「自宅を売れば3,000万円控除が使える」と思っていませんか?——使えたはずの控除を失う3つの分かれ道
投稿日:2026年07月31日

おはようございます。
朝4時起きの名古屋の税理士丸山です。
自宅を売ったときの譲渡所得から最高3,000万円を控除できる特例(措法35条1項)は、個人の不動産税務でもっとも金額インパクトの大きい制度のひとつです。
税率20%なら手取りが600万円変わる計算になります。
ところが実務では、「要件は満たしているはずなのに使えなかった」「使ったら過去の減税分を返すことになった」というご相談が後を絶ちません。
原因の多くは、売却の“順番”と“名義”にあります。
今日は、この3,000万円控除をめぐって見落としがちな3つの分かれ道を整理します。
目次
1. 新居のローン控除と旧宅の3,000万円控除は“両取り”できない
2. 家屋を壊してから土地を売るなら「1年」と「空き地のまま」
3. 家屋は夫、土地は妻——名義が分かれていても諦めない
4. 売る前に決める、が唯一の対策
1. 新居のローン控除と旧宅の3,000万円控除は“両取り”できない
住み替えの場面です。
新居を建てて住宅ローン控除を受けている方が、後から旧宅を売って3,000万円控除を使う。
どちらも単独では要件を満たしているのに、これは併用できません。
新居に居住した年(居住年)の翌年以後3年以内に旧宅を譲渡し、その譲渡について3,000万円控除などの居住用財産の特例を受けると、居住年以後の各年分について住宅ローン控除が使えなくなります(措法41の3)。
恐ろしいのは、すでに受けた過去の控除まで遡って失われる点です。
旧宅を譲渡した年分の確定申告期限までに、過去各年分の修正申告書を提出し、控除額に相当する税額を納付しなければなりません。
たとえば令和4年に新居へ入居してローン控除を受け始め、令和7年に旧宅を売って3,000万円控除を選ぶと、令和4年から令和6年までの3年分を修正申告して返納することになります。
どちらが有利かは譲渡益の大きさとローン残高次第です。
売る前に、必ず両方を並べて試算してください。
2. 家屋を壊してから土地を売るなら「1年」と「空き地のまま」
3,000万円控除は「家屋を売ること」を核とした特例で、土地だけの譲渡には原則として使えません。
ところが実務では、買主から「更地にして引き渡してほしい」と求められて家屋を取り壊すことがよくあります。
この取引実情に配慮して、国税庁は措通35-2により、家屋を取り壊して敷地だけを譲渡した場合でも、次の要件をすべて満たすときは控除を認めています。
①土地等の譲渡契約が、家屋を取り壊した日から1年以内に締結され、かつ、居住の用に使用しなくなった日以後3年を経過する日の属する年の12月31日までに譲渡したものであること。
②家屋の取壊し後、譲渡契約の締結日まで、その土地等を貸付けその他の用に使用していないこと。
つまり、更地にしてから買主を探し始めて1年を過ぎればアウト。
空いた土地を月極やコインパーキングに貸せば、そこでもアウトです。
逆に、契約締結後から引渡しまでの期間については跡地の利用制限はなく、等価交換方式で譲受者が建物を建て始めても、他の要件を満たせば適用は認められます。
3. 家屋は夫、土地は妻——名義が分かれていても諦めない
土地は妻名義、その上の家屋は夫名義。
親から相続した土地に夫が家を建てた、といったケースです。
原則として、家屋の所有者と敷地の所有者が異なる場合、土地の譲渡に3,000万円控除は使えません。
ただし措通35-4は、次の3要件をすべて満たす土地等の所有者について、緩和措置として控除を認めています。
(1) その家屋とともに、その敷地の用に供されている土地等の譲渡があったこと。
(2) 家屋の所有者と土地等の所有者が親族関係を有し、かつ、生計を一にしていること。
(3) 土地等の所有者が、家屋の所有者とともにその家屋を居住用として使用していること。
控除額は、まず家屋の所有者の譲渡所得から控除し、控除しきれない金額を土地等の所有者から控除します。
二人合わせて3,000万円が上限であり、名義を分ければ6,000万円になるわけではありません。
なお、家屋を取り壊してから土地だけを譲渡した場合でも、2で述べた措通35-2の要件を満たせば、(1)の要件を満たすものとして適用が受けられると考えられています。
+αの視点:「家屋自体」が夫婦共有名義なら、最大6,000万円引ける!
前述のように「家屋は夫、土地は妻」と名義が完全に分かれている場合は2人合わせても3,000万円が上限です。
しかし、もし「家屋そのもの」が夫婦の共有名義になっており、2人ともそこに居住していて共に譲渡した場合は、話が全く変わります。
この場合、要件を満たせば夫と妻が「それぞれ」3,000万円控除を適用できるため、世帯全体で最大6,000万円まで譲渡益を非課税にすることができるのです。
売却前の名義の状況によって、控除枠が倍になる強力な特例です。
4. 売る前に決める、が唯一の対策
3つに共通するのは、売った後では取り返しがつかないという点です。
ローン控除との有利判定は売却前の試算でしか決着しませんし、取壊しの時期も、名義の状態も、契約を締結した瞬間に確定します。
さらに、3,000万円控除は売却の相手も選びます。
配偶者、直系血族、生計を一にする親族、同居親族、内縁関係者やその親族、特殊な関係のある同族法人などへの譲渡は、そもそも対象外です(措令23②、20の3①)。
身内に売れば話が早い、と考えた結果、控除がまるごと消えることもあります。
そして忘れがちですが、3,000万円控除は自動的には適用されません。
譲渡した日の属する年分の確定申告で、適用を受ける旨を記載して初めて成立します。
当事務所からのご案内
当事務所では、不動産の売却について「売ってから相談」ではなく「売る前の一手」からご一緒します。
譲渡益の試算、住宅ローン控除との有利判定、取壊しと契約のスケジュール設計まで、数字を並べてご自身で判断できる形にしてお渡しします。
私たちの経営理念は「ともに未来を描く」。
手元に残るお金が大きく変わる場面だからこそ、順番を決める前にお声がけください。
※本記事は、令和7年10月1日現在施行の法令・通達に基づく一般的な情報提供を目的としたものであり、個別具体的な税務判断を保証するものではありません。
実際の適用にあたっては、必ず税理士等の専門家にご相談ください。
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この記事の監修
税理士
丸山会計事務所代表 丸山 和秀(1986年生まれ)
税制支援20年以上、不動産税務、事業承継&M&A、法人資産税、設備投資時の優遇税制を得意とする。
「ともに未来を描く」を経営理念として、お客様と一緒に未来を描くことができる、提案型の“攻める税理士”として、経営ビジョンやニーズに寄り添い、適切なタイミングで、お客様のお悩みを解決するご提案を行う。


