否認されない不動産相続税対策 失敗5事例に学ぶ
投稿日:2026年06月20日

朝4時起きの税理士、丸山です。
本日は「不動産を使った相続税の節税策」、なかでも“やりすぎて税務署に否認された失敗事例”を切り口にお話しします。
「現金で持っているより不動産に換えれば相続税は必ず下がる」
――そう思い込んでいませんか。
確かに不動産は評価が下がりやすい資産ですが、ここ数年、行き過ぎた節税が税務署に次々と否認されています。
下げ方を間違えると、追徴課税に加えて重加算税まで課され、“節税どころか大損”という事態にもなりかねません。
相続税は資産が大きく動くタイミングで最も差がつく税金です。
だからこそ、攻めるべきところは攻め、踏み込んではいけない一線は見極める必要があります。
今日は、なぜ不動産で評価が下がるのかという仕組みと、どこで失敗するのかを5つの事例で整理します。
そもそも、なぜ不動産で相続税が下がるのか
現金1億円は相続税評価でもそのまま1億円です。
ところがこれを不動産に換えると評価が大きく圧縮されます。
土地は時価のおおむね8割程度の路線価で、建物は建築費の5〜6割程度の固定資産税評価額で評価されるためです。
さらに賃貸に回すと、土地は「貸家建付地」、建物は「貸家」として2〜3割の評価減が加わります。
たとえば1億円で賃貸アパートを建てると、評価額は5,000万円前後まで下がることも珍しくありません。
これに小規模宅地等の特例(貸付事業用なら200㎡まで50%減)が重なれば、土地部分の評価はさらに半分近くまで下がります。
現金のまま相続すれば最高税率55%が課される資産が、適切に組み替えるだけで課税対象を大幅に圧縮できる
――これが不動産活用の基本的な効果です。
ただし、効果が大きいほど税務署の視線も厳しくなる点を忘れてはいけません。
失敗事例①〜③:やりすぎは「総則6項」で覆る
事例①は、相続直前に銀行借入で高額マンションを購入し、評価額を大幅に圧縮したケース。
令和4年4月19日の最高裁判決では、財産評価基本通達6項(総則6項)の適用により、路線価ではなく鑑定時価での評価が認められました。
ここで重要なのは、最高裁は通達評価額と時価の「乖離の大きさ」だけを理由に否認したわけではない、という点です。
近い将来の相続発生を予想し、税負担の軽減を知り、期待して、あえて購入と借入を企画実行した
――この租税回避の意図が、実質的な租税負担の公平に反し「他の納税者との間に看過し難い不均衡を生じさせる」と判断されたのです。
つまり、節税目的のみで経済的合理性の乏しい極端な対策を行うことこそが、否認の最大の引き金になります。
事例②は、相続発生のわずか数か月後に取得不動産を売却したケース。
保有目的が乏しいと判断され、節税目的が露骨だとみなされました。
事例③は、相続人が住む実態のない物件に小規模宅地の特例を適用しようとして、要件不備で全額否認された例です。
失敗事例④〜⑤:タワマン節税は通達改正で激変
事例④は、いわゆる「タワーマンション節税」。高層階ほど時価と相続税評価額の乖離が大きいことを利用した手法ですが、令和6年1月1日以後の相続・贈与から新しいマンション評価通達が適用され、仕組みが一変しました。
具体的には、①築年数、②総階数指数、③所在階、④敷地持分狭小度の4つの指数で「評価乖離率」を計算し、その逆数である評価水準が60%未満となる場合には、市場価格の60%水準まで区分所有補正率を乗じて評価額が引き上げられます。
高層階で敷地持分が少なく、市場価格との乖離が大きい物件ほど増税インパクトを直接受ける設計であり、従来は理論上時価の4割程度だった評価額が6割水準まで引き上げられ、節税効果は大きく削られています。
事例⑤は、共有名義での取得後に親族間で揉め、共有物分割や売却が進まず“塩漬け”になったケース。
税金は下がっても、争族と流動性リスクを招いては本末転倒です。
丸山会計の視点:攻めるからこそ「否認されない設計」を
私たちが大切にするのは、節税額の大きさだけを追わないことです。
重要なのは、購入から相続までの時間軸を十分に確保すること、賃貸経営など実態のある保有目的を持つこと、そして小規模宅地等の特例の適用要件を事前に固めることという“否認されない設計”です。
攻める税理士だからこそ、税務調査で揺るがない根拠を一緒に積み上げます。
経営理念「ともに未来を描く」のもと、目先の評価減ではなく、次世代へ資産を確実に引き継ぐ出口までを見据えてご提案します。
まとめ
不動産は相続税評価を圧縮できる強力な資産ですが、直前購入・直後売却・実態のないタワマン節税は否認のリスクが高まっています。
鍵は「時間軸・保有目的・特例要件」を満たす正攻法の設計です。
下げ方を誤ると追徴で逆効果になりかねません。
大きな資産が動く前に、ぜひ一度ご相談ください。
実務で押さえたい3つのチェックポイント
では、否認されないために具体的に何を意識すればよいのでしょうか。
第一に「時間軸」です。
相続発生が近いタイミングでの駆け込み購入は、それだけで節税目的を疑われます。
さらに平成30年改正により、相続開始前3年以内に新たに貸付事業の用に供された宅地等は、原則として小規模宅地等の特例(貸付事業用宅地等)の対象から除外されています(3年超の事業的規模での貸付事業者が供したものなどは除く)。
駆け込みでは特例そのものが使えないのです。
理想は被相続人が元気なうちに、数年単位で計画的に取り組むことです。
第二に「保有目的の実態」です。
実際に賃貸経営を行い、入居者を確保し、家賃収入を申告しているという事業実態があれば、評価減の正当性は格段に高まります。
第三に「特例要件の事前確認」です。
小規模宅地等の特例は、誰がどの宅地をどう承継し、申告期限まで保有・事業継続するかで適用可否が変わります。
要件を満たさないまま進めると、後から特例が使えず税額が跳ね上がります。
本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の税務相談については専門家にご確認ください。
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この記事の監修
税理士
丸山会計事務所代表 丸山 和秀(1986年生まれ)
税制支援20年以上、不動産税務、事業承継&M&A、法人資産税、設備投資時の優遇税制を得意とする。
「ともに未来を描く」を経営理念として、お客様と一緒に未来を描くことができる、提案型の“攻める税理士”として、経営ビジョンやニーズに寄り添い、適切なタイミングで、お客様のお悩みを解決するご提案を行う。


