取引価額、相続・贈与では原則として相続税評価額と物差しが違い、しかも同族間かどうかで否認リスクの見え方も変わります。
同じ土地でも、個人間で売るのか、自分の会社に売るのかで、気をつけるべき条文も税額も変わってきます。
だからこそ、身内や自社への不動産の売買は、契約書を交わす前、「いくらで売るか」を決める前が勝負です。
必要に応じて不動産鑑定を取り、税目ごとの時価をそろえて検討しておけば、みなし課税の多くは未然に防げます。
売り急いで安値をつける前に、想定される税目を一通り洗い出しておくことが、結果的にいちばんの節税につながります。
おわりに
当事務所では、親族間・同族会社との不動産取引について、時価の考え方の整理から鑑定評価の要否、みなし譲渡・受贈益・株価への影響まで、一つの取引を多面的に確認したうえで進め方をご提案しています。
「ともに未来を描く」——目先の一取引だけでなく、ご家族と会社の未来まで見据えて、最適な価額と手順を一緒に考えます。
売買を決める前に、どうぞお気軽にご相談ください。
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※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の取引・行為を推奨するものではありません。
個別の税務判断については、必ず税理士等の専門家にご確認ください。
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この記事の監修
税理士
丸山会計事務所代表 丸山 和秀(1986年生まれ)
税制支援20年以上、不動産税務、事業承継&M&A、法人資産税、設備投資時の優遇税制を得意とする。
「ともに未来を描く」を経営理念として、お客様と一緒に未来を描くことができる、提案型の“攻める税理士”として、経営ビジョンやニーズに寄り添い、適切なタイミングで、お客様のお悩みを解決するご提案を行う。


