法人の大家さん、その経理で税金を払いすぎていませんか?——自分で帳簿をつける前に押さえたい3つの分かれ道

投稿日:2026年07月18日

法人の大家さん、その経理で税金を払いすぎていませんか?——自分で帳簿をつける前に押さえたい3つの分かれ道

おはようございます。

朝4時起きの名古屋の税理士丸山です。

 

法人を設立して不動産賃貸を始めると、「税理士に頼むほどの規模でもないし、経理くらいは自分で」と考える方は少なくありません。
実際、不動産賃貸業の帳簿はそれほど複雑ではありません。
ただ、“複雑ではない”ことと“間違えない”ことは別物です。
入居時に受け取るお金の区分、共済を使った節税、そして消費税——このあたりは、知らないまま処理すると税金を余計に納めたり、逆に思わぬ課税を見落としたりします。
今日は、自分で帳簿をつける前に押さえておきたい3つの分かれ道をお話しします。

目次

1. 入居時に受け取るお金——「売上」と「預り金」を取り違えない

2. 共済は“経費になって、あとで戻る”——ただし2024年の改正に注意

3. ずっと免税でも油断は禁物——「建物を売った年」に消費税が来る

4. 迷ったら“入口”だけでも設計しておく

1. 入居時に受け取るお金——「売上」と「預り金」を取り違えない

賃貸を始めると、家賃のほかに礼金・更新料・敷金といったお金が入ってきます。
ここで区分を誤ると、そのまま税額がずれます。
礼金と更新料は「返さないお金」ですから、受け取った時点で売上(益金)に計上します。
一方、敷金は退去時に返すお金なので、売上ではなく「預り敷金」という負債で受けます。
ここまでは素直なのですが、落とし穴が二つあります。
ひとつは敷引で、敷金のうち退去時に返さないと契約で決めた金額は、受け取った年の売上になります。

 

もうひとつは滞納です。
家賃が入っていなくても、いったんは未収入金として売上に立てるため、入金がないのに税金だけが先に発生します。
貸倒れとして経費にできるのは、最後の入金日から1年が経過してからです。
この時間差が、手元資金を思わぬかたちで圧迫します。
たとえば敷金2か月分のうち半分を返さない契約なら、その半分は入金した年の売上です。
ここを全額“預り金”で処理してしまうと、益金の計上漏れとして、あとで指摘される典型例になります。

αの視点:店舗や事務所の「敷引」には消費税がかかる

敷引(返還しない敷金)が売上になる際、もう一つ注意すべき罠があります。
それが居住用の部屋であれば消費税はかかりません(非課税売上)が、店舗や事務所、あるいは駐車場の敷引であれば、それは「消費税の課税売上」として扱われます。
これにより、免税事業者の判定ライン(課税売上1,000万円)をうっかり超えてしまったり、課税事業者の場合にはその敷引の金額から消費税を納めなければならず、想定より手残りが減ってしまったりするのです。
用途ごとの厳密な区分経理が、手残りを守る第一歩となります。

2. 共済は“経費になって、あとで戻る”——ただし2024年の改正に注意

利益が出てきたら検討したいのが共済です。
代表格が経営セーフティ共済(倒産防止共済)で、掛金は月5,000円から20万円まで、年240万円・累計800万円まで積め、その全額をその年の経費にできます。
40か月(3年4か月)以上納めれば解約時に満額戻るため、“経費になって、あとで戻る”お金です。

 

ただし戻した年は全額が利益になりますし、2024年の改正で、解約した日から2年間は新たな掛金を経費にできなくなりました。
「毎年解約してまた加入」という使い方は封じられたわけです。

 

もうひとつ、経営者個人には小規模企業共済があり、月1,000円から7万円までの掛金が全額所得控除になります。
法人の所得は800万円を境に税率が15%から23.2%へ跳ね上がり(この15%は特例で、2027年4月以降は19%に戻る予定です)、この壁を意識して掛金と解約のタイミングを設計すると、効果が大きくなります。
利益が800万円を超えそうな年に掛金で圧縮し、下回りそうな年に解約して戻す——この出口までをセットで考えるのが、共済を“ただの先送り”で終わらせないコツです。

番外編:利益が出たからと期末に「役員報酬」を増やすと大やけどをする

自分で帳簿をつけていると、決算の直前になって「今年は利益が800万円を超えそうだから、自分の役員報酬を増やして利益を圧縮しよう」と考える方が非常に多いです。
しかし、法人税法上、役員報酬の金額を変更できるのは原則として「事業年度開始から3か月以内」のみです(定期同額給与のルール)。
期末に慌てて報酬を増やしても、増やした分は法人の経費(損金)としては一切認められず、それなのに個人には所得税がかかるという最悪の「二重課税」を招きます。
利益のコントロールは、決算直前ではなく「期首」の設計から始まっているのです。

3. ずっと免税でも油断は禁物——「建物を売った年」に消費税が来る

不動産賃貸業の多くは、居住用家賃が消費税の非課税なので、ずっと免税事業者のまま——と思いがちです。
ところが油断できないのが「売った年」です。
建物部分は消費税の課税取引で、売却代金のうち建物が1,000万円を超えると、その2年後に課税事業者になることがあります。

 

さらに、課税事業者になった年に建物を売ると、建物代金にそのまま消費税がのしかかります。
免税のうちに売れば済んだはずの税金が、タイミングひとつで数百万円変わることもあるのです。

 

駐車場や店舗・事務所の賃料は課税売上になる点も見落としがちで、居住用と混在する物件では、課税売上割合が95%以上かどうかで、経費にかかる消費税の扱いまで変わってきます。
仮に契約書で建物代金を2,000万円と定めて課税事業者の年に売れば、その1割にあたる約200万円が消費税として乗ってきます。
免税の年であれば、この負担は生じません。
“いつ売るか”が、そのまま手取りを左右するのです。

αの視点:課税事業者を避けられない時の救世主「簡易課税の事前届出」

建物の売却などで、どうしても課税事業者になることを避けられない場合、絶対に忘れてはならないのが「消費税簡易課税制度選択届出書」の提出です。
これを「課税事業者になる事業年度が始まる前まで」に税務署へ提出しておけば、複雑な経費の集計をせずとも、売上にかかった消費税から一定割合(不動産賃貸業なら40%)を無条件で差し引いて納税額を大幅に圧縮できる可能性があります(※一定の要件あり)。
事前の「入口の届出」ひとつで、支払う消費税が数十万から数百万円変わる、まさに知っているかどうかの分かれ道です。

4. 迷ったら“入口”だけでも設計しておく

こうして並べてみると、どれも“処理のしかた”というより“入口の設計”の問題だとわかります。
設立時の資本金、共済に入るタイミング、物件を売る年——いずれも、後から直すのが難しく、最初のひと手で税額の大枠が決まってしまいます。
日々の記帳はご自身でされるとしても、この入口の設計だけは一度専門家と確認しておくと、あとの安心感がまるで違います。

おわりに——ともに未来を描く

当事務所では、自分で経理をされる大家さんの“最初の設計”から、決算・申告のチェックまで、規模に合わせたお付き合いの形をご提案しています。
私たちが大切にしているのは、経営理念「ともに未来を描く」——数字を通じて、あなたの資産形成の先にある未来を、一緒に描いていくことです。
気になる点があれば、どうぞお気軽にご相談ください。

※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の税務判断を保証するものではありません。実際の適用にあたっては、必ず最新の法令をご確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。

 

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この記事の監修

丸山会計事務所 税理士 代表 丸山和秀

税理士
丸山会計事務所代表 丸山 和秀(1986年生まれ)

税制支援20年以上、不動産税務、事業承継&M&A、法人資産税、設備投資時の優遇税制を得意とする。
「ともに未来を描く」を経営理念として、お客様と一緒に未来を描くことができる、提案型の“攻める税理士”として、経営ビジョンやニーズに寄り添い、適切なタイミングで、お客様のお悩みを解決するご提案を行う。

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