改正で変わったマンション相続税評価 オーナーの対策

投稿日:2026年07月12日

改正で変わったマンション相続税評価 オーナーの対策

朝4時起きの税理士、丸山です。
本日は相続税・贈与税の改正の中でも、不動産オーナーに最も直結する「マンション(区分所有マンション)の相続税評価の新ルール」についてお話しします。

 

「タワーマンションを一室買っておけば、相続税はぐっと下がる」――そう思い込んでいる方は、ぜひ最後まで読んでください。
2024年1月1日以降の相続・贈与から評価ルールが大きく変わり、これまでの“タワマン節税”の常識は、もはやそのままでは通用しなくなりました。
知らずに従来の感覚で対策を続けると、思わぬ追徴課税につながりかねません。

なぜ評価ルールが変わったのか

従来、マンションの相続税評価額は「建物=固定資産税評価額」「土地=路線価×敷地持分」で計算されてきました。
ところがタワーマンションは戸数が多く一戸あたりの土地持分が極端に小さいため、評価額が実際の市場価格の3〜4割程度にとどまるケースが珍しくありませんでした。
1億円で買った部屋が相続税評価では3,000万円台、という具合です。

 

この“評価額と時価の乖離”を利用した節税が広がった結果、令和4年4月の最高裁判決では、約14億円で取得した物件を約3.3億円と評価した申告が「評価通達6項(総則6項)」によって否認され、国税の鑑定額約12.7億円での課税が認められました。
行き過ぎた評価差は、いつ否認されてもおかしくない時代に入ったのです。

 

国は、こうした評価の偏りを是正するため、有識者会議を経て新たな評価方法を整備しました。
狙いは「行き過ぎた節税の封じ込め」と「課税の公平」の両立です。
総則6項による否認は税務署側の個別判断ですが、新ルールは計算式として明文化された点が決定的に異なります。
つまり、もはや一部の高額物件だけの問題ではなく、一般的な分譲マンションを一室持つオーナーまで広く影響が及ぶことになりました。

新ルールの中身と評価への影響

2024年からの新ルールでは、区分所有マンションについて「築年数」「総階数」「所在階」「敷地持分の狭小度」の4要素から評価乖離率を算出し、評価水準が市場価格の約60%に届くよう補正します。
具体的には、従来評価が時価の60%を下回る部屋は、60%の水準まで評価額が引き上げられる仕組みです。

 

たとえば時価1億円・従来評価3,500万円(評価水準35%)だった高層階の部屋は、新ルールで評価額が約6,000万円(60%)まで上昇します。
差額2,500万円に相続税率が乗るため、税率30%なら約750万円もの負担増です。
高層・築浅・大規模なマンションほど影響が大きく、まずはお持ちの物件がどの程度補正されるかを試算することが第一歩になります。

 

+αの視点|増税の網をすり抜ける「対象外物件」 

居住用の区分所有マンションを狙い撃ちにした新ルールですが、すべてのマンションが対象になるわけではありません。
区分所有登記のない「一棟所有の賃貸アパート・マンション」や事業用の「テナント物件」は対象外です。
さらに分譲でも「地階を除く総階数が2階以下の低層マンション」や「総戸数3戸以下で親族が住む二世帯住宅等」は、市場性や価格形成要因の違いから適用除外となり、従来の低い評価方法のまま計算できます。
今後の物件選びでは、この対象外条件を知っているかどうかが大きな差を生みます。

+αの視点|逆に評価額が「下がる」マンションもある 

評価の引き上げ(増税)ばかりが注目されますが、この新ルールで相続税評価額が「下がる」ケースもあります。
地方の築古マンションなどで、もともと市場価格より相続税評価額の方が高い(評価水準が100%超)という逆転現象が起きている物件です。
新ルールでは、こうした評価が高すぎる物件は市場価格と同等レベルまで引き下げられる仕組みが盛り込まれています。
ご自身の物件が上がるのか下がるのか、まずは正確な現状分析が欠かせません。

それでも残る“攻めの”節税余地

評価は厳しくなりましたが、対策の余地が消えたわけではありません。

 
第一に、補正後でも評価額は依然として時価の約6割であり、現金で持つより相続税評価上は有利です。
第二に、賃貸に出せば「貸家建付地・貸家」の評価減や小規模宅地等の特例(貸付事業用なら200㎡まで50%減)を重ねられます。
第三に、2024年から使い勝手の良くなった相続時精算課税の年110万円控除や暦年贈与と組み合わせ、評価が確定したうえで計画的に持分を移転していく方法も有効です。
一棟物件や賃貸併用への組替えという選択肢も含め、物件特性に応じた設計が勝負どころです。

 

注意したいのは、評価が上がったからといって慌てて売却すると、今度は譲渡所得税(短期なら約39%、長期でも約20%)が重くのしかかる点です。
相続対策と売却の税負担は表裏一体であり、片方だけを見て動くと逆に損をします。
保有を続けるなら賃貸化と特例で評価を抑え、手放すなら譲渡時期と取得費を精査する。
出口まで見据えた“一気通貫”の設計こそが、改正後に差を生むポイントです。

 

番外編|計算どおりでも「相続直後の売却」は否認リスクあり 

新しい計算式ができたことで「ルール通りに申告すれば否認されない」と安心するのは危険です。
令和4年の最高裁判決でも重視された「相続直前の過度な借入れによる購入」や「相続直後の短期売却」といった、あからさまな租税回避目的の行動には、引き続き税務署の伝家の宝刀『総則6項』が発動されるリスクが残ります。
評価額の計算だけでなく、借入れのバランスや保有期間を含めた実質的な妥当性を持たせることが、真の資産防衛の絶対条件です。

丸山会計事務所の視点――ともに未来を描く

私たちが大切にしているのは、ルール変更を“ピンチ”で終わらせず、次の一手の“きっかけ”に変えることです。
評価が上がった今こそ、保有・売却・組替え・贈与のどれが最適かを数字で比較し、納税資金まで含めて設計する。
これが「攻める税理士」としての提案です。
経営理念「ともに未来を描く」のもと、目先の節税だけでなく、ご家族へ円満に資産を引き継ぐ全体最適をご一緒に考えます。
まずは現状評価の試算からお手伝いします。

まとめ

2024年からマンションの相続税評価は時価の約6割へ補正され、従来のタワマン節税は通用しにくくなりました。
とはいえ賃貸活用や特例、計画的な生前移転を組み合わせれば、なお有効な対策は描けます。
大切なのは、改正後の評価を正しく把握し、早めに次の一手を打つこと。
お持ちの物件への影響が気になる方は、ぜひ一度ご相談ください。

本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の税務相談については専門家にご確認ください。

 

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この記事の監修

丸山会計事務所 税理士 代表 丸山和秀

税理士
丸山会計事務所代表 丸山 和秀(1986年生まれ)

税制支援20年以上、不動産税務、事業承継&M&A、法人資産税、設備投資時の優遇税制を得意とする。
「ともに未来を描く」を経営理念として、お客様と一緒に未来を描くことができる、提案型の“攻める税理士”として、経営ビジョンやニーズに寄り添い、適切なタイミングで、お客様のお悩みを解決するご提案を行う。

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