相続した不動産の売り時Q&A 期限で変わる税額5論点
投稿日:2026年08月08日

朝4時起きの税理士、丸山です。
本日は「相続した不動産をいつ売るべきか」という、期限とタイミングで税額が大きく変わるテーマをQ&A形式でお話しします。
「相続した実家、いずれ売ればいい」——そう考えて何年も放置していませんか。
実は相続不動産の税務には“時限爆弾”のような期限が複数あり、1日過ぎただけで数百万円の特例が使えなくなることも珍しくありません。
今日はその落とし穴を、現場でよくいただく5つの質問でひも解きます。
Q1. 相続した空き家を売ると、3,000万円の控除が使えると聞きました
いわゆる「空き家の3,000万円特別控除」です。
一人暮らしだった親の家などを相続し、耐震改修または取壊しのうえ売却すると、譲渡益から最大3,000万円を控除できます。
譲渡益が3,000万円なら、本来かかる約600万円(税率20%)の税金がゼロになる計算です。
ただし適用期限が厳しく、相続開始日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売る必要があります。
令和6年からは買主が引渡し後に取壊す場合も対象になりましたが、“3年目の年末”という期限は変わりません。
逆算して動くことが必須です。
+αの視点:相続人が「3人以上」だと控除額が2,000万円に減る
令和6年1月1日以降の譲渡から、この特例には新たなルールが加わりました。
実家を相続した人が3人以上いる場合、特別控除の限度額が1人あたり3,000万円から「2,000万円」に縮小されてしまうのです。
兄弟が多いご家庭では、誰が相続して売却するかによって世帯全体での控除枠が大きく変動するため、遺産分割の段階から売却を見据えた設計が必要になります。
Q2. 相続税を払った不動産を売ると、税金が二重取りになりませんか
そこで使えるのが「取得費加算の特例」です。
支払った相続税のうち、その不動産に対応する部分を売却時の取得費に上乗せでき、譲渡益を圧縮できます。
ポイントは期限で、相続税の申告期限の翌日から3年以内、つまり相続開始から3年10か月以内の売却が条件です。
空き家控除とは併用できないため、どちらが有利かを試算して選ぶ判断が節税額を左右します。
+αの視点:期限ギリギリでも「契約日」で3年10か月の壁を越える
売却活動が長引き、取得費加算の「3年10か月」のタイムリミットまでに物件の引渡しが間に合わないケースがあります。
しかし、ここで諦める必要はありません。
税務上、譲渡の時期は原則として引渡しの日ですが、納税者の選択により「売買契約の日」とすることも認められています。
つまり、引渡しが期限を過ぎてしまっても、売買契約さえ3年10か月以内に締結していれば、この特例に滑り込むことができるのです。
Q3. 相続した土地に小規模宅地の特例を使いました。すぐ売って大丈夫?
要注意です。
事業用や貸付事業用の宅地で評価額を最大80%(貸付用は50%)減額する小規模宅地等の特例は、相続税の申告期限(相続開始から10か月)までその土地を保有し、事業を継続していることが要件になるものがあります。
申告期限前に売却すると特例が丸ごと否認され、評価減がなかったものとして相続税が跳ね上がるケースがあります。
「売却は申告期限を過ぎてから」が鉄則です。
Q4. 取得費がわからない古い土地。売却益はどう計算しますか
先祖代々の土地などで購入価額が不明な場合、税務上は売却価額の5%を概算取得費とせざるを得ないのが原則です。
1億円で売れば取得費わずか500万円、差額9,500万円に課税され、税負担が数千万円に膨らむこともあります。
しかし、購入時の資料や当時の公示価格、地価の推移、鑑定評価などを積み上げることで、5%より高い取得費を合理的に主張できる場面があります。
ここは専門家の腕の見せどころで、諦めるかどうかで手取りが大きく変わります。
Q5. 相続登記をしていません。放置するとどうなりますか
令和6年4月から相続登記が義務化されました。
相続で不動産を取得したことを知った日から3年以内に登記しないと、10万円以下の過料の対象になります。
加えて未登記のままでは売却も担保設定もできず、各種の売却特例のスタートラインにすら立てません。
過去に相続した分もさかのぼって義務の対象です。
+αの視点:過去の相続のタイムリミットは「令和9年3月31日」まで
「令和6年4月より前の相続だから自分には関係ない」と思うのは危険です。
令和6年4月1日より前に開始した相続で取得した不動産についても、原則として施行日から3年以内、つまり「令和9年(2027年)3月31日まで」に登記の申請を行わないと過料の対象になります。
タイムリミットは確実に迫っていますので、放置している未登記物件がある場合は早めの現状確認をおすすめします。
まずは登記の現状確認から始めましょう。
丸山会計事務所からのメッセージ
相続不動産の税務は、知っているかどうかで結果が大きく分かれる世界です。
3年、3年10か月、10か月——期限を1つ逃すだけで、使えたはずの特例が消え、数百万円単位で損をします。
私たち丸山会計事務所は、確定申告の代行にとどまらず、「いつ・どの順番で・どの特例を使って売るか」まで踏み込んで設計する“攻める税理士”です。
お客様とともに最適な出口を描く——経営理念「ともに未来を描く」のもと、名古屋から全国の資産家・オーナー様を支援しています。
相続した不動産をお持ちの方は、期限が来る前に一度ご相談ください。
まとめ
相続不動産は「持ち続けるか、いつ売るか」で税額が激変します。
空き家3,000万円控除は3年目の年末、取得費加算は3年10か月、小規模宅地の特例は申告期限までの保有が鍵。
さらに相続登記の義務化にも要注意です。
期限から逆算し、有利な特例を選ぶ——その一手間が数百万円の差を生みます。
本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の税務相談については専門家にご確認ください。
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この記事の監修
税理士
丸山会計事務所代表 丸山 和秀(1986年生まれ)
税制支援20年以上、不動産税務、事業承継&M&A、法人資産税、設備投資時の優遇税制を得意とする。
「ともに未来を描く」を経営理念として、お客様と一緒に未来を描くことができる、提案型の“攻める税理士”として、経営ビジョンやニーズに寄り添い、適切なタイミングで、お客様のお悩みを解決するご提案を行う。


