同族会社に自分の土地を貸すだけで、会社に多額の税金?——「借地権の認定課税」を防ぐ3つの分かれ道

投稿日:2026年07月20日

「借地権の認定課税」を防ぐ3つの分かれ道

朝4時起きの名古屋の税理士丸山です。

 

「自分の土地に、自分が経営する会社の建物を建てる」。
オーナー経営者にはよくある話です。
ところが、地代の決め方ひとつで、会社側に思いもよらない法人税がかかることがあります。
「身内同士の貸し借りなのに、なぜ?」——その正体が“借地権の認定課税”です。

 
今日は、

①なぜ課税されるのか、

②どう防ぐのか、

③相続のときまでどう効いてくるのか、

という3つの視点で、入口の判断が将来の手残りを変える理由をお伝えします。

目次

1. 「権利金を取らない」だけで会社に課税される理由

2. 防ぎ方その一——「相当の地代」を受け取る

3. 防ぎ方その二——「無償返還の届出書」を出す

4. 届出書は相続税の評価まで効いてくる

1. 「権利金を取らない」だけで会社に課税される理由

借地権の設定にあたって権利金を授受する取引慣行のある地域では、土地を貸すのに権利金を受け取らないと、税務上は「借地権をタダであげた」とみなされます。

 

借主が法人であれば、その借地権相当額が受贈益として法人の課税対象になり得ます。
これが権利金の認定課税です。
オーナー個人が自分の同族会社に土地を貸す、という典型パターンで、会社側に一度に多額の益金が立つことがあります。
更地の価額が高い土地ほど影響は大きく、現金は一円も動いていないのに税金だけが発生する——そんな理不尽に見える事態が起こり得るのです。
「家族の会社だから」「口約束で貸しているだけだから」という感覚のまま放置すると、あとで税務調査の場面で指摘され、思わぬ負担につながります。
なお、貸主が法人・借主が個人という逆のパターンでも、権利金相当額が借主個人への給与や賞与とみなされるなど、立場を変えて課税が及ぶ点にも注意が必要です。

番外編:「建物を建てない」青空駐車場や資材置き場なら認定課税はない

ここまで「会社に土地を貸すと認定課税のリスクがある」とお話ししてきましたが、例外があります。
それは、土地の上にしっかりとした建物を建てるのではなく、単なる「青空駐車場」や「物品・資材置き場」、あるいは「プレハブなどの仮店舗の敷地」として更地のまま会社に貸す場合です。

 

このような土地の使い方は、世間一般でもわざわざ権利金をやり取りする慣行がないため、無償返還の届出書を出さなくても借地権の認定課税は行われません(法人税基本通達13-1-5)。
用途が「建物所有目的」かどうかが、課税のスイッチが入る大きな分岐点となります。

2. 防ぎ方その一——「相当の地代」を受け取る

認定課税を避ける道は大きく二つあります。
一つ目は、権利金の代わりに高めの地代、いわゆる「相当の地代」を受け取る方法です。
相当の地代は、原則としてその土地の更地価額のおおむね年6%とされています。
この水準の地代を継続して支払っていれば、権利金の授受がなくても認定課税は生じません。
ただし、通常の地代よりかなり高額になるため、会社の資金繰りの面で現実的でないケースも少なくありません。
地代を取りすぎれば今度は会社から個人への利益移転と見られる余地も出てきます。
金額の設定と、その後の見直しの取り扱いまで含めて、慎重な設計が必要になります。

αの視点:途中で「地代を引き下げた」瞬間に発動する認定課税の罠

相当の地代方式を採用した場合、最も恐ろしいのが「後からの地代の引き下げ」です。
最初は高い地代を払っていても、会社の業績が悪化したからと、途中で通常の低い地代に引き下げてしまうケースがよくあります。
しかし税務上は、引き下げたことについて相当の理由がない限り、「地代を引き下げたその瞬間に、会社に対して借地権を贈与した」とみなされ、結局その時点で多額の認定課税(受贈益)が発生してしまいます(法人税基本通達13-1-4)。
一度決めた高い地代は途中で容易には下げられないという「資金繰りの縛り」を覚悟しなければなりません。

3. 防ぎ方その二——「無償返還の届出書」を出す

より実務的で使い勝手がよいのが二つ目、「土地の無償返還に関する届出書」です。
将来この土地は無償で返します、という内容を貸主・借主の連名で税務署に届け出るもので、これを提出しておけば、権利金がなくても、また相当の地代より低い地代であっても、認定課税は起こりません。
押さえておきたい要件は三つ。

 

第一に、貸主・借主のいずれかが法人であること。

第二に、地代を取らない使用貸借ではなく、固定資産税相当額を超える地代を授受する賃貸借とすること。

第三に、契約後は遅滞なく提出することです。

 

届出書一枚を出しているか、出していないか——たったそれだけで、税務上の扱いが真逆に変わります。
うっかり提出を忘れたまま何年も経ってしまうと、その間の低額な地代についてあらためて認定課税の論点が持ち上がりかねません。
土地を貸し始めるその時に、契約書とセットで届出書を準備しておくのが安全策です。

+αの視点:遅滞なく=「最初の確定申告書の提出期限まで」のタイムリミット

届出書の要件にある「遅滞なく提出」とは、具体的にいつまででしょうか。
税務の実務上、これは「土地の貸し借りを始めた日の属する事業年度の、法人の確定申告書の提出期限まで」と解釈されています。
つまり、契約してから何年も経った後に、税務調査が入るからと慌てて「過去にさかのぼって提出する(後出しジャンケン)」ことは原則として認められません。
提出のタイミングを逃しただけで数千万円の税金が課される恐れがあるため、土地の賃貸借契約書への調印と、税務署への届出書の提出は「必ずセットで同時に行う」ことを強くおすすめします。

4. 届出書は相続税の評価まで効いてくる

そして見落とされがちなのが相続の場面です。
無償返還の届出書を提出し、かつ通常の地代を受け取る賃貸借であれば、その土地は相続の際に「貸宅地」として、自用地評価額の80%で評価されます。
つまり20%分、評価が下がるということです。
一方、地代を取らない使用貸借だと借地権はないものとされ、土地は自用地の100%評価のまま。
ここで差がつきます。
さらに借主が同族会社である場合には、評価が下がった20%相当を、その会社の株式評価上の純資産に借地権として取り込む調整が入ります。
届出書があるかないか、賃貸借か使用貸借か——貸し方の入口の設計が、相続税の評価まで一本の線でつながっているのです。
たとえば更地評価額が1億円の土地であれば、賃貸借+届出書ありなら8,000万円で評価され、2,000万円分だけ相続財産を圧縮できます。
使用貸借のままなら1億円で評価されるわけですから、その差は決して小さくありません。
貸し方を一度決めてしまうと後から変えるのは容易ではないため、最初の設計がそのまま将来の税額に直結します。

おわりに

当事務所では、こうした土地の貸し借りの入口設計から、届出書の提出、地代設定、そして将来の相続を見据えた評価の組み立てまで、一つの流れとして丁寧に伴走しています。
目の前の処理の巧拙よりも、「どう貸すか」を決める最初の一歩が、10年後、20年後の手残りを大きく左右します。
私たちは経営理念「ともに未来を描く」のもと、数字の先にあるお客様の未来を一緒に見つめ、後悔のない一手をご提案します。
土地の活用や同族会社との取引に少しでも不安があれば、どうぞお気軽にご相談ください。

※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の税務判断を保証するものではありません。
税制は改正される場合があり、また個別の事情によって取り扱いが異なります。
実際の適用にあたっては、必ず税理士等の専門家にご相談ください。

 

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この記事の監修

丸山会計事務所 税理士 代表 丸山和秀

税理士
丸山会計事務所代表 丸山 和秀(1986年生まれ)

税制支援20年以上、不動産税務、事業承継&M&A、法人資産税、設備投資時の優遇税制を得意とする。
「ともに未来を描く」を経営理念として、お客様と一緒に未来を描くことができる、提案型の“攻める税理士”として、経営ビジョンやニーズに寄り添い、適切なタイミングで、お客様のお悩みを解決するご提案を行う。

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