大家の法人化 3方式と建物移転で差がつく節税術
投稿日:2026年06月15日

朝4時起きの税理士、丸山です。
本日は大家さんの法人化について、「どの方式を選ぶか」という一歩踏み込んだ視点からお話しします。
「法人化」と聞くと、会社をつくって持っている物件をまるごと移す
——そんなイメージをお持ちの方が多いのではないでしょうか。
ところが実務では、物件をすべて移すケースはむしろ少数派です。
何を法人に移すかによって節税効果も登記コストも大きく変わり、選び方を間違えると「設立したのに税金が下がらない」という事態にもなりかねません。
今日は3つの方式を、具体的な数字で比べてみましょう。
大家さんの法人化は「3つの方式」から選ぶ
法人化の方式は大きく3つに分かれます。
1つ目は管理委託方式
物件の所有は個人のまま、管理業務だけを法人に委託し、家賃の5〜10%程度を管理料として法人に移します。
設立も運営も手軽で登記コストもかかりませんが、移せる所得が限られるため節税幅は小さめです。
2つ目はサブリース方式
法人が物件を一括で借り上げ、入居者に転貸し、家賃の10〜20%程度を法人に残せます。
管理委託より効果は大きい一方、空室リスクを法人が負う前提なので、相場に見合った借上げ家賃の設定が欠かせません。
ここを高くしすぎると個人へ所得が戻り、低くしすぎると税務署から「実態のない家賃」と指摘されるおそれがあります。
3つ目が建物所有方式、いわゆる「建物法人化スキーム」
土地は個人のまま、建物だけを法人へ売却・移転し、家賃収入そのものを法人に帰属させます。
手続きは最も重いものの、3方式の中で節税効果は最大。
所得が大きいオーナーほど、この方式が選択肢の中心になります。
「建物だけ」を移す建物法人化スキームの威力
なぜ建物だけを移すのか。
土地まで移すと多額の譲渡税や登録免許税・不動産取得税がかかり、移転コストが節税効果を上回ってしまうからです。
築年数の経った建物は帳簿価額や固定資産税評価額が下がっていますが、安易にこの低い金額で法人へ売却してはいけません。
個人から同族法人への売却は『適正な時価』で行うのが大原則であり、時価より著しく低い価額で売買すると『低額譲渡(みなし譲渡等)』として税務署から重いペナルティを受けます。
だからこそ、不動産鑑定評価などを活用して税務署も納得する『適正な時価(売買価額)』をいかに合理的に算定するかが、プロの腕の見せ所になります。
具体例で見てみましょう。
不動産所得が年1,200万円ある個人オーナーの場合、所得税・住民税の最高税率はおよそ50%。
家賃を法人に移し、本人と配偶者へ役員報酬として分散すれば、給与所得控除も使えて世帯全体の税率を30%台に抑えられることもあります。
年間で200万〜300万円規模の差が生まれた事例もあります。
動くべきタイミングを数字で見極める
では、いつ動くべきか。
ひとつの目安は不動産所得が課税所得ベースで900万円を超えたあたりです。
この水準を超えると所得税・住民税の合計税率が法人実効税率(中小法人でおおむね25〜34%)を上回り、法人へ所得を移す効果が明確に出てきます。
加えて、建物の帳簿価額が下がっている築古物件ほど移転コストが小さく、スキームの効果が高まります。
逆に、購入直後で借入が多く所得が薄い段階での法人化は、社会保険料や法人住民税の均等割(赤字でも年7万円程度)といった固定コストだけが先行し、かえって損をすることもあります。
さらに見落としがちなのが、相続・事業承継まで見据えた効果です。
法人化して株式の形で資産を持てば、家族へ少しずつ株を贈与でき、将来の相続税対策にもつながります。
「所得の厚み」「建物の簿価」、そして「次世代への承継」
——この3つを同時に見ることが、失敗を避けるカギです。
「攻める税理士」として最適な一手を設計する
法人化は、一度動くと後戻りが難しい大きな決断です。
だからこそ、どの方式を、どのタイミングで、どの価額で移すかを事前に精密に設計することが欠かせません。
とりわけ建物の移転価額は税務調査でも見られやすい論点で、必要に応じて不動産鑑定評価を活用し、根拠ある価額を組み立てることが重要です。
丸山会計事務所は、確定申告の代行にとどまらず、お金が大きく動くこの瞬間にこそ踏み込む「攻める税理士」でありたいと考えています。
経営理念である「ともに未来を描く」の通り、オーナー様の10年先の資産形成まで見据えて、最適な法人化プランをご一緒に設計します。
まとめ
大家さんの法人化は「全部移す」ものではなく、管理委託・サブリース・建物所有の3方式から選ぶものです。
中でも建物だけを移すスキームは効果が大きく、不動産所得900万円超・築古物件という条件がそろえば検討の好機。
手軽さを取るか効果を取るか、空室リスクをどう扱うか、そして相続まで見据えるか
——判断軸は一つではありません。所得の厚みと建物の簿価を見極め、根拠ある価額で動くことが、節税の成否を分けます。
迷ったら、動く前にぜひ一度ご相談ください。
本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の税務相談については専門家にご確認ください。
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この記事の監修
税理士
丸山会計事務所代表 丸山 和秀(1986年生まれ)
税制支援20年以上、不動産税務、事業承継&M&A、法人資産税、設備投資時の優遇税制を得意とする。
「ともに未来を描く」を経営理念として、お客様と一緒に未来を描くことができる、提案型の“攻める税理士”として、経営ビジョンやニーズに寄り添い、適切なタイミングで、お客様のお悩みを解決するご提案を行う。


