会社と社長で不動産を売買、その値段で大丈夫ですか?——「時価」を外すと両方に課税される3つの分岐
投稿日:2026年06月23日

おはようございます。
朝4時起きの名古屋の税理士丸山です。
「自分の会社との取引なんだから、不動産の値段くらい自由に決めていい」
——そう思っていませんか。
社長個人と会社のあいだで土地や建物を売り買いするとき、相場とかけ離れた価格を付けると、じつは社長と会社の“両方”に思わぬ税金がかかることがあります。
しかも「安く売る」だけでなく「高く買う」でも課税の網は閉じます。
今日は、知らないと手取りを大きく削られる時価の落とし穴を、
(1)社長から会社へ安く売る場合、(2)会社から社長へ安く売る場合、(3)高く売買する場合、
の3つの分岐で整理します。
目次
1.社長から会社へ「安く」売ると、何が起きるか
2.向きを変えても安全地帯はない——会社から社長へ「安く」売る場合
3.「高く」売買しても課税される——高額取引の落とし穴
4.否認されないために——「時価」をどう備えるか
1.社長から会社へ「安く」売ると、何が起きるか
まず押さえたいのが、個人が法人に資産を時価の2分の1未満の価格で譲渡すると、たとえ実際に受け取った代金が安くても「時価で売った」とみなして社長個人に譲渡所得税がかかる、という規定です(所得税法第59条第1項第2号、所得税法施行令第169条)。
手元に入っていない差額にまで課税される、いわゆる“みなし譲渡”です。
さらに見落としやすいのが、価格が時価の2分の1以上であっても安全とは限らない点です。
同族会社との取引で税負担を不当に減らしていると判断されれば、行為計算の否認によって時価で課税されることがあります(所得税基本通達59-3、所得税法第157条)。
「半額以上で売れば大丈夫」という理解は危険です。
そして買い取った会社の側も無傷ではありません。
時価と売買代金との差額は受贈益として法人税の課税対象になります(法人税法第22条)。
つまり一つの取引で、社長と会社の双方に課税される構図になり得るのです。
2.向きを変えても安全地帯はない——会社から社長へ「安く」売る場合
では取引の向きを逆にして、会社が社長へ安く売ればよいかというと、そこにも安全地帯はありません。
会社が時価より低い価額で社長に不動産を売ると、会社側では時価との差額が寄附金、あるいは役員賞与として扱われます(法人税法第37条・第34条)。
役員賞与と認定されれば損金に算入できないうえ、源泉徴収のもれも問われます。
受け取った社長個人の側も課税を免れません。
安く譲り受けた差額は、給与所得または一時所得として所得税の対象になります(所得税法第28条・第34条)。
「会社所有の物件を社宅がわりに安く買い取っておこう」という何気ない判断が、思わぬ所得税の負担につながるわけです。
3.「高く」売買しても課税される——高額取引の落とし穴
注意すべきは「安く」だけではありません。
相場より「高く」売買しても課税は生じます。
会社が社長から不動産を相場より高く買い取れば、上乗せされた分は社長への役員給与(賞与)と認定されかねません。
逆に社長が会社から高く買えば、その上乗せ分は会社への寄附とみられます。
要するに、時価から上にブレても下にブレても、その差額に課税の網がかかるということです。
実際、会社の代表取締役と会社との土地の売買をめぐっては、時価の2分の1基準の当てはめが裁判で割れた事例もあり、身内取引の価格設定は税務調査でねらわれやすい定番論点です。
「身内だから値段は自由」という発想こそ、いちばん危険だと考えてください。
4.否認されないために——「時価」をどう備えるか
カギは、価格の根拠となる「客観的な時価」をきちんと残しておくことです。
ここでいう不動産の時価は、通常の取引価額を指します。
相続税の路線価(相続税評価額)は相続や贈与のための物差しであって、売買の時価そのものではない点に注意してください。
実務では、不動産鑑定評価を取得する、近隣の取引事例や公示価格で価格を裏づける、といった準備が有効です。
また社長個人と会社の取引は利益相反取引にあたるため、取締役会(または株主総会)の承認手続きを踏んでおくことも欠かせません。
そして何より大切なのは順番です。
「いくらで売るか」を決めてしまう前に、税理士に相談してください。
価格を決めた後では直しがきかず、課税だけが残る——そんな事態を避けるための、ひと手間です。
おわりに
当事務所では、社長と会社のあいだの不動産取引について、時価の根拠づくりから契約・申告までを一貫してサポートしています。
「この値段で売って大丈夫か」と迷ったら、契約を結ぶ前にぜひ一度ご相談ください。
私たちは経営理念に掲げる「ともに未来を描く」の言葉どおり、目先の税負担だけでなく、その先の経営と資産の姿まで見据えて、最適な道筋をご一緒に考えます。
【免責事項】本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の税務・法務上の助言を行うものではありません。税法の解釈や適用は個々の事実関係や最新の法令・通達によって異なります。実際の取引・申告にあたっては、必ず税理士等の専門家にご確認ください。本記事の情報に基づいて生じたいかなる損害についても、当事務所は責任を負いかねます。
▼経営に役立つ情報をもっと知りたい方は
→ メルマガ登録はこちら
→ 丸山会計へのお問い合わせはこちら
この記事の監修
税理士
丸山会計事務所代表 丸山 和秀(1986年生まれ)
税制支援20年以上、不動産税務、事業承継&M&A、法人資産税、設備投資時の優遇税制を得意とする。
「ともに未来を描く」を経営理念として、お客様と一緒に未来を描くことができる、提案型の“攻める税理士”として、経営ビジョンやニーズに寄り添い、適切なタイミングで、お客様のお悩みを解決するご提案を行う。


