法人で買った不動産、減価償却と売却の処理で手取りを減らしていませんか?――知っているだけで差がつく3つの視点
投稿日:2026年06月29日

おはようございます。
朝4時起きの名古屋の税理士丸山です。
法人で不動産を持つと、毎年の決算で「減価償却」「売却」「消費税」という3つの処理が必ず登場します。
ところが、この3つは“なんとなく顧問税理士にお任せ”という方が多く、実は知っているかどうかで手取りが数十万円から、場合によっては数百万円も変わる落とし穴が潜んでいます。
今日は、法人で不動産投資をされている方が取りこぼしやすい3つの視点
――減価償却の選び方、売却益の正体、そして売るタイミングと消費税――を、手取りを守る目線で整理します。
目次
1. 減価償却は「定率法を選べない資産」がある
2. 売却益は「売値」ではなく「簿価との差額」
3. 課税事業者の年に建物を売ると消費税で目減りする
4. 決算は「終わってから」では遅い
1. 減価償却は「定率法を選べない資産」がある
法人の減価償却は原則として定率法――早い時期に多く経費を落とせる――が使えます。
ところが、建物本体に加えて、電気・給排水・ガスといった「建物附属設備」(耐用年数の目安15年)や、アスファルト舗装などの「構築物」(同10年)は、定額法しか選べません。
定率法が使えるのは、エアコンや宅配ボックスなどの備品等に限られます。
「全部まとめて定率法で早く落とせる」と思い込んでいると、想定した初年度の経費が出ずに資金計画が狂うことがあります。
もうひとつ、少額の資産には金額帯ごとに3つの落とし方があります。
取得価額10万円未満なら全額をその年の経費にでき、固定資産税(償却資産税)の申告も不要です。
20万円未満なら「一括償却資産」として3年で均等に償却でき、月割計算も償却資産税の申告も不要。
30万円未満なら中小企業の特例で年間300万円まで即時償却できますが、こちらは償却資産税の申告が必要になります。
同じ備品でも、どのルートを選ぶかで初年度の経費と翌年以降の手間が変わります。
なお中古物件は簡便法で耐用年数が短くなり、減価償却を早められる余地があります。
2. 売却益は「売値」ではなく「簿価との差額」
「8,000万円で売れたから、8,000万円が利益」――これはよくある誤解です。
法人が不動産を売ったときの利益は、売却代金から「簿価」を差し引いた金額です。
土地は取得時に計上した金額を、建物は減価償却で減らした後の残額(簿価)を差し引きます。
たとえば簿価7,000万円のアパートを8,000万円で売れば、利益は差額の1,000万円。
この売却益は本業の「売上高」ではなく、損益計算書の「特別利益(特別損益)」に計上します。
ここで見落としやすいのが逆のパターンです。
建物は減価償却で簿価がどんどん下がっていくため、「買った金額より安く売れた」のに帳簿上は利益(譲渡益)が出ることがあります。
「売値が取得額を下回ったから損だ」と思い込むと、納税資金の手当てを誤りかねません。
売却を考え始めたら、まず今の簿価を確認するのが第一歩です。
3. 課税事業者の年に建物を売ると消費税で目減りする
不動産の売却のうち、土地は消費税が非課税ですが、建物部分は課税取引です。
免税事業者であれば建物分の消費税は納めなくてよいのですが、その年にたまたま「課税事業者」に該当していると話が変わります。
たとえば売買代金のうち建物部分を5,500万円とした場合、課税事業者であれば建物分の消費税500万円を納める必要があります。
免税事業者なら同じ売却でも納税は不要。
500万円の差はあまりに大きく、つまり「いつ売るか」で手取りが変わるのです。
売却の影響で2年後に課税事業者になる仕組みもあるため、売却のタイミングは慎重に見極めたいところです。
買う側にも落とし穴があります。
居住用の賃貸建物は、2020年の税制改正により、購入時に支払った消費税の還付(仕入税額控除)が原則として受けられなくなりました。
家賃収入が消費税の「非課税売上」にあたるためで、かつて金地金の売買を絡めて還付を受けるスキームがあったものを封じ込めた改正です。
買うときも売るときも、建物には消費税がついて回る――この前提を持っておくだけで、判断の精度が上がります。
居住用の賃貸建物は購入時の消費税の還付(仕入税額控除)が原則受けられなくなりましたが、実は「救済措置」があります。
購入した日から「第3年度の決算」が終わるまでにその建物を売却した場合、一定の計算式に基づき、売却した年の消費税の申告において「過去に受けられなかった仕入税額控除(消費税の還付)」を精算して受けることができるのです。
早期に物件を入れ替える(出口を迎える)場合は、この「3年ルール」を知っているだけで数百万円の税金が戻ってくる可能性があります。
4. 決算は「終わってから」では遅い
減価償却の方法も、売却のタイミングも、消費税の課税・免税の判定も、共通しているのは「動く前に設計してこそ効く」という点です。
決算が締まってから「あの設備、こうしておけば」「売る年を一年ずらしていれば」と気づいても、取り返せないことがほとんどです。
年内に大きな設備投資や物件の売却を考えているなら、決算月を迎える前に、一度シミュレーションをして数字の流れを確かめておくことを強くおすすめします。
おわりに
当事務所では、法人での不動産投資について、日々の経理や決算だけでなく、設備投資や売却の前段階から「この処理でいくらの手取りが残るか」を一緒にシミュレーションしてご相談をお受けしています。
決算が終わってからでは打てない手も、動く前なら設計できることがたくさんあります。
私たちの経営理念は「ともに未来を描く」。
お客様の数字の先にある将来像を一緒に見据えながら、最適な一手をご提案します。
法人での不動産の取得・売却をご検討の際は、ぜひお早めにお声がけください。
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の税務・法務上のアドバイスを構成するものではありません。実際の取扱いは取引の内容や個別事情、最新の法令・通達により異なる場合があります。具体的な判断にあたっては、必ず税理士等の専門家にご相談ください。
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この記事の監修
税理士
丸山会計事務所代表 丸山 和秀(1986年生まれ)
税制支援20年以上、不動産税務、事業承継&M&A、法人資産税、設備投資時の優遇税制を得意とする。
「ともに未来を描く」を経営理念として、お客様と一緒に未来を描くことができる、提案型の“攻める税理士”として、経営ビジョンやニーズに寄り添い、適切なタイミングで、お客様のお悩みを解決するご提案を行う。


