不動産購入時の諸費用、どこまで経費にできる?——初年度の申告で差がつく3つの分かれ目

投稿日:2026年06月22日

不動産購入時の諸費用、どこまで経費にできる?——初年度の申告で差がつく3つの分かれ目

朝4時起きの名古屋の税理士丸山です。

 

不動産を購入すると、売買代金のほかに仲介手数料、登記費用、印紙税、不動産取得税、そして固定資産税の精算金と、多くの支払いが発生します。

「払ったものはすべて今年の経費」と思っていないでしょうか。

実は、支払いごとに「その年の経費にできるもの」と「土地・建物の取得価額に含めて、減価償却を通じて少しずつ費用化していくもの」がはっきり分かれており、処理を誤ると初年度の税負担も将来の税負担も大きく変わってしまいます。

本稿では、①固定資産税精算金の本当の性格、②経費にできる費用とできない費用の分かれ目、③土地と建物への按分、という3つの視点から整理します。

目次

1. 固定資産税の精算金は「税金」ではない

2. 経費にできる費用、取得価額になる費用

3. 土地と建物の按分が将来の税額を左右する

4. 購入初年度の申告チェックポイント

1. 固定資産税の精算金は「税金」ではない

固定資産税・都市計画税は、毎年1月1日(賦課期日)にその不動産を所有している人に課される地方税です。

年の途中で物件を買っても、その年の納税義務者はあくまで売主のまま変わりません。

そこで実務では、引渡日を境に日割計算した金額を買主が売主に支払う「精算」が慣行として行われています。

 

ここで誤解しやすいのが、この精算金の性格です。

買主が支払う精算金は、法律上の税金の負担ではなく、不動産を取得するための対価、つまり売買代金の一部にあたります。

したがって、租税公課としてその年の経費に落とすことはできず、土地・建物の取得価額に算入する必要があります。

消費税の取扱いも同じ考え方で、精算金は売買金額の調整分とされるため、建物に対応する部分は消費税の課税対象に含まれます。

「固定資産税」という名前に引きずられて経費処理してしまうと、税務調査で指摘されやすい典型的な論点といえます。

2. 経費にできる費用、取得価額になる費用

購入時の諸費用は、税務上大きく2つのグループに分かれます。

法人や賃貸業を営む個人事業者の場合、登録免許税(登記の際に納める税金)や司法書士報酬などの登記関連費用印紙税、不動産取得税は、取得価額に算入せず、支払った年の経費(損金)とすることが認められています。

一方、仲介手数料や取得報酬は、不動産の取得に直接要した費用として取得価額への算入が必要で、その年の経費にはできません。

 

重要なのは、前者が「選択できる」という点です。

経費にできるものを取得価額に含めてしまうと、建物分は数十年かけて減価償却、土地分に至っては売却するまで費用化されません。

手元資金の観点からは、経費にできるものは初年度に経費化しておくのが基本と考えられます。

なお、会計上はいずれも付随費用として取得価額に算入するのが原則とされるため、会計と税務で取扱いが分かれ得る点や、個人の自宅の購入では扱いが異なる点にも注意が必要です。

3. 土地と建物の按分が将来の税額を左右する

土地と建物をあわせて一括購入した場合、契約書に内訳金額が書かれていないことがあります。

建物は減価償却を通じて毎年費用化できるのに対し、土地は減価償却できません。

さらに、消費税の仕入税額控除が働くのも建物部分だけです。

つまり、土地と建物にいくらずつ振り分けるか(按分)によって、毎年の経費の額も、取り戻せる消費税の額も変わってくるのです。

 

按分の方法としては、鑑定評価で土地建物の構成比率が得られる場合にその比率で按分する方法のほか、建物の再調達価額から経過年数分の償却額を差し引いた金額を建物価額とし、残りを土地価額とする方法などが考えられます。

根拠なく建物の割合を大きくすると否認のリスクがあるため、客観的な資料に基づくことが大切です

また、建物本体と電気・給排水・空調などの附属設備を区分しておけば、耐用年数の短い設備部分を早く償却でき、初期の節税効果が高まります。

4. 購入初年度の申告チェックポイント

最後に、購入した年の申告前に確認したいポイントを挙げます。

第一に、固定資産税の精算金を租税公課として経費にしていないか

第二に、仲介手数料を経費に落としていないか

第三に、登録免許税・不動産取得税・印紙税を取得価額に含めたままにして、経費化のチャンスを逃していないか

第四に、土地・建物・附属設備の按分について、売買契約書や精算書、評価資料などの根拠を残しているか

 

初年度の処理は、その後何十年にもわたる減価償却や、将来売却したときの譲渡損益の計算にまで影響します。

購入の前後で一度、専門家と一緒に整理しておくと安心と思われます。

おわりに

当事務所では、不動産の取得時の経理処理から、按分の検討、購入後の申告までを一貫してサポートしております。

「この支払いは経費になるのか」と迷われたら、契約書と精算書をお手元に、どうぞお気軽にご相談ください。

経営理念「ともに未来を描く」のもと、お客様の不動産経営の未来を一緒に考えてまいります。

※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別具体的な税務判断を行うものではありません。実際のご判断に際しては、税理士等の専門家へご相談ください。また、税制は改正される場合があります。本記事は令和7年度時点の税制を参考にしています。

 

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この記事の監修

丸山会計事務所 税理士 代表 丸山和秀

税理士
丸山会計事務所代表 丸山 和秀(1986年生まれ)

税制支援20年以上、不動産税務、事業承継&M&A、法人資産税、設備投資時の優遇税制を得意とする。
「ともに未来を描く」を経営理念として、お客様と一緒に未来を描くことができる、提案型の“攻める税理士”として、経営ビジョンやニーズに寄り添い、適切なタイミングで、お客様のお悩みを解決するご提案を行う。

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