相続した賃貸不動産の税務Q&A 大家が見落とす5論点

投稿日:2026年07月08日

相続した賃貸不動産の税務Q&A 大家が見落とす5論点

朝4時起きの税理士、丸山です。
本日は「相続した賃貸不動産(収益物件)の税務」についてお話しします。

 

親から賃貸アパートやテナントビルを相続したとき、多くの方は「名義を書き換えて、これからは自分が家賃を受け取るだけ」と考えがちです。
しかし収益物件の相続は、売る前から税務の論点が次々と続きます。
手続きの順番を一つ間違えるだけで、本来払わなくてよい税金や加算税が発生してしまうのです。
今日は大家さんが特に見落としやすい5つの論点を、Q&A形式で整理します。

Q1.亡くなった親の確定申告は誰がするの?

賃貸収入がある方が亡くなると、その年の1月1日から死亡日までの所得について「準確定申告」が必要です。
期限は相続開始を知った日の翌日から4か月以内。
通常の3月15日ではない点が落とし穴です。

 

相続人全員が連署して申告します。
家賃という毎月の収入があるため申告漏れは目立ちやすく、放置すれば無申告加算税や延滞税の対象に。

 

逆に、亡くなる直前の大規模修繕費や固定資産税などをきちんと経費計上すれば、所得税が還付されるケースも少なくありません。
準確定申告で確定した所得税の未納分・還付分は、そのまま相続財産(債務または財産)に反映される点も押さえておきましょう。

Q2.分割協議が終わる前の家賃は誰の収入?

遺産分割がまとまるまで物件は相続人全員の共有状態です。

 

この間に入ってくる家賃について、最高裁は「各相続人が法定相続分に応じて取得する」と判断しています(平成17年9月8日判決)。

 

つまり分割協議の結果で物件を取得した人が、過去にさかのぼって家賃を全部もらえるわけではありません。
長男が建物を相続しても、協議成立までの家賃は法定相続分どおり各人の不動産所得として申告が必要です。

 

ここを誤ると相続人間でのトラブルにも、申告漏れにも直結します。
なお、分割が長引くと小規模宅地等の特例が当初申告で使えず、いったん高い相続税を納める事態にもなりかねません。
家賃が動く物件こそ、早期の遺産分割が節税につながります。

Q3.減価償却は引き継げる?中古扱いで短くできる?

相続した建物の減価償却は、親の「取得価額」と「取得時期」をそのまま引き継ぎます。

 

よくある誤解が「中古資産だから耐用年数を短く見積もれる」というもの。
これは購入した場合の話で、相続・贈与で引き継いだ物件には中古資産の簡便法(耐用年数の短縮)は使えません。

 

親が使っていた法定耐用年数の残りで計算を続けます。
一方で、償却方法(定額法など)は相続人が改めて選択でき、未償却残高は引き継げるため、ここを正しく設定すれば毎年の経費を最大化できます。
建物と建物附属設備を区分して償却することで、節税余地が広がる点も実務上の重要ポイントです。

Q4.売却・小規模宅地の特例で税負担はどう変わる?

相続した物件をいずれ売るなら、譲渡所得の取得費も親の取得費を引き継ぎます。
取得費が不明だと売却額の5%しか経費にできず税負担が膨らむため、古い契約書の有無は早めに確認すべきです。

 

さらに、相続税の申告期限から3年10か月以内に売れば、納めた相続税の一部を取得費に加算できる「取得費加算の特例」が使えます。

 

保有を続ける場合も、貸付事業用宅地として小規模宅地等の特例(200㎡まで評価額50%減)が適用できれば、相続税そのものを大きく圧縮できます。
売る・持つの判断は、税負担まで含めて逆算することが欠かせません。

 

相続直前の「駆け込みアパート建築」は特例の対象外に 小規模宅地等の特例による50%減額は非常に強力ですが、平成30年の税制改正により大きな網がかけられました。
相続開始前「3年以内」に新たに貸付事業の用に供された不動産(※すでに事業規模で賃貸経営を行っているケース等を除く)については、原則としてこの特例の対象から除外されます。

 

つまり、相続が近くなってから慌ててアパートを建てたり、新たに駐車場を始めたりしても、評価額は半分に下がらないのです。
「借金してアパートを建てれば節税になる」というかつての常識は、動くタイミングによっては通用しない点に注意が必要です。

Q5.テナントや駐車場の「消費税」の義務も引き継ぐ?

居住用アパートの家賃には消費税がかかりませんが、テナントビルや貸店舗、貸駐車場を相続した場合、「消費税の納税義務」を引き継ぐかどうかの判定が必要です。

 

被相続人の2年前の課税売上高が1,000万円を超えていれば、引き継いだ相続人も自動的に消費税の課税事業者となります。
「自分はサラリーマンで事業をやっていないから免税事業者だ」と思い込んで申告を漏らすと、後から多額の消費税と加算税を請求される恐れがあります。

 

さらに、遺産分割が終わるまでの未分割期間中も、各相続人が法定相続分に応じて課税売上を計上して判定しなければなりません。
消費税の課税事業者に該当するかどうか、インボイスの登録をどうするかは、相続直後に真っ先に確認すべき重要論点です。

丸山会計だからできる「攻める」相続不動産サポート

相続した賃貸不動産は、準確定申告から減価償却の設計、将来の売却戦略までが一本の線でつながっています。
私たち丸山会計事務所は、単に申告を済ませる「守り」にとどまらず、どのタイミングでどの特例を使えば手元に最大限お金が残るかを先回りで提案する「攻める税理士」です。

 

経営理念は「ともに未来を描く」。
相続は終わりではなく、次の資産運用の出発点です。
お客様と一緒に長期の絵を描きながら、節税実績で培ったノウハウをご提供します。

まとめ

相続した賃貸不動産は、準確定申告(4か月以内)、分割前の家賃の帰属、減価償却の引き継ぎ、取得費加算と小規模宅地の特例という順番で論点が続きます。
どれも「知っていれば得、知らなければ損」という性質のもの。
いずれも動き出す前の設計で結果が大きく変わります。
判断に迷ったら、名義変更や売却の前に、ぜひ一度ご相談ください。

本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の税務相談については専門家にご確認ください。

 

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この記事の監修

丸山会計事務所 税理士 代表 丸山和秀

税理士
丸山会計事務所代表 丸山 和秀(1986年生まれ)

税制支援20年以上、不動産税務、事業承継&M&A、法人資産税、設備投資時の優遇税制を得意とする。
「ともに未来を描く」を経営理念として、お客様と一緒に未来を描くことができる、提案型の“攻める税理士”として、経営ビジョンやニーズに寄り添い、適切なタイミングで、お客様のお悩みを解決するご提案を行う。

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