不動産の「組替え」、税金ゼロでできると思っていませんか?——交換・買換えで損しない3つの視点

投稿日:2026年06月26日

不動産の「組替え」、税金ゼロでできると思っていませんか?——交換・買換えで損しない3つの視点

朝4時起きの名古屋の税理士丸山です。

「収益物件を手放して、もっと条件の良い物件に乗り換えたい」

「古くなった自宅を住み替えたい」。

こうした不動産の“組替え”を考えるとき、多くの方が「特例を使えば税金はかからないはず」と思い込みがちです。

ところが、組替えに使う特例にはどれも細かな要件があり、たった一つを外しただけで、先送りできたはずの税金が数百万円単位で一気に表面化することがあります。

今日は、不動産の組替えで損をしないために押さえておきたい3つの視点をお話しします。

目次

1. 「交換特例」は便利。ただし“差額20%の壁”を超えると全部アウト

2. 事業用の「買換え特例」は“非課税”ではなく“課税の繰延べ”

3. 住み替えの「3,000万円控除」が、住宅ローン控除を消してしまうことも

4. まとめ——組替えは「動く前」に税理士へ

1. 「交換特例」は便利。ただし“差額20%の壁”を超えると全部アウト

土地と土地、建物と建物を交換して持ち替えるとき、本来は「交換も譲渡の一種」として、含み益に所得税がかかります。

しかし所得税法58条の「固定資産の交換の特例」を使えば、譲渡がなかったものとして課税を避けられます。

便利な制度ですが、要件は厳格です。

お互いが1年以上所有していた同じ種類の固定資産であること、交換で取得した資産を従前と同じ用途(土地なら宅地・田畑など、建物なら居住用・店舗用などの区分)に使うこと、そして交換する二つの資産の時価の差額が、高い方の価額の20%以内であること。

 

特に怖いのが、この“20%の壁”です。

等価のつもりでも評価がずれて差額が20%を1円でも超えると、特例そのものが使えなくなり、含み益の全額に課税されます。

また、差額が20%以内に収まって特例が使えた場合でも、相手から受け取った「交換差金」の分については譲渡があったものとして課税対象となる点にも注意が必要です。

 

なお、同じ種類の資産同士という条件に関連して、地主が貸している「底地」の一部と、借地人が持っている「借地権」の一部を交換してそれぞれを完全な更地にする手法も、実務上よく使われる有効な「土地と土地の交換」です。

いずれにしても「ほぼ同じ価値だから大丈夫」という感覚は禁物で、交換前に双方の時価をきちんと把握しておくことが欠かせません。

2. 事業用の「買換え特例」は“非課税”ではなく“課税の繰延べ”

賃貸物件などの事業用不動産を売って別の事業用不動産に買い換えるときに使えるのが、「特定の事業用資産の買換え特例」(措置法37条)です。

実務で最もよく使われるのが、いわゆる“3号買換え”。

ここで誤解が多いのは、この特例が税金を「免除」する制度ではなく、あくまで「先送り(繰延べ)」する制度だという点です。

 

しかも全額を先送りできるわけではありません。

一般的なケースでの課税の繰延べ割合は80%。つまり売却益の2割部分にはその年に課税されます(東京23区など特定の地域への買換えでは60%に下がるなど、地域によって割合が変わります)。

また、特例を使うための大前提として「所有期間が10年を超えること」という要件がありますが、この判定は「譲渡した年の1月1日において」で行われるため、丸10年経ってすぐの売却は特例対象外になるというカレンダー基準の落とし穴にも注意が必要です。

 

さらに令和6年4月1日以後は、譲渡した同じ年中に買換資産を取得する場合、税務署へ事前の“届出書”の提出が必要になりました。

しかもこの提出期限は「譲渡日または取得日のいずれか早い日を含む3月ごとの期間(1〜3月、4〜6月など)の末日の翌日から2ヶ月以内」という非常に変則的なものです。

この届出を忘れると特例自体を受けられなくなる恐れがあるため、手続きの段取りまで含めて事前に確認しておく必要があります。

3. 住み替えの「3,000万円控除」が、住宅ローン控除を消してしまうことも

マイホームを住み替えた方が見落としやすいのが、「居住用財産の3,000万円特別控除」(措置法35条)と住宅ローン控除の関係です。

新居をローンで購入して住宅ローン控除を受けている方が、後から旧自宅を売って3,000万円控除を使うと、実は両方は併用できません。

 

具体的には、新居に入居した年の翌年以後3年以内に旧自宅を売り、その譲渡に3,000万円控除などを使うと、すでに受けていた住宅ローン控除がさかのぼって適用できなくなります。

これは逆に「先に旧自宅を売って3,000万円控除を受け、その後に新居を買って入居した場合」でも同様で、順番にかかわらず両方の併用はできません。

要件に抵触すると、過去に受けた控除額に相当する税額を修正申告で納め直す事態も起こり得ます。

 

一方で、住み替えで旧自宅が安くしか売れず「売却損」が出た場合には、一定の要件を満たすことで、給与など他の所得と相殺して税金を取り戻せる「譲渡損失の特例」が使えます。

しかもこの損失の特例に限っては、新居の住宅ローン控除との併用が可能です。

「売却益が大きいから3,000万円控除」「ローンがあるから住宅ローン控除」と別々に判断すると、後で思わぬ追納が発生しかねません。

利益が出るか損が出るかを含め、全体の金額を試算して選ぶべき論点です。

4. まとめ——組替えは「動く前」に税理士へ

交換特例の“20%の壁”、買換え特例の“繰延べと届出”、そして3,000万円控除と住宅ローン控除の“併用不可”。

いずれも、契約してから気づいても取り返しがつかないものばかりです。

不動産の組替えは金額が大きいぶん、要件を一つ外すだけで税負担が大きく変わります。

 

当事務所では、こうした組替えのご相談を「動く前」の段階からお受けし、特例の要件確認から手続きの段取りまで一緒に組み立てています。

経営理念に掲げる「ともに未来を描く」の言葉のとおり、目先の一回の取引だけでなく、その先の資産づくりまで見据えてお手伝いします。

物件の組替えをお考えの際は、契約前にぜひ一度ご相談ください。

免責事項

本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の税務・法務上の判断や助言を行うものではありません。税制は改正される場合があり、適用には個別の事実関係の確認が必要です。実際のご判断にあたっては、税理士等の専門家にご相談ください。

 

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この記事の監修

丸山会計事務所 税理士 代表 丸山和秀

税理士
丸山会計事務所代表 丸山 和秀(1986年生まれ)

税制支援20年以上、不動産税務、事業承継&M&A、法人資産税、設備投資時の優遇税制を得意とする。
「ともに未来を描く」を経営理念として、お客様と一緒に未来を描くことができる、提案型の“攻める税理士”として、経営ビジョンやニーズに寄り添い、適切なタイミングで、お客様のお悩みを解決するご提案を行う。

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