事業承継税制の適用要件の緩和について教えてください。
投稿日:2024年12月06日
事業承継税制は、後継者が会社を引き継ぐ際の相続税や贈与税の負担を軽減するために設けられた制度ですが、当初は厳しい適用要件が課されていました。そのため、特に中小企業にとっては利用しづらい制度でもありました。しかし、事業承継をより円滑に進めるため、近年では要件が大幅に緩和されています。特に、雇用要件や後継者の経営支援体制に関する要件が緩和され、多くの企業が利用しやすくなっています。
1. 雇用継続要件の緩和
事業承継税制が創設された当初、後継者が事業を承継する際には、会社の従業員のうち8割以上を5年間継続して雇用するという厳しい「雇用継続要件」が課されていました。この要件が適用されていたため、事業環境の変化や経営の改善に伴って人員整理が必要な場合でも、税制を適用するために従業員の数を維持しなければならず、事業承継の負担となることがありました。
しかし、この雇用要件は平成30年(2018年)に大幅に緩和され、現在では「認定支援機関」の支援を受けた計画的な事業承継を行う場合に雇用要件の達成が必須ではなくなる措置が設けられています。具体的には、次の条件を満たせば、雇用継続要件が緩和されます。
認定支援機関(税理士や公認会計士など)のサポートを受けていること
認定支援機関の署名・捺印のある「事業承継計画書」を提出することで、雇用要件を満たしていない場合でも税制の適用を受けることが可能です。これにより、経営状況や従業員の雇用を維持できない場合でも、計画的な事業承継が進められるようになっています。
状況に応じた柔軟な対応
経営の合理化やリストラが必要な場合でも、支援機関の協力を得て適切な事業承継計画を立てることで、雇用維持の要件を達成できなくても柔軟に税制の適用を受けられます。これにより、従業員の雇用維持が困難な経営状況でも、税負担を軽減しながら事業承継を進められます。
2. 後継者要件の緩和
事業承継税制では、後継者の選定も重要なポイントです。当初は、後継者1名が承継した株式や事業を引き継ぎ、5年間その事業を継続することが厳密に求められていました。
しかし、経営状況や後継者の事情によっては、特例措置では最大3名まで事業承継者を選ぶことができます。
3. 事業承継計画の提出期限と支援体制
適用要件の緩和に伴い、事業承継税制を活用するための手続きも、従来より簡略化されています。例えば、特例承継計画を令和8年(2026年)3月31日までに提出し、認定を受ければ、事業承継税制の適用を受けることができます。また、税理士や公認会計士、商工会などの認定支援機関が承継計画をサポートすることで、より円滑に手続きを進めることが可能です。
このようなサポートを受けることで、企業は経営の実態に応じた承継計画を策定し、無理なく税制を活用することができます。特に中小企業にとって、計画的な事業承継とそれに伴う税制の適用は、事業の継続にとって非常に重要な要素となります。
4. その他の適用要件の緩和ポイント
株式の譲渡制限: 後継者が承継した株式を譲渡する場合、厳しい制限が課されていましたが、経営の実態に応じて譲渡条件が一部緩和されています。これにより、事業承継後から5年を経過したあとに株式の一部を売却が必要な場合でも、柔軟に対応できるようになりました。
経営者の退任要件: 以前は、贈与者(先代経営者)が完全に経営から退く必要がありましたが、事業承継後も一定期間、経営に携わることが認められるケースも増えました。これにより、スムーズな経営権移行が可能となっています。
5. 今後の動向
事業承継税制は、中小企業の事業承継を支援するために、今後もさらに柔軟な運用が期待されています。特に、コロナ禍や経済環境の変化に伴い、事業承継が難航している企業が増えている現状を踏まえ、さらに要件が緩和される可能性もあります。今後も法改正や制度の改定が続くため、常に最新の情報を確認することが重要です。
まとめ
事業承継税制の適用要件は、制度創設当初に比べて大幅に緩和されており、特に雇用継続要件や後継者要件において、認定支援機関の協力があればより柔軟な適用が可能となっています。この緩和により、従業員の雇用維持が難しい場合や、事業の継続に課題がある場合でも、事業承継税制を活用しやすくなっています。事業承継を考える際には、税理士や認定支援機関と協力し、最適な承継計画を立てることが成功の鍵となります。
この記事の監修

税理士
丸山会計事務所代表 丸山 和秀(1986年生まれ)
税制支援20年以上、不動産税務、事業承継&M&A、法人資産税、設備投資時の優遇税制を得意とする。
「ともに未来を描く」を経営理念として、お客様と一緒に未来を描くことができる、提案型の“攻める税理士”として、経営ビジョンやニーズに寄り添い、適切なタイミングで、お客様のお悩みを解決するご提案を行う。