その不動産、身内に「安く」譲って大丈夫ですか?——税務上の時価を外すと課税される3つの分岐

投稿日:2026年06月15日

その不動産、身内に「安く」譲って大丈夫ですか?——税務上の時価を外すと課税される3つの分岐

おはようございます。

朝4時起きの名古屋の税理士丸山です。

「身内に譲るのだから、相場より安くしても問題ないだろう」

「相続税評価額で売っておけば税務署も文句は言えないはず」

——不動産オーナーの方からよく伺う言葉です。ところが税務の世界には〈税務上の時価〉という物差しがあり、これを外すと、売った側にも買った側にも思わぬ課税が飛んできます。

怖いのは、安く譲ったつもりが満額の税金を呼び込み、しかも当事者だけで終わらないことです。

今日は、知らないと損をする3つの分岐を、過去の裁判例を手がかりに整理します。

【目次】

1. 「相続税評価額で売れば安全」はどこまで正しいか

2. 第三者への売却でも“みなし贈与”は適用される

3. 自分の会社へ半額未満で売ると、売っていないのに所得税

4. 課税は売り手だけでは終わらない——買い手と株主への波及

「相続税評価額で売れば安全」はどこまで正しいか

親族間で不動産を安く譲ると、時価との差額が贈与とみなされ、買い手に贈与税がかかります。

これが相続税法第7条の「みなし贈与」です。

押さえておきたいのは、条文が「著しく低い価額の対価」と定めるだけで、何割までなら安全という明確な基準を置いていない点です。

過去には、地価公示のおおむね8割水準にあたる相続税評価額で親族間の土地売買を行ったケースについて、「著しく低い価額には当たらない」として贈与税の課税処分が取り消された判決(平成19年8月23日・東京地裁)もあります。

ただし、これは個別事情を踏まえた判断であり、「相続税評価額で売れば必ず安全」と言い切れるわけではありません

あくまで時価との開きが“著しい”かどうかで線が引かれます。

第三者への売却でも“みなし贈与”は適用される

みなし贈与は親族間の話で、赤の他人への売却なら関係ない」と思われがちですが、これは誤解です。

相続税法第7条は当事者の関係を問わず、客観的に著しく低い対価で財産を譲り受けた事実があれば適用されます。

実際、第三者間の土地取引にみなし贈与の規定を適用した判決(平成17年1月12日・さいたま地裁)も存在します。

問われるのは「相手が身内かどうか」ではなく「価額が時価から大きく乖離していないか」です。

売り急ぎや義理で相場よりかなり安く手放すと、買い手に予想外の贈与税が及ぶことがあります。

取引前に時価の根拠資料を残しておくことが、後日の指摘を防ぐ最大の備えになります。

とくに、共有持分の整理や、長年の付き合いのある相手への譲渡など、当事者に贈与の意図がまったくない場面でも適用されうる点には注意が必要です。

③ 自分の会社へ半額未満で売ると、売っていないのに所得税

オーナーが個人で持つ不動産を、自分の同族会社へ移すケースは少なくありません。

ここで要注意なのが所得税法第59条の「みなし譲渡」です。

個人が法人へ、時価の2分の1未満の価額で不動産を譲渡すると、実際にいくらで売ったかにかかわらず〈時価で売った〉ものとみなして譲渡所得税が課されます。

安く譲ったのに満額の税金がかかる、という逆転が起きるわけです。

代表取締役が自社へ時価の2分の1未満で土地を譲渡し、みなし譲渡の規定が適用された事例(平成3年4月26日・東京地裁)もあります。

個人から法人へ不動産を移すときは、まず「2分の1」という分岐ラインを必ず意識し、時価をきちんと把握したうえで価額を決めてください

 

なお、ここに最大の落とし穴があります。

譲渡先が『自身の同族会社』である場合、たとえ時価の2分の1以上(例えば時価の6割)で売ったとしても、税務署から『不当に税金を減らす行為(行為計算否認)』と認定されれば、結局『時価で売った』ものとして個人の譲渡所得税が課税されてしまいます。

さらに、買い手の法人側でも受贈益課税が生じるため、往復ビンタの課税を受けるリスクがあります。

課税は売り手だけでは終わらない——買い手と株主への波及

低額譲渡の本当の怖さは、課税が一人で完結しない点にあります。

個人から時価より安く不動産を譲り受けた法人は、その差額が「受贈益」として法人税の対象になります(法人税法第22条)。

さらに、同族会社が安く財産を取得して株式の価値が上がれば、その値上がり分が既存株主への贈与とみなされ、株主にも贈与税がかかることがあります(相続税法第9条、平成24年11月13日裁決)。

一つの取引が、売り手の所得税・買い手の法人税・株主の贈与税へと連鎖していく

——これが時価を外したときに生じる実務上のリスクです。

「誰に」「いくらで」「どの順序で」移すかを、動く前に設計しておくことが欠かせません。

対策の基本はシンプルで、移転の前に時価を客観的な資料で押さえ、価額と移転の手順をセットで組み立てておくこと。

これだけで防げる課税は少なくありません。

おわりに——動く前に「時価」を押さえる

当事務所では、不動産を動かす〈前〉の段階で税務上の時価を見極め、誰に・どの価額で・どの順序で移すのが最も有利かを一緒に設計しています。

動いてしまってからでは取り返しがつかないのが時価の世界です。

私たち丸山会計事務所は、記帳や申告の枠を超え、お客様と「ともに未来を描く」パートナーでありたいと考えています。

不動産の売買や移転をお考えなら、契約のサインをする前に、ぜひ一度ご相談ください。

本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の税務上の判断については、必ず税理士等の専門家にご確認ください。

 

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この記事の監修

丸山会計事務所 税理士 代表 丸山和秀

税理士
丸山会計事務所代表 丸山 和秀(1986年生まれ)

税制支援20年以上、不動産税務、事業承継&M&A、法人資産税、設備投資時の優遇税制を得意とする。
「ともに未来を描く」を経営理念として、お客様と一緒に未来を描くことができる、提案型の“攻める税理士”として、経営ビジョンやニーズに寄り添い、適切なタイミングで、お客様のお悩みを解決するご提案を行う。

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