大家の経費はどこまでOK?否認されない青色申告の線引き
投稿日:2026年06月25日

朝4時起きの税理士、丸山です。
本日は、大家さんの青色申告と経費計上の「線引き」についてお話しします。
「領収書さえ取っておけば、たいていのものは経費で落とせる」――そう思っていませんか。
実はこれ、税務調査で最も否認されやすい考え方です。
経費の本質は『その支出が不動産賃貸という事業の収入を生むために必要だったか』。
領収書はその証拠の一つにすぎません。
逆に言えば、必要性をきちんと説明できれば、多くの大家さんが見落としている支出もしっかり経費にできるのです。
今日は『どこまでがOKで、どこからがアウトか』という境界線を、具体例で整理します。
青色申告65万円控除は「2つの条件」で決まる
青色申告の最大の武器は、最大65万円の特別控除です。
所得税率20%・住民税10%の方なら、これだけで約19.5万円の節税になります。
ただし65万円をフルに取るには条件があります。
第一に、複式簿記による帳簿づけ。
第二に、e-Taxによる電子申告または電子帳簿保存です。
紙の申告だと控除額は55万円に下がります。
さらに見逃せないのが今後の動きです。
令和8年度税制改正により、令和9年分(2027年分)以後はこの特別控除が最大75万円へ引き上げられる予定です。
ただし75万円を取るには、e-Tax申告に加えて訂正・削除履歴を残せる『優良な電子帳簿』の保存といった、より厳しい要件が課されます。
逆に紙の申告は控除10万円へ縮小される見込みです。
今のうちから帳簿環境を電子化しておくことが、将来の控除増にそのままつながります。
たとえば家賃収入が年600万円、必要経費が250万円の大家さんなら、所得は差引350万円。
ここから65万円控除を引けば課税所得は285万円まで下がります。
控除を取らない場合と比べ、税率20%の方で年間13万円前後、10年で130万円もの差になります。
帳簿づけの手間を理由に白色申告のままにしておくのは、実にもったいない選択なのです。
さらに見落としがちなのが『事業的規模』の壁です。
アパートならおおむね10室、貸家なら5棟が目安(5棟10室基準)。
これを満たさない小規模な大家さんは、65万円控除の対象外となり、控除は最大10万円にとどまります。
つまり物件数の設計そのものが節税額を左右するということです。
税務調査で狙われる「家事費との混同」
否認の定番が、プライベートな支出(家事費)の混入です。
たとえば自宅兼事務所の電気代・通信費を全額経費にしているケース。
これは事業で使った割合(家事按分)でしか落とせません。
床面積や使用時間で合理的に按分し、その根拠をメモで残すことが重要です。
按分率の根拠がないと、調査で全額否認されかねません。
物件視察を兼ねた旅行費用や、家族との外食を『打ち合わせ』とする経費も要注意です。
一方で、賃貸経営に直結する支出
――入居者募集の広告料、管理会社への委託料、火災保険料、ローン金利、固定資産税、税理士報酬などは堂々と経費にできます。
『迷ったら、賃貸収入との因果関係を一言で説明できるか』を自問してください。
減価償却と少額減価償却で「攻める」
建物やエアコン、給湯器といった設備は、買った年に全額経費にはできず、減価償却として複数年に分けて計上します。
一見地味ですが、青色申告者には強力な特例があります。
取得価額40万円未満の資産を、その年に一括で経費にできる『少額減価償却資産の特例』です(年間合計300万円まで)。
この基準は令和8年度税制改正で従来の30万円未満から引き上げられ、2026年4月1日以後に取得した資産から適用されています。
たとえば38万円の業務用エアコンも、その年に全額経費化できるようになりました。
また、中古物件を取得した大家さんは耐用年数の見直しで償却を前倒しできます。
築22年超の木造なら法定耐用年数4年で一気に償却が進み、初期の数年で大きな経費を作れます。
減価償却は『過去の買い物を今の節税に変える』数少ない手段。
ここを設計できるかで手残りは大きく変わります。
家族への給与は「青色事業専従者給与」で経費化
事業的規模で賃貸経営を行う大家さんなら、生計を同じくする配偶者や親族に支払う給与を経費にできます。
これが青色事業専従者給与です。
あらかじめ届出を出しておけば、たとえば管理業務を担う配偶者へ月8万円を支給し、年間96万円を経費に計上できます。
所得を家族に分散することで世帯全体の税率を下げられるうえ、配偶者自身の所得控除の枠も活かせます。
ただし『専ら従事』の実態と、業務内容に見合った金額であることが前提。
架空・過大な給与は否認対象です。
実態を伴わせる設計こそが、攻めと守りの分かれ目になります。
丸山会計の視点 ― 申告書を「未来の設計図」に
私たち丸山会計事務所は、確定申告を単なる過去の集計作業とは考えていません。
経費の線引きを正しく押さえたうえで、物件の持ち方、法人化のタイミング、設備投資の年度配分まで踏み込んで提案する
――それが提案型の『攻める税理士』の仕事です。
『知らなかったから損をした』をなくし、お客様とともに数年先の手残りを描く。
経営理念『ともに未来を描く』は、一枚の申告書づくりからすでに始まっています。
青色申告の精度を上げることは、その第一歩なのです。
まとめ
青色申告65万円控除は複式簿記と電子申告、そして事業的規模が鍵です。
経費は『賃貸収入を生むために必要か』が判断軸で、家事費の混同は否認の温床になります。
少額減価償却や中古の耐用年数活用まで設計すれば、節税は守りから攻めへ変わります。
迷ったときこそ、専門家と一緒に線引きを確認してください。
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本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の税務相談については専門家にご確認ください。
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この記事の監修
税理士
丸山会計事務所代表 丸山 和秀(1986年生まれ)
税制支援20年以上、不動産税務、事業承継&M&A、法人資産税、設備投資時の優遇税制を得意とする。
「ともに未来を描く」を経営理念として、お客様と一緒に未来を描くことができる、提案型の“攻める税理士”として、経営ビジョンやニーズに寄り添い、適切なタイミングで、お客様のお悩みを解決するご提案を行う。


