建物だけ法人へ 借地権課税を防ぐ無償返還届出の実務

投稿日:2026年08月02日

建物だけ法人へ 借地権課税を防ぐ無償返還届出の実務

朝4時起きの税理士、丸山です。

本日は同族会社オーナーの不動産管理のなかでも、意外と見落とされがちな「建物所有方式」への移行と、そこで待ち構える借地権の認定課税についてお話しします。

 

「賃貸物件の管理会社を作れば、それだけで大きく節税できる」——そう考えて同族法人を設立するオーナーは少なくありません。
ですが、これは半分正解で半分誤解です。
単なる管理委託方式で法人に移せる所得は、家賃収入の5〜10%程度の管理料が上限
年間家賃3,000万円のアパートでも、法人に移せるのはせいぜい150〜300万円ほどにとどまります。

 

オーナー個人に大半の所得が残る構造は変わらず、「思ったほど税金が減らない」という声をよく耳にします。
本当に所得分散の効果が大きいのは、建物そのものを法人が所有する「建物所有方式」なのです。

管理委託・転貸・所有——3方式で「移せる所得」はこれだけ違う

同族法人を使った不動産管理には大きく3つの方式があります。

①管理委託方式(法人が管理業務を受託し管理料を得る)、

②転貸方式(法人が一括借上げし転貸する、いわゆるサブリース)、

建物所有方式(建物を法人が所有し家賃を丸ごと受け取る)です。

 

移せる所得の目安は、①が家賃の5〜10%、②が家賃の10〜15%、③はほぼ家賃全額

たとえば家賃3,000万円なら、①では最大300万円ですが、③なら家賃のほぼ全額が法人収入となり、役員報酬として配偶者や子へ分散できます。
個人の所得税は住民税と合わせ最高約55%、一方で中小法人の実効税率は約25〜34%。
この税率差そのものが節税の源泉です。
だからこそ「攻める」なら、建物所有方式まで踏み込む価値があります。

建物を法人に移すとき最大の落とし穴——借地権の認定課税

ところが、建物所有方式には大きな罠があります。
個人が持つ土地の上に法人が建物を建てたり買い取ったりすると、税務上「法人がタダで土地を使う権利(借地権)を手に入れた」とみなされ、借地権相当額に法人税が課される『認定課税』が起こり得ます。
都市部の借地権割合は60〜70%にのぼり、土地の相続税評価が1億円なら、6,000〜7,000万円がいきなり法人の受贈益として課税される——そんなケースすらあります。
「節税のつもりが数千万円の課税」では本末転倒。
ここを知らないまま建物の移転だけ先に進めてしまう例は、実は珍しくありません。

認定課税を防ぐ「土地の無償返還に関する届出書」

この認定課税を防ぐ王道が、「土地の無償返還に関する届出書」です。
将来、法人が土地を無償で地主に返すことをあらかじめ税務署へ届け出る書類で、地主(個人)と借地人(法人)の連名により、賃貸借開始後、法人の申告期限までに提出します。

 

これを出しておけば借地権の認定課税は生じません
あわせて、法人から個人へ地代を支払う設計が必要で、目安として固定資産税額の3倍程度を下回らない地代を設定すれば否認リスクを抑えられます。

 

さらに、無償返還届出書を提出した土地は相続時に自用地評価の80%で評価できるため、地代設定と組み合わせれば相続対策にも効いてきます。
ただし提出のタイミングを1日でも過ぎると認定課税が復活しかねません。
何を、どの順番で、いつまでに動かすか——期限管理が命です。

「ともに未来を描く」——移す前に設計するのが攻める税理士

建物所有方式は効果が大きい反面、借地権・地代・無償返還届出・役員報酬・消費税と、論点が複雑に絡み合います。

 

私たち丸山会計事務所は、記帳や申告を「作業」として片付けるのではなく、お金が大きく動く前の設計段階から関与する『攻める税理士』でありたいと考えています。
「建物を移してから相談に来られた」場合、すでに認定課税が確定し打てる手が限られることも少なくありません。
だからこそ、動く前に
経営理念「ともに未来を描く」の通り、オーナーの10年後の相続・承継まで見据えて、いま何をどの順番で進めるかを一緒に設計します。
「知らなかったことで損をした」を一つでも減らすのが、私たちの役割です。

まとめ

同族会社の不動産管理は、管理委託より建物所有方式のほうが所得分散の効果が大きい一方、借地権の認定課税という数千万円規模の落とし穴があります。
鍵は「土地の無償返還に関する届出書」を期限内に提出し、適正な地代を設定すること。
順番と期限さえ誤らなければ、節税と相続対策を同時に実現できます。
動く前の設計こそが、成果を分けます。

本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の税務相談については専門家にご確認ください。

 

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この記事の監修

丸山会計事務所 税理士 代表 丸山和秀

税理士
丸山会計事務所代表 丸山 和秀(1986年生まれ)

税制支援20年以上、不動産税務、事業承継&M&A、法人資産税、設備投資時の優遇税制を得意とする。
「ともに未来を描く」を経営理念として、お客様と一緒に未来を描くことができる、提案型の“攻める税理士”として、経営ビジョンやニーズに寄り添い、適切なタイミングで、お客様のお悩みを解決するご提案を行う。

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