その不動産、売る前に「換える」を検討しましたか?——組替えで課税を抑える3つの視点
投稿日:2026年06月12日

おはようございます。
朝4時起きの名古屋の税理士丸山です。
収益性の低い土地を手放して別の物件に乗り換えたい。
兄弟で分けにくい土地をひとつにまとめたい。
そんな「不動産の組替え」を考えるとき、多くの方が思い浮かべるのは『売って、買い直す』というルートだけです。
けれど売却には譲渡所得税がついて回り、せっかくの含み益が税金で目減りしてしまいます。
実は、売る以外にも課税を抑える道筋があります。
今日は『換える』『相続後に売る』『取得費を立証する』という3つの視点で、組替えの税務を整理します。
目次
1. 「売る」前に「換える」——固定資産の交換の特例
2. 相続した不動産は「3年10か月」が分かれ道——取得費加算の特例
3. 取得費が分からないと売値の5%しか引けない——概算取得費の落とし穴
4. 組替えを動かす前に、必ず確認したいこと
1. 「売る」前に「換える」——固定資産の交換の特例
含み益のある土地どうしを交換すると、原則は「譲渡」とみなされ課税されます。
ところが所得税法58条の「固定資産の交換の特例」を使えば、一定の要件を満たす交換について『譲渡がなかったもの』とされ、課税を繰り延べられます。
要件は次のとおりです。
①交換で手放す資産・受け取る資産が、ともに1年以上所有された固定資産であること(販売目的の棚卸資産は対象外)。
②受け取る資産が、交換のためにわざわざ取得したものでないこと。
③土地は土地、建物は建物と、同じ種類どうしの交換であること(借地権は土地に含まれます)。
④交換の直前と同じ用途に使うこと。
⑤両者の時価の差額が、高いほうの価額の20%以内に収まっていること。
差額を埋めるために受け取った交換差金には課税される点、そしてこの特例は確定申告書に所定の事項を記載して初めて使える点に注意してください。
「等価だから税金はかからない」と思い込んで申告を失念すると、特例そのものが受けられなくなります。
2. 相続した不動産は「3年10か月」が分かれ道——取得費加算の特例
相続した不動産を売るなら、タイミングが税額を大きく左右します。
相続税の課税対象になった財産を、相続発生後から『相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日』までの間に譲渡すると、納めた相続税のうち一定額を、その資産の取得費に上乗せできます(措法39「相続税の取得費加算の特例」)。
相続税の申告期限は、相続開始を知った日の翌日から10か月です。
つまり、ざっくり『相続開始から3年10か月以内』が勝負どころになります。
加算できる額は、納付した相続税額に「売った財産の相続税評価額÷相続で取得した財産全体の相続税評価額(債務控除前)」を掛けて計算します。
ただし、他の相続人に代償金を支払って不動産を取得した(代償分割)ケースでは、この計算式にさらに複雑な調整が必要となります。
自己判断での計算は誤りのリスクが高いため、注意が必要です。
取得費が増えれば、その分だけ譲渡所得が圧縮され、所得税・住民税が軽くなります。
「相続した実家をいずれ売ろう」と先送りしているうちに期限を過ぎ、この特例を取り逃すケースは少なくありません。
3. 取得費が分からないと売値の5%しか引けない——概算取得費の落とし穴
古くから持っている土地、あるいは先祖代々受け継いだ土地を売るとき、最大の落とし穴が『取得費が分からない』問題です。
譲渡所得は「売値-取得費-譲渡費用」で計算しますが、取得費を証明できないと、売った金額のわずか5%しか取得費として引けません(措法31の4、措通31の4-1)。
たとえば3,000万円で売っても、取得費はたった150万円。
残りがほぼ丸ごと課税対象になってしまいます。
逆にいえば、当時の売買契約書、購入時の領収書、登記費用や仲介手数料、造成・改良費の記録などをかき集めて実額を立証できれば、課税所得を大きく圧縮できます。
「書類なんて残っていない」と諦める前に、ご相談ください。
購入当時の相場資料や抵当権の設定額、通帳の出金履歴といった間接的な資料から取得費の立証が認められる場合もあります。
4. 組替えを動かす前に、必ず確認したいこと
不動産を動かす前に確認したいのは、次の3点です。
第一に、売却と交換のどちらが手取りで有利か。
交換の特例が使えるなら、税負担を抑えたまま資産を入れ替えられます。
第二に、相続が絡むなら、申告期限からの3年がいつ切れるか。
第三に、取得費を裏づける書類が手元にあるか。
これらはいずれも、契約を結ぶ前——できれば動き出す前に固めておくべきものです。
いったん売買契約を交わしてからでは、本来選べたはずの特例が選べなくなることもあります。
「とりあえず売ってから考える」が、いちばん損をしやすい進め方なのです。
おわりに——当事務所からのご案内
当事務所では、不動産の売却・交換・買換えについて、税負担の試算から特例の適用要件の確認、必要書類の洗い出しまで一貫してサポートしています。
「ともに未来を描く」
——私たちは、目先の税金だけでなく、その先の資産形成や次世代への承継まで見据えて、最適な組替えの道筋を一緒に考えます。
不動産を動かす前に、まずはお気軽にご相談ください。
【免責事項】本記事は一般的な情報提供を目的とするものであり、個別の税務判断や法的助言を行うものではありません。実際の適用にあたっては、最新の法令・通達および個別事情を踏まえ、税理士・弁護士等の専門家にご相談ください。
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この記事の監修
税理士
丸山会計事務所代表 丸山 和秀(1986年生まれ)
税制支援20年以上、不動産税務、事業承継&M&A、法人資産税、設備投資時の優遇税制を得意とする。
「ともに未来を描く」を経営理念として、お客様と一緒に未来を描くことができる、提案型の“攻める税理士”として、経営ビジョンやニーズに寄り添い、適切なタイミングで、お客様のお悩みを解決するご提案を行う。


