「不動産は法人に移せば節税」と思っていませんか?——手取りを増やす法人化、3つの分かれ道
投稿日:2026年07月23日

朝4時起きの名古屋の税理士丸山です。
「法人を作れば税金が下がる」——そう聞いて、勢いで会社を設立してしまう不動産オーナーは少なくありません。
ですが不動産の法人化は、
①どの“方式”で会社に乗せるか、
②いくらの家賃水準から動くか、
③貯まった株をどう畳むか、
という3つの分かれ道で、手残りが真逆になります。
入口の一度の判断が、10年後・20年後の相続まで尾を引く。
今回は、法人化で“損しない”ための3つの視点を整理します。
目次
1. 法人化には「3つの方式」がある——節税の主役は“所有方式”
2. 「いくらの家賃」から法人化が得か——損益分岐点の目安
3. 家族への役員報酬で“所得も相続財産も”分散する
4. 法人化して終わりではない——膨らむ株価と「総則6項」
1. 法人化には「3つの方式」がある——節税の主役は“所有方式”
個人所有の不動産を法人化するといっても、運営の形は大きく3つに分かれます。
会社が建物を持つ「不動産所有方式」、土地・建物は個人のままで管理だけを会社に委ねる「不動産管理委託方式」、個人が持つ建物を会社が一括で借り上げる「サブリース方式」です。
このうち節税効果が最も大きいのは、家賃収入そのものを会社に取り込める所有方式。
管理委託方式やサブリース方式は、会社に移るのが管理料の部分だけなので、所得を移す効果は限定的です。
管理料の水準は一般に家賃収入の5%程度が目安とされ、これを10%と高く設定すれば移転額は増えますが、「不相当に高額」とみなされると否認され、適正額で計算し直されるリスクが高まります。
どの器を選ぶかで、そもそもの効果の大きさが変わります。
2. 「いくらの家賃」から法人化が得か——損益分岐点の目安
法人化は「早ければ得」というものではありません。
個人の所得税は5%から45%までの7段階の超過累進で、住民税およそ10%と合わせると、高所得層では手取りの5割超が税金に消えます。
一方、資本金1億円以下の中小法人の法人税は、所得800万円以下が15%、超える部分が23.2%。
地方税を含めても儲けのおよそ2〜3割にとどまります。
だからこそ、個人の税率が高い人ほど会社へ所得を移す効果が出ます。
目安としては、課税所得ベースでおおむね600万円、税理士費用など法人維持コストも織り込むと700万円程度を超えてくると、所有方式が有利に傾きます。
逆にこの水準に届かない規模で会社だけ先に作ると、維持コストが節税額を食いつぶすこともあります。
3. 家族への役員報酬で“所得も相続財産も”分散する
法人化のうまみは税率差だけではありません。
会社から家族へ役員報酬を支払えば、所得を分散して一人あたりの税率を下げられます。
給与所得控除も人数分使えるため、オーナー1人に給与を集めるより、配偶者や子を役員にして分けたほうが、世帯全体の税負担は軽くなります。
さらに見落とされがちなのが相続への効果です。
オーナー1人に報酬を貯め込むと、その現預金がまるごと相続財産へ積み上がっていきます。
ある試算では、家族4人に分けて支払ったケースの30年後の相続税総額は、1人に集中させたケースのおよそ3分の1に収まりました。
ただし報酬は勤務実態に見合う金額であることが前提で、実態のない過大な役員報酬が否認された裁判例もあります。
4. 法人化して終わりではない——膨らむ株価と「総則6項」
最後に、いちばん見落とされがちな“出口”の話です。
法人化しても、会社に貯まった利益はそのまま消えるわけではなく、非上場株式の評価額として膨らみ続けます。
ある試算では、会社の株式評価が30年でおよそ6倍に増えました。
つまり法人化には“相続財産を現預金から株式へ付け替える”側面があり、放置すれば次の相続で重くのしかかります。
対策は、株価が低いうちに暦年贈与や相続時精算課税を使って計画的に株を子へ移すこと。
ただしやり過ぎは禁物です。
相続の直前に多額の借入れで不動産を購入し、評価額を大きく圧縮する手法は、令和4年4月19日の最高裁判決で「総則6項」により否認されました。
会社が取得した不動産も、取得後3年間は通常の取引価額で評価しなければならない制約があります。
節税は“早く・適正に・出口まで”設計してはじめて効きます。
おわりに
当事務所では、不動産の法人化について「方式の選定」から「家賃水準に応じた損益分岐点の見極め」、さらに「役員報酬による分散」と「株価が膨らむ前の出口設計」までを一本の線でご一緒します。
すでに会社をお持ちの方の“作った後”の見直しも歓迎です。
私たちが大切にしているのは、経営理念でもある「ともに未来を描く」こと。
目先の税額だけでなく、10年後・20年後のご家族の姿まで見据えて、いちばん納得のいく形を一緒に描きましょう。
気になる点があれば、どうぞお気軽にご相談ください。
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※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の取引・行為を推奨するものではありません。
税制は改正されることがあり、また個別の事情によって取扱いが異なります。
実際のご判断にあたっては、必ず顧問税理士等の専門家にご相談ください。
本記事の情報に基づく行動の結果について、当事務所は責任を負いかねます。
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この記事の監修
税理士
丸山会計事務所代表 丸山 和秀(1986年生まれ)
税制支援20年以上、不動産税務、事業承継&M&A、法人資産税、設備投資時の優遇税制を得意とする。
「ともに未来を描く」を経営理念として、お客様と一緒に未来を描くことができる、提案型の“攻める税理士”として、経営ビジョンやニーズに寄り添い、適切なタイミングで、お客様のお悩みを解決するご提案を行う。


