相続した使い道のない土地、放置のままで大丈夫?——義務化された「相続登記」と「国庫帰属」、手放す3つの判断軸

投稿日:2026年05月16日

相続した使い道のない土地、放置のままで大丈夫?——義務化された「相続登記」と「国庫帰属」、手放す3つの判断軸

朝4時起きの名古屋の税理士丸山です。

「親から相続した田舎の土地、固定資産税だけ払い続けて何年も放置している」

――そんなご相談が、ここ最近ぐっと増えています。

実は令和6年4月1日から、これまで任意だった相続登記が義務化され、放置していると最大10万円の過料が科される可能性があります。

さらに令和5年4月からは、いらない土地を国に引き取ってもらえる「相続土地国庫帰属制度」もスタートしました。

本稿では、(1)義務化の中身と過料リスク、(2)国庫帰属制度の使い勝手、(3)売却・寄付・国庫帰属の選び方、の3つの視点で整理します。

【目次】

1. 令和6年4月から始まった「相続登記の義務化」――3年以内、過料は10万円

2. 「正当な理由」が認められるケース、認められないケース

3. 「相続土地国庫帰属制度」――引き取ってもらえる土地、もらえない土地

4. 売却・寄付・国庫帰属――3つの出口戦略の使い分け

1. 令和6年4月から始まった「相続登記の義務化」――3年以内、過料は10万円

相続登記とは、亡くなった方の名義になっている不動産を、相続人の名義に書き換える手続きです。

これまでは「やってもやらなくてもよい」任意の手続きでしたが、空き家・所有者不明土地の増加が社会問題となり、令和6年4月1日から義務化されました(不動産登記法76条の2)。

 

押さえるべきポイントは2つあります。

第1に、相続によって不動産を取得したことを知った日(典型的には遺産分割協議が成立した日)から、3年以内に登記の申請をしなければなりません。

第2に、令和6年4月以前に発生した相続も対象です。「父が亡くなったのは10年前だから関係ない」という思い込みは禁物で、施行日から3年、つまり令和9年3月末までに申請する必要があります。

違反した場合の過料は10万円以下(不動産登記法164条)。決して軽くないペナルティです。

 

なお、遺産分割協議が長引いている場合の救済策として、ひとまず「相続人申告登記」を行えば義務違反にはなりません。

最終的な持分登記は別途必要ですが、過料リスクをいったん止める応急処置として、知っておきたい論点です。

2. 「正当な理由」が認められるケース、認められないケース

過料は、「正当な理由」があれば科されません。法務省は通達で、

(1)相続人が極めて多数で必要書類の収集や他の相続人の把握に時間を要する場合、

(2)遺言の有効性や遺産の範囲が争われている場合、

(3)申請義務を負う相続人自身が重病などの諸事情がある場合

――を「正当な理由」の例として示しています。

 

逆に「忙しかった」「面倒だった」「価値がない土地だから放っておいた」は正当な理由とは認められません。

実務上、争いがなく書類も揃う一般的な相続では、3年は決して長い期間ではありません。

遺産分割協議で揉めると、それだけで1年以上かかるケースも多々あります。早めに専門家に相談し、登記までのスケジュールを逆算しておくことが肝要です。

3. 「相続土地国庫帰属制度」――引き取ってもらえる土地、もらえない土地

「登記したものの、結局使い道がない」「売れず、寄付も断られる」

――そんな土地のために、令和5年4月から「相続土地国庫帰属制度」がスタートしました。

相続または相続人への遺贈で取得した土地を、一定の要件を満たせば国に引き取ってもらえる制度です。

 

ただし、引き取り対象とならない土地もあります。

建物が建っている土地、担保権や使用収益権が設定されている土地、境界が明らかでない土地、有害物質で汚染されている土地、通路・墓地・水路として現に使われている土地などが該当します。

さらに、申請には1筆あたり原則1万4千円の審査手数料、承認後には10年分相当の管理費用にあたる負担金(宅地や森林などは原則20万円。土地の地目や面積によって個別に算定)の納付が必要です。

「タダで引き取ってもらえる」制度ではない点に注意が必要です。

4. 売却・寄付・国庫帰属――3つの出口戦略の使い分け

相続した「使わない土地」を手放す方法は、おおむね3つあります。

第1は売却。市場価値があれば最も合理的で、譲渡費用を差し引いてもプラスが残ります。

第2は隣地所有者や自治体への寄付。隣地所有者にとってメリットがある土地は、買い取り・寄贈で話がまとまることもあります。

第3が国庫帰属制度。売却も寄付も難しい山林や原野で、有力な選択肢となります。

 

判断の軸は「市場性」「立地」「保有コスト」の3つです。

固定資産税を毎年払い続ける負担と、手放すための費用(仲介手数料、解体費、負担金など)を比較し、「いつまで保有を続けるか」というゴールを決めることが何より大切です。

先送りすればするほど、相続人が世代を超えて増え、合意形成も難しくなります。動くなら、早いほど身軽です。

おわりに

当事務所では、相続後の不動産整理から登記、譲渡所得の試算、国庫帰属制度の活用判断まで、ご相談に応じています。

「ともに未来を描く」――この経営理念のもと、お客様にとって最も納得感のある出口戦略を一緒に考えてまいります。お気軽にお問い合わせください。

※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別具体的な税務判断を行うものではありません。実際のご判断に際しては、税理士等の専門家へご相談ください。また、税制は改正される場合があります。本記事は令和7年度時点の税制を参考にしています。

 

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この記事の監修

丸山会計事務所 税理士 代表 丸山和秀

税理士
丸山会計事務所代表 丸山 和秀(1986年生まれ)

税制支援20年以上、不動産税務、事業承継&M&A、法人資産税、設備投資時の優遇税制を得意とする。
「ともに未来を描く」を経営理念として、お客様と一緒に未来を描くことができる、提案型の“攻める税理士”として、経営ビジョンやニーズに寄り添い、適切なタイミングで、お客様のお悩みを解決するご提案を行う。

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