空き地を売るとき「3000万円控除」だけで満足していませんか?——土地の譲渡で使い残しがちな特別控除3つ
投稿日:2026年08月27日

おはようございます。
朝4時起きの名古屋の税理士丸山です。
不動産を売って利益が出たとき、多くの方がまず思い浮かべるのは「3000万円特別控除」でしょう。
ただ、これはマイホーム(居住用財産)を売った場合の特例で、使っていない土地や空き地の売却には原則として使えません。
「自宅じゃないから特例はない」とあきらめ、譲渡益にそのまま税金を払っている方は少なくないのです。
実は、土地の譲渡には居住用以外にも差し引ける特別控除がいくつかあります。
今日は、見落とされがちな3つの視点――空き地に効く100万円控除、平成21・22年取得の土地に効く1,000万円控除、そして併用制限と手続きの落とし穴――を整理します。
目次
1. 「土地を売れば3000万円控除」という思い込み
2. 空き地・低利用地に効く「100万円特別控除」
3. 平成21・22年に買った土地なら「1,000万円特別控除」
4. 併用制限と“確認書”――申告しなければ受けられない
1. 「土地を売れば3000万円控除」という思い込み
3000万円特別控除は、あくまでマイホームを売ったときの特例です。
住まなくなった実家や相続した空き地、事業に使っていない遊休地の売却には、そのままでは適用できません。
そのため「特例が使えない土地は、利益に対して長期譲渡なら約20%の税金がかかるだけ」と考え、何も手を打たずに申告してしまうケースが目立ちます。
しかし土地の譲渡には、居住用以外にも差し引ける特別控除が用意されています。
金額は3000万円ほど大きくはありませんが、取得費が分からない土地や利益の小さい土地ほど、その効き目は相対的に大きくなります。
とくに古い土地は、買った値段が分かる資料が残っておらず、取得費を売却代金の5%で計算せざるを得ないことが少なくありません。
その分だけ譲渡益がふくらみますから、こうした特別控除を一つ重ねられるかどうかで、手残りは大きく変わってきます。
2. 空き地・低利用地に効く「100万円特別控除」
一つ目は「低未利用土地等の100万円特別控除」(措置法35条の3)です。
都市計画区域内にあり、住宅にも事業にも使われず放置されている、いわゆる空き地・低利用地を売ったとき、譲渡益から100万円を差し引けます。
利益が100万円に満たなければ、その利益の全額が控除され、税負担はゼロになります。
主な要件は、売った年の1月1日時点で所有期間が5年を超えること、売却代金が建物の対価も含めて500万円以下(市街化区域など一定の区域では800万円以下)であること、親子や夫婦など特別な関係者への売却でないこと、そして売った後にその土地が利用されることです。
ここで実務上とくに気をつけたいのが、この「500万円(一定の区域は800万円)以下」という金額のラインです。
判定に使うのは、売買契約書に書いた土地建物の代金だけではありません。
売買のときに買主から日割りで受け取る固定資産税・都市計画税の清算金も、税務上は譲渡代金の一部として収入金額に含めて判定します。
つまり、契約書の金額が495万円でも、清算金と合わせて501万円になれば、わずかな差でこの控除は使えなくなってしまいます。
値付けや資金の精算をする段階から、この「清算金込みの金額」を意識しておくことが欠かせません。
この制度は当初令和7年末までの時限措置でしたが、令和8年度の税制改正で令和10年12月31日まで延長されました。
「二束三文の土地だから」と後回しにしていた方こそ、いまが使いどきです。
3. 平成21・22年に買った土地なら「1,000万円特別控除」
二つ目は、意外と忘れられている「特定の土地等の1,000万円特別控除」(措置法35条の2)です。
リーマンショック後の景気対策として設けられたもので、平成21年中または平成22年中に取得した国内の土地を、所有期間5年超で売れば、譲渡益から1,000万円を控除できます。
控除額が大きいのが魅力で、しかも保有期間中の用途は問われません。
駐車場や賃貸に使っていた土地でも対象です。
取得のタイミングさえ合えば、いま売っても使える息の長い特例ですので、平成21〜22年に土地を買った記憶がある方は、購入時の契約書を確認してみてください。
ただし、ひとつ大きな注意点があります。
この特例は、あくまで「ご自身が平成21・22年に買った土地」が対象で、配偶者や直系血族・同族会社など特別な関係者から取得した土地や、相続・贈与・交換で受け継いだ土地は対象外とされています。
たとえば、お父様が平成22年に第三者から買った土地を相続したお子様が、それを売っても、この1,000万円控除は使えません。
相続では土地の取得日や取得費は引き継がれますが、この特例の対象になる「取得」からは相続・贈与などが除かれているためです。
古い契約書の日付だけを見て「使える」と早合点し、その前提で納税資金の計画を立ててしまうと、あとで思わぬ課税に慌てることになります。
4. 併用制限と“確認書”――申告しなければ受けられない
三つ目に押さえたいのが、これらは「重ねて使えない」という点です。
低未利用土地の100万円控除と特定土地の1,000万円控除は併用できず、どちらか有利な方を選びます。
また、同じ自宅敷地について、3000万円控除とこれらの土地の控除を重ねて使うこともできません。
ただ、視点を変えると打ち手はあります。
同じ土地の上では重ねられませんが、家屋と敷地で特例を「分け合う」ことは認められています。
たとえば平成22年に取得したマイホームを売って大きな利益が出た場合、土地部分に「特定の土地等の1,000万円控除」を、家屋部分に「居住用財産の3000万円控除」を、それぞれ当てはめるという組み立てです。
土地と建物それぞれの利益を丁寧に按分して設計すれば、一つの売却でも合わせて大きな控除枠を確保できる場面があります。
どちらか一方だけで申告を終えてしまうのと比べ、手残りは大きく変わってきます。
手続き面の落とし穴もあります。
低未利用土地の控除は、市区町村長が発行する「確認書」の添付が必須で、役所へ申請して交付を受ける段取りが必要です。
さらに、同じ一筆から分筆した土地について前年・前々年に同じ控除を受けていると使えません。
そして共通して大切なのは、いずれも確定申告をして初めて受けられるということ。
黙っていれば控除は適用されず、利益の満額に課税されてしまいます。
どの特例が使えるか、そもそも自分の土地が要件に当てはまるのかは、区域区分や所有期間、取得の経緯によって一つひとつ変わります。
売り急いで契約してから気づいても、確認書の段取りや期限に間に合わないことがありますので、売却を思い立った早い段階での確認が肝心です。
おわりに
当事務所では、不動産の売却をお考えの段階から、使える特例の棚卸しと有利判定、必要書類の段取りまでを一緒に整理します。
売った後で「あの控除が使えたのに」と気づく前に、ぜひ一度ご相談ください。
私たちは経営理念「ともに未来を描く」のもと、目先の税額だけでなく、その先の資産づくりまで見据えてお手伝いします。
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の税務・法務上の判断を保証するものではありません。実際のご判断にあたっては、最新の法令や個別のご事情を踏まえ、税理士等の専門家にご相談ください。
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この記事の監修
税理士
丸山会計事務所代表 丸山 和秀(1986年生まれ)
税制支援20年以上、不動産税務、事業承継&M&A、法人資産税、設備投資時の優遇税制を得意とする。
「ともに未来を描く」を経営理念として、お客様と一緒に未来を描くことができる、提案型の“攻める税理士”として、経営ビジョンやニーズに寄り添い、適切なタイミングで、お客様のお悩みを解決するご提案を行う。


