法人大家の節税3点セット、令和の改正で「使い方」が変わりました—経営セーフティ共済・小規模企業共済・電子帳簿の3視点

投稿日:2026年05月27日

法人大家の節税3点セット、令和の改正で「使い方」が変わりました—経営セーフティ共済・小規模企業共済・電子帳簿の3視点

おはようございます。

朝4時起きの名古屋の税理士丸山です。

「法人を作って大家業を始めた。とりあえずセーフティ共済と小規模企業共済で節税している」

――そんなオーナーは少なくありません。

 

ただ、令和の税制改正でこの「節税3点セット」のセオリーは静かに塗り替わりました。

同じ掛金でも、入り方・抜け方・帳簿の残し方を間違えれば、節税どころか損金不算入で追徴という落とし穴が口を開けています。

今日は法人化した大家さんが「知らないと損する」3つの視点で整理します。

目次

1. 経営セーフティ共済——「解約後2年ルール」と法人税率の壁

2. 小規模企業共済——20年拘束の利回りを冷静に見る

3. 電子帳簿保存法——お金をかけずに「事務処理規程」で守る

4. まとめ——3点セットを「組み合わせる」発想で

1. 経営セーフティ共済——「解約後2年ルール」と法人税率の壁

中小企業の倒産防止共済(経営セーフティ共済)は、月額5,000円から20万円までを掛けられ、年間最大240万円・累計800万円までの掛金が支払時に損金算入できる制度です。

3年4ヶ月以上の継続で掛金は満額返戻され、いざというときは無担保で借入もできるため、長く「中小オーナーの定番節税策」と呼ばれてきました。

 

ところが令和6年度税制改正で、解約日から2年間に支払った掛金は損金に算入できないという新ルールが入りました。

「利益が出た年に加入→出ない年に解約→翌年また加入」という回転技は事実上封じられたのです。

 

ここで効いてくるのが法人税率の壁です。

中小法人の所得は800万円までが15%、超える部分は23.2%(800万円以下の15%軽減税率は令和9年3月末までの特例であり、延長されなければ本則の19%に戻る可能性があります。

利益が800万円を超えそうな年に掛金で利益を圧縮し、修繕や売却損で利益が薄くなる年に解約する

――この「税率の段差を使った繰延べ」は今も有効です。

 

逆に「とりあえず毎年解約」のローテーションは2年間の損金不算入で逆効果になります。

出口を設計してから掛けるのが新常識です。

2. 小規模企業共済——20年拘束の利回りを冷静に見る

資産管理法人の役員になれば、月1,000円から70,000円の範囲で小規模企業共済に加入できます。

掛金は全額が個人の所得控除になり、所得金額800万円で月7万円拠出のケースで年28万円、20年で562万円の節税効果が生まれます。

さらに解約時の共済金は退職所得扱い(控除額40万円×加入年数)で課税されるため、出口の税負担も軽くなります。一見、不動産オーナーの王道です。

 

ただ、冷静に計算すると平均利回りはおよそ年3.35%。

世界株のインデックス投信が長期で5〜7%を狙える時代背景を踏まえると、決して高い水準ではありません。

最大の弱点は20年未満で減額・解約すると元本割れの可能性があること。

掛金を一度減らすと、減額分は加入期間にカウントされず、後で戻しても加入年数のカウントは戻りません。

 

不動産投資家には、次の物件購入で頭金が必要になる場面が必ず来ます。

手元流動性を犠牲にして最大額を入れるべきか

――「節税額」だけでなく「資金拘束のコスト」と「ほかの投資機会」を並べて判断したい論点です。

3. 電子帳簿保存法——お金をかけずに「事務処理規程」で守る

令和6年1月1日以降、電子で受け取った請求書や領収書はすべて電子データのまま保存することが原則として義務付けられました。

メール添付のPDF請求書、WEB明細の領収書、クラウド契約書など、紙に印刷して保管するだけでは要件を満たしません。

 

要件は「真実性の確保」と「可視性の確保」の2つ。

中小規模の資産管理法人の場合、高額な専用システムを導入しなくても、国税庁が公開している「電子取引データの訂正及び削除の防止に関する事務処理規程」のひな形をダウンロードし、自社運用に合わせて整えるだけで真実性の要件を満たせます。

可視性は、日付・取引先・金額で検索できるようファイル名のルールを決めればクリアできます。

 

税務調査では、まずこの規程の有無と運用実態が確認されます。

「未整備=即座に青色取消し」と直結するわけではありませんが、隠蔽・仮装と判断されれば、通常の重加算税が課されるだけでなく、電子取引データに関する不正の場合はさらに重加算税が10%加重される(ペナルティが重くなる)という厳しい特則があります。

コストではなく、ガバナンスの一線として整備すべきポイントです。

4. まとめ——3点セットを「組み合わせる」発想で

セーフティ共済・小規模企業共済・電子帳簿保存法は、それぞれ単独では「節税」「退職金」「コンプラ」と別物に見えます。

しかし法人大家の実務では、利益のコントロール、個人の手取り設計、調査リスクの抑制がワンセットで効きます。

改正後はいずれも「掛けて終わり」「導入して終わり」ではなく、出口とルールの設計が成否を分けます。

 

当事務所では、不動産オーナー法人の決算3ヶ月前に節税3点セットの棚卸しを行い、税率の段差・流動性・規程整備の3点を一枚のシートで可視化しています。

私たちの経営理念は「ともに未来を描く」。改正の波に振り回されず、オーナーの長期戦略から逆算した節税設計を、毎期ご一緒に磨いていきましょう。

【免責事項】

本記事は令和8年5月時点の法令・通達に基づく一般的な情報提供を目的としており、個別の税務判断を保証するものではありません。実際の申告・経理処理については、具体的な事実関係に基づき税理士等の専門家へご相談ください。

 

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この記事の監修

丸山会計事務所 税理士 代表 丸山和秀

税理士
丸山会計事務所代表 丸山 和秀(1986年生まれ)

税制支援20年以上、不動産税務、事業承継&M&A、法人資産税、設備投資時の優遇税制を得意とする。
「ともに未来を描く」を経営理念として、お客様と一緒に未来を描くことができる、提案型の“攻める税理士”として、経営ビジョンやニーズに寄り添い、適切なタイミングで、お客様のお悩みを解決するご提案を行う。

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