相場より安く売買すれば円満?——不動産を親族・知人に譲るとき損しない税金の勘所3つ

投稿日:2026年09月02日

相場より安く売買すれば円満?——不動産を親族・知人に譲るとき損しない税金の勘所3つ

おはようございます。

朝4時起きの名古屋の税理士丸山です。

 

不動産を身内や知り合いに譲るとき、「相場より安くしてあげれば喜ばれるし、税金も少なくて済むだろう」と考える方は少なくありません。
ところが実際には逆で、「安く売る」「安く買う」という行為そのものが、思わぬ課税を招くことがあります。
しかもその課税は売った側と買った側の両方に及び、“他人同士の取引だから関係ない”とも言い切れません。

 
今日は、不動産を相場より安く動かすときに損をしないための、

①売る側の落とし穴、②買う側の落とし穴、③「安すぎる」の線引き、

という3つの視点を整理します。

目次

1. 安く売ったのに、売った人に税金——「みなし譲渡」の罠

2. 安く買った人にも税金——「みなし贈与」は他人同士でも起こる

3. では「いくらなら安すぎる」のか——「著しく低い価額」の線引き

4. 損をしないために、取引の前にやっておくこと

1. 安く売ったのに、売った人に税金——「みなし譲渡」の罠

まず驚かれるのが、安く売った“売り手”のほうに税金がかかるケースです。

 
個人が法人に対して時価の2分の1未満の価額で不動産を譲渡すると、実際の売却代金ではなく「時価で売ったもの」とみなして所得税が計算されます(所得税法59条、いわゆる「みなし譲渡」)。

 
たとえば時価5,000万円の土地を、自分が経営する会社に2,000万円で売ったとします。
手元に入るのは2,000万円ですが、税務上は5,000万円で売ったものとして譲渡所得を計算されるのです。
入ってこないお金に課税されるのですから、資金繰りの面でもこれは痛い。
オーナー社長が個人の不動産を自社に移すときに、最も踏みやすい地雷です。
ここで一つ実務上の注意があります。

 

この2分の1のラインは、土地と建物をひとまとめの総額で見るのではなく、原則として資産ごとに、時価をもとに判定される点です。
とりわけ建物には消費税が絡むため、「税込の総額で見ればちょうど半分だから大丈夫」と思っていても、消費税分や土地と建物の按分の仕方によっては、実質の対価が時価の半分をわずかに下回ってしまうことがあります。
2分の1ちょうどならセーフでも、1円でも下回れば時価課税が発動する崖のような基準ですから、ギリギリを攻めるときほど、総額の感覚ではなく、建物・土地それぞれの時価と対価を丁寧に突き合わせておくことが欠かせません。

 
なお時価の2分の1以上で売っていても、それが同族会社の税負担を不当に減らすと判断されれば否認される余地があります。
半額以上なら安全」ではない、と覚えておいてください。

2. 安く買った人にも税金——「みなし贈与」は他人同士でも起こる

次は買い手側です。

 
相場より「著しく低い価額」で不動産を譲り受けると、時価と実際に支払った額との差額が贈与とみなされ、買った人に贈与税がかかります(相続税法7条、いわゆる「みなし贈与」)。
たとえば時価5,000万円の土地を1,000万円で譲り受ければ、差額4,000万円をタダでもらったのと同じ、という理屈です。

 
ここで見落とされがちなのが、この規定は“親族間だから適用される”ものではないという点です。
条文は当事者の関係を問うておらず、実際に第三者間の売買にみなし贈与が適用された事例もあります。
他人と売買しているのだから贈与税は関係ない」という思い込みは危険です。
売り手には所得税法59条、買い手には相続税法7条——安い取引は、両側から狙われうるということです。

 

さらに、買い手側にはもう一つ見落としやすい負担が控えています。
みなし贈与税を払ったからといって、その不動産の取得費——将来売るときに差し引ける“元手”——が時価まで引き上げられるわけではない、という点です。
取得費は原則として、実際に支払った購入金額がベースになります。

 
つまり、安く買った瞬間に差額へ贈与税がかかり、そのうえで将来その不動産を売れば、値上がり益に対して今度は譲渡所得税がかかる。
買うときと売るときで、二段構えの負担になりうるのです(ごく低い価額で買った場合には、売り主の取得費と取得時期を引き継ぐ別の取扱いもあり、一律ではありません)。

 
いずれにしても“安く買えれば得”とは限らない、というのが実務の感覚です。

3. では「いくらなら安すぎる」のか——「著しく低い価額」の線引き

ではいったい、いくらまで下げると危ないのか。

 
相続税法7条は「著しく低い価額」としか書いておらず、明確な金額のラインはありません
ここが実務家の悩みどころです。

 
一つの手がかりが、過去の裁判例で議論された「時価の80%」という水準です。
実際に、相続税評価額(公示価格のおおむね8割の水準)で親族に土地を売買したケースで、「著しく低い価額とまではいえない」として、みなし贈与の適用が否定された裁判例があります。
相続税評価額そのものが時価の8割程度に設定されているため、その水準での売買は原則セーフと判断されやすい、という整理です。

 
ただしこれは「80%を超えていれば必ず安全」という固定ルールではありません。
土地の個別事情や、評価額が時価の8割を明らかに下回っている場合には、なお7条が適用される余地があります。
あくまで“目安”であって、最終的には個別判断だという点は外せません。

 

そしてもう一つ忘れてはならないのが、この「著しく低いかどうか」の判定に、当事者の善意や事情は基本的に考慮されないという点です。

 

実際に、こんな裁判例があります(さいたま地裁・平成17年1月12日判決)。
ある土地の持ち主が、身内の病気の治療費・入院費を工面するために買い手を探し、親族でも同族でもない知人が1,500万円で買い取りました。
当事者に税金逃れの意図などまったくありません。

 
ところが後日、税務署はこの土地を複数の鑑定をもとに時価4,513万円と評価し、売買価格との差額にみなし贈与税を課しました
裁判所も、相続税法7条は当事者が親族か第三者かも、善意か悪意かも問わず、不特定多数が競う公開市場ではない一対一の取引で、客観的な時価より著しく低い価額の譲渡があれば、それだけで課税してよい、として課税を支持しています。
「他人同士で、お互い納得しているのだから大丈夫」という感覚は、税務の物差しの前では通用しない、ということです。

 
だからこそ、身内や知人との相対取引ほど、当事者の感覚ではなく、鑑定評価など第三者の目を通した客観的な時価で値決めをしておくことが、結果として売り手・買い手の双方を守ることになります。

4. 損をしないために、取引の前にやっておくこと

まとめると、不動産を相場より安く動かすときは、「売り手の所得税(みなし譲渡)」と「買い手の贈与税(みなし贈与)」の両方を、取引の前に確認しておく必要があります。
カギになるのは、価格を決める前に“時価”を押さえることです。
時価があいまいなまま値段を決めてしまうと、後から税務署に「安すぎる」と指摘されたときに反論の土台がありません。

 
また、目的が事業承継なのか、親から子への移転なのか、法人への資産移転なのかによって、そもそも「売買」以外に贈与や現物出資といった選択肢のほうが有利なこともあります。
まずは時価の把握と、最終的に何を実現したいのか(出口)を整理すること。
これが遠回りに見えて、実は一番の近道です。

当事務所からのご案内

当事務所では、不動産の売買・贈与・法人への移転について、税務上の時価の考え方から出口の設計まで、数字と根拠をそろえてご一緒に検討しています。
「この価格で大丈夫だろうか」と迷ったら、契約書にハンコを押す前に、ぜひ一度ご相談ください。
私たちは、お客様と「ともに未来を描く」ことを何より大切にしています。

※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の税務上の取扱いを保証するものではありません。
実際のご判断にあたっては、必ず税理士等の専門家にご確認ください。

 

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この記事の監修

丸山会計事務所 税理士 代表 丸山和秀

税理士
丸山会計事務所代表 丸山 和秀(1986年生まれ)

税制支援20年以上、不動産税務、事業承継&M&A、法人資産税、設備投資時の優遇税制を得意とする。
「ともに未来を描く」を経営理念として、お客様と一緒に未来を描くことができる、提案型の“攻める税理士”として、経営ビジョンやニーズに寄り添い、適切なタイミングで、お客様のお悩みを解決するご提案を行う。

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