インボイス登録した大家さん、納税額の出し方で手取りが変わるのをご存じですか?——2割特例・経過措置・控除調整の3つの分岐
投稿日:2026年06月27日

朝4時起きの名古屋の税理士丸山です。
「インボイスは登録さえ済ませれば、あとは消費税を納めるだけ」
——そう思っていらっしゃる不動産オーナーの方は少なくありません。
ところが実務では、登録したあとの「納税額の出し方」「仕入れ側の控除」「建物を買ったときの扱い」で、最終的な手取りが大きく変わります。
今日は、賃貸オーナーが見落としがちで“知らないと損をする”3つの視点
——納税額の計算方法、段階的に縮小していく経過措置、そして居住用賃貸建物の控除調整——
を整理します。
目次
1. なぜ「登録して終わり」では損をするのか
2. 視点①:納税額の計算は3通り——2割特例・簡易課税・本則
3. 視点②:仕入れ側の経過措置は段階的に縮小——少額特例も
4. 視点③:居住用建物は「第3年度まで」が控除の勝負どころ
1. なぜ「登録して終わり」では損をするのか
免税事業者だった大家さんが、テナントや駐車場の借主からインボイスを求められて課税事業者に切り替える
——ここまでは多くの方が対応されています。
しかし課税事業者になると、納める消費税の「計算方法」を自分で選べることをご存じでしょうか。
選び方を誤ると、同じ売上でも納税額が大きく変わることがあります。まずは全体像をつかみましょう。
2. 視点①:納税額の計算は3通り——2割特例・簡易課税・本則
納税額の計算方法は大きく3通りです。
第一に本則課税。
売上に係る消費税から、実際に支払った経費の消費税を差し引いて納めます。
第二に簡易課税。
不動産賃貸業は第六種事業にあたり、みなし仕入率は40%です。
売上の消費税の40%を控除できたものとみなして計算します。
第三が2割特例。
令和5年度税制改正で設けられた緩和措置で、免税事業者からインボイス登録のために課税事業者になった方は、納税額を「売上の消費税の2割」に抑えられます。
これはみなし仕入率80%と同じ効果で、簡易課税の40%より有利になる場面が多いのが特徴です。
ただし2割特例が使えるのは、令和8年9月30日までの日の属する課税期間まで。
期限のある制度である点に注意してください。
3. 視点②:仕入れ側の経過措置は段階的に縮小——少額特例も
ここまでは売る側の話。
買う側、つまり仕入れの控除にも落とし穴があります。
免税事業者などインボイスを発行できない相手に支払った経費は、本来は仕入税額控除ができません。
ただし急激な負担増を避けるための経過措置があり、令和5年10月からは支払った消費税の80%を控除できます。
当初は令和8年10月に50%へ引き下げられる予定でしたが、令和8年度の税制改正でこの縮小は緩和され、令和8年10月以降は70%、その後50%、30%と、より緩やかに段階的に下がっていく見込みです。
いずれにせよ控除率は徐々に下がりますので、免税の業者に外注している方は、節目ごとに実質負担が増えることを織り込んでおきましょう。
あわせて知っておきたいのが少額特例です。
基準期間の課税売上高が1億円以下(または特定期間の課税売上高が5,000万円以下)の事業者は、令和11年9月30日までに行う税込1万円未満の課税仕入れについて、インボイスがなくても帳簿の保存だけで控除できます。
少額の経費までインボイスを集めて回る必要はありません。
4. 視点③:居住用建物は「第3年度まで」が控除の勝負どころ
最後は建物を買ったときの話です。
令和2年度の改正で、税抜1,000万円以上の居住用賃貸建物を取得しても、その消費税は原則として仕入税額控除ができなくなりました。
賃貸マンションを建てて消費税の還付を受ける、という従来の手法は使えません。
ただし救済もあります。
取得した日から「第3年度の課税期間」の末日までに、その建物を店舗など課税賃貸用に転用したり、第三者に譲渡したりした場合は、その割合に応じて控除税額をあとから調整して取り戻せます。
建物の出口や用途変更を考えているなら、この3年という時間軸を意識して動くかどうかで、戻ってくる消費税の額が変わってきます。
結び
インボイスは「登録して終わり」ではなく、登録したあとの選択と時間軸の管理こそが手取りを左右します。
当事務所では、賃貸オーナーお一人おひとりの物件構成と今後のご計画を伺ったうえで、納税方法の選択から建物取得・売却のタイミングまで、数字で見える形でご提案しています。
私たちが大切にしている経営理念は「ともに未来を描く」。目先の納税だけでなく、その先の資産の姿まで一緒に描いていきましょう。
インボイスや消費税でお悩みの際は、どうぞお気軽に丸山会計事務所までご相談ください。
免責事項
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の税務判断を保証するものではありません。実際の適用にあたっては、適用時期や個別の事情により取扱いが異なる場合がありますので、必ず税理士等の専門家にご相談ください。
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この記事の監修
税理士
丸山会計事務所代表 丸山 和秀(1986年生まれ)
税制支援20年以上、不動産税務、事業承継&M&A、法人資産税、設備投資時の優遇税制を得意とする。
「ともに未来を描く」を経営理念として、お客様と一緒に未来を描くことができる、提案型の“攻める税理士”として、経営ビジョンやニーズに寄り添い、適切なタイミングで、お客様のお悩みを解決するご提案を行う。


