土地を出してマンションをもらえば、税金はゼロ?——等価交換で損しない3つの分かれ道
投稿日:2026年09月07日

おはようございます。
朝4時起きの名古屋の税理士丸山です。
「先祖からの土地にデベロッパーがマンションを建てて、その一部を自分がもらう。
売っていないのだから税金はかからない」——等価交換方式の提案を受けた地主さんから、よくそう伺います。
結論を申し上げると、税金は「かからない」のではなく「先送りされている」だけです。
しかも先送りできるかどうかは、土地の場所、建物の形、申告書の書き方で決まります。
今日は損をしやすい分かれ道を3つに絞ってお伝えします。
目次
1. 等価交換は「交換」ではなく「譲渡」から始まる
2. 分かれ道① 使える特例は、土地の場所と建物の形で決まる
3. 分かれ道② 税金は消えていない——取得費が引き継がれる
4. 分かれ道③ 「取得の日」は引き継がれない
1. 等価交換は「交換」ではなく「譲渡」から始まる
等価交換方式は、地主が土地を提供し、事業者が建築費を負担して中高層の建物を建て、出資割合に応じて建物と敷地の共有持分を分け合う手法です。
自己資金も借入もほとんど使わずに遊休地を収益物件に変えられる。
ここが最大の魅力です。
ただし税務上、地主は土地の全部または一部を手放しています。
売買であれ交換であれ、土地等を手放せば譲渡所得として課税されるのが原則です。
等価交換が普及した本当の理由は、この課税を繰り延べる特例が用意されていたから、という側面が大きいのです。
裏を返せば、特例の要件を一つでも外すと、キャッシュが一円も入っていないのに多額の譲渡税だけが発生します。
等価交換で最も怖いのはこの状態です。
2. 分かれ道① 使える特例は、土地の場所と建物の形で決まる
地権者が個人の場合、実務の中心になるのは「立体買換えの特例」(措法37条の5第1項第2号)です。
主な条件は次のとおりです。
まず、土地が既成市街地等、これに準ずる区域、または中心市街地共同住宅供給事業の区域内にあること。
愛知県では名古屋市のほか春日井市・小牧市・尾張旭市・豊明市などが対象区域に含まれます(いずれも市街化区域内)。
次に、建てる建物が地上3階以上の耐火または準耐火構造で、床面積の2分の1以上が住宅であること。
建築基準法の検査済証を受けていること。
そして取得した建物を、自己や親族の居住用または自己の事業用・貸付用に、取得の日から1年以内に供すること。
従前の土地の所有期間は問われず、空地・遊休地でも使えます。
住宅にならない建物を建てる場合や、土地が対象区域外にある場合は、この特例は使えません。
代わりの候補が「特定の事業用資産の買換え特例」のうち長期所有資産の買換え(措法37条)ですが、所有期間10年超が要件で、繰延べも全額ではありません。
原則として譲渡価額の20%相当額(東京都特別区は30%、集中地域は25%など)が課税対象として残ります。
そして見落としが多いのが手続きです。
これらの特例は、確定申告書に適用条文を記載し、譲渡所得の内訳書、買換資産の登記事項証明書、その区域内にあることの市町村長の証明書(立体買換えなら検査済証の写しも)を添付して初めて適用されます。
要件を満たしていても、書類が一枚欠ければ受けられません。
なお事業用資産の買換え特例には適用期限があり、改正のたびに延長・見直しがされています。
着工前に、その時点の期限をご確認ください。
3. 分かれ道② 税金は消えていない——取得費が引き継がれる
ここが本日いちばんお伝えしたい論点です。
買換えの特例は「非課税」ではなく「課税の繰延べ」です。
たとえば時価4億円の土地(取得費5,000万円)を提供し、時価4億円の建物を取得したとします。
立体買換えの特例を使えば今回の課税はゼロ。
しかし取得した建物の税務上の取得価額は、4億円ではなく、土地の取得費5,000万円をそのまま引き継ぎます。
影響は二方向に出ます。
ひとつは将来の売却時。
仮に6億円で売れば、譲渡益は6億円−4億円=2億円ではなく、6億円−5,000万円=5億5,000万円で計算されます。
もうひとつは毎年の減価償却です。
償却の基礎も5,000万円ですから、償却費は本来の8分の1程度しか計上できません。
その分だけ毎年の所得が増え、税額が増える。
繰り延べた税金を、賃貸経営を通じて長期分割で払っていく構造なのです。
なお従前の土地の取得費が不明な場合、引き継ぐ取得価額は譲渡価額の5%となります。
「利回りは回っているのに手元に現金が残らない」という等価交換物件の多くは、ここに原因があります。
事業計画は必ず、引継ぎ後の取得価額で組み直してください。
4. 分かれ道③ 「取得の日」は引き継がれない
三つ目は、知らないと結果が大きく変わる論点です。
買換えの特例では取得価額は引き継がれますが、「取得の日」は引き継がれません。
平成14年に取得した土地を令和7年に等価交換に出した場合、取得した建物の取得の日は令和7年です。
これを令和8年に売却すると、所有期間5年以下の短期譲渡所得として約39%の税率(所得税・住民税等の合計)が適用されます。
長期なら約20%ですから、税率だけで倍近い差になります。
ここから逆算の視点が出てきます。
取得した住戸を近いうちに売る予定があるなら、あえて特例を使わず、等価交換の時点で長期譲渡として約20%を払って精算したほうが有利になる場合がある、ということです。
買換えの特例が本当に効くのは、取得した建物を長期にわたって貸し続ける場合に限られます。
さらに、取得した住戸を直後に売却すると、事業用・居住用に供していないため特例の適用自体が受けられません。
「とりあえず受け取って、必要な分だけ売ればいい」という発想は、税務上かなり分が悪い選択です。
結び
等価交換は、資金を出さずに遊休地を収益資産に変えられる有力な手法です。
同時に、税金がゼロに見えるがゆえに、出口の設計を省いたまま契約に進みやすい手法でもあります。
特例を使うか使わないかは、「この資産を何年持ち、最後に誰へどう渡すのか」という経営判断そのものです。
当事務所では等価交換のご相談をいただいた際、提示された事業計画書の利回りをそのまま受け取らず、引継ぎ後の取得価額で減価償却を組み直し、10年分の手取りキャッシュフローと将来売却時の譲渡税まで並べてお出ししています。
経営理念に掲げる「ともに未来を描く」のとおり、次の世代に渡すときの姿から逆算してご一緒に考えます。
提案書を受け取った段階で、判をつく前に一度ご相談ください。
免責事項
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の税務判断を保証するものではありません。
税制は改正される場合があり、実際の取扱いは個別の事実関係により異なります。
ご判断にあたっては、必ず顧問税理士等の専門家にご確認ください。
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この記事の監修
税理士
丸山会計事務所代表 丸山 和秀(1986年生まれ)
税制支援20年以上、不動産税務、事業承継&M&A、法人資産税、設備投資時の優遇税制を得意とする。
「ともに未来を描く」を経営理念として、お客様と一緒に未来を描くことができる、提案型の“攻める税理士”として、経営ビジョンやニーズに寄り添い、適切なタイミングで、お客様のお悩みを解決するご提案を行う。


