不動産を買ったときの精算金・解体費・按分、経費で落とせると思っていませんか?――取得価額しだいで手取りが変わる3つの分岐

投稿日:2026年06月28日

不動産を買ったときの精算金・解体費・按分、経費で落とせると思っていませんか?――取得価額しだいで手取りが変わる3つの分岐

朝4時起きの名古屋の税理士丸山です。

不動産を買うとき、契約書に並ぶ「固定資産税の精算金」、更地にするための「古家の解体費」、そして土地と建物をひとまとめにした購入価額。

これらを「支払ったその年の経費」だと思って処理してしまう方は少なくありません。

 

ところが税務の世界では、その多くが“経費”ではなく“取得価額”に組み込まれ、

何年もかけて少しずつしか落とせない――

あるいはまったく落とせない――ことがあります。

今日は、不動産購入で見落とされがちな3つの分岐、(1)固定資産税の精算金、(2)古家の解体費、(3)土地と建物の按分について、手取りを守る視点でお話しします。

目次

1. 固定資産税の精算金は「税金の立替え」ではなく「売買代金」

2. 古家を壊して更地にする――解体費は経費にできないことがある

3. 土地と建物の按分が、毎年の減価償却(経費)を左右する

4. 購入前にやっておきたい3つの確認

1. 固定資産税の精算金は「税金の立替え」ではなく「売買代金」

固定資産税・都市計画税は、毎年1月1日にその不動産を所有していた人(=売主)に課される税金です。

法律上、年の途中で買った買主に納税義務はありません。

それでも実務では、引渡日を境に日割りで按分し、買主が自分の負担分を売主に支払うのが一般的です。

 

ここで誤解が生まれます。

「これは税金の精算だから、租税公課としてその年の経費に落とせる」と考えてしまうのです。

しかし税務上、この精算金は税金そのものの精算ではなく、売買代金の調整分として扱われます(消費税基本通達10-1-6)。

 

つまり買主にとっては不動産の取得価額に算入され、建物部分は減価償却を通じて少しずつ経費になります。

土地部分にいたっては、そもそも経費化されません。

 

売主側も油断できません。

受け取った精算金は売買代金の一部ですから、建物分は消費税の課税対象になり得ます。

 

固定資産税の精算において、実務上もう一つ注意したいのが「何月何日をスタート(起算日)として日割り計算するか」という点です。

実はこれ、地域によって商慣習が異なり、関東では「1月1日」、関西では「4月1日」を起算日とするのが一般的です。

もし遠方の物件を買う際、この起算日の違いを知らずに精算書に印鑑を押してしまうと、本来負担しなくてよい日数の精算金まで払ってしまうことになりかねません。

 

「税金の清算だから消費税は関係ない」という思い込みが、思わぬ申告漏れにつながることがあります。

2. 古家を壊して更地にする――解体費は経費にできないことがある

古い建物が建ったままの土地を買い、更地にしてから新たに活用する。

よくある話ですが、ここに大きな落とし穴があります。

 

法人税の取扱いでは、土地を利用する目的で建物付きの土地を取得し、取得後おおむね1年以内にその建物の取壊しに着手した場合、取り壊した建物の帳簿価額と取壊し費用の合計額は、その土地の取得価額に算入することとされています(法人税基本通達7-3-6)。

 

立退き料も同様に、土地の取得価額に含めるのが原則です(同7-3-5)。

 

土地は減価償却をしない資産です。

つまり、解体費や立退き料を土地の取得価額に乗せると、その土地を売却するその日まで経費にできない、ということが起こります。

「壊すための費用だから当然その年の損金」と考えていると、見込んでいた節税が丸ごと消えてしまいかねません。

最初から取り壊す予定だったのか、しばらく使ってから壊すのか

――その事実関係で扱いが変わる点も要注意です。

3. 土地と建物の按分が、毎年の減価償却(経費)を左右する

土地と建物を一括で「総額いくら」で買うと、契約書に内訳が書かれていないことがあります。

このとき避けて通れないのが、購入価額を土地と建物に分ける「按分」です。

 

なぜ重要か。建物は減価償却資産で毎年経費になりますが、土地は非減価償却資産で経費になりません。

同じ総額でも、建物への配分を大きくできれば、その分だけ毎年の減価償却費(経費)が増え、手取りが変わります。

だからこそ恣意的な配分は認められず、合理的な基準による按分が求められます。

鑑定評価による土地・建物の構成比や、建物の再調達価額から経過年数分の減価を控除した金額など、客観的な方法で分けるのが原則です(実務では固定資産税評価額の比で按分する方法も広く用いられます)。

 

さらに、建物の中でも「躯体」と「附属設備」では耐用年数が異なり、減価償却のスピードが変わります。

ここまで丁寧に分けておくと、初期の経費を厚くできる場合があります。

買ってから「内訳がない」と気づくより、契約の段階で意識しておきたいところです。

4. 購入前にやっておきたい3つの確認

最後に、購入の前にできることを整理します。

第一に、固定資産税の精算金は「取得価額に入る前提」で資金計画を立てること。

第二に、古家付き土地なら、取り壊す予定があるかどうかで税務が変わるため、解体費・立退き料の扱いを事前に確認すること。

第三に、土地と建物の内訳を契約書にできるだけ明記し、按分の根拠資料(固定資産税評価額や鑑定評価)を残しておくこと。

この3点を押さえるだけで、後から「経費にできなかった」と慌てる場面はぐっと減ります。

おわりに

当事務所では、不動産の購入・売却の前段階から、契約書の文言や資金計画にまで踏み込んでご相談をお受けしています。

買ってからでは取り返せない論点も、買う前なら設計できることがたくさんあります。

私たちの経営理念は「ともに未来を描く」。

お客様の数字の先にある将来像を一緒に見据えながら、最適な一手をご提案します。

不動産の取得をご検討の際は、ぜひお早めにお声がけください。

※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の税務・法務上のアドバイスを構成するものではありません。実際の取扱いは取引の内容や個別事情、最新の法令・通達により異なる場合があります。具体的な判断にあたっては、必ず税理士等の専門家にご相談ください。

 

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この記事の監修

丸山会計事務所 税理士 代表 丸山和秀

税理士
丸山会計事務所代表 丸山 和秀(1986年生まれ)

税制支援20年以上、不動産税務、事業承継&M&A、法人資産税、設備投資時の優遇税制を得意とする。
「ともに未来を描く」を経営理念として、お客様と一緒に未来を描くことができる、提案型の“攻める税理士”として、経営ビジョンやニーズに寄り添い、適切なタイミングで、お客様のお悩みを解決するご提案を行う。

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