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信託を活用した生前贈与による節税とは?

投稿日:2024年03月11日

「信託を活用したら相続税の節税になると不動産会社から聞きました」お客様からこんな声をいただきました。

信託とは、自分の財産を管理・運用してもらう仕組みのことです。

今回はこの信託を活用した相続税対策についてご紹介します。

大きな節税効果が期待できる手法ですが、注意点もありますので、ぜひ最後までお読みください。

 

1そもそも信託とは?

信託とは委託者の財産を信頼できる受託者に管理や運用、処分してもらう仕組みのことです。

財産の管理や運用、処分から生じる利益を受益権といい、委託者に指定された受益者が受け取ります。

 

たとえば、親(委託者)の財産を子供(受託者)が管理・運用、処分し、利益は親(受益者)が受け取るというようにつかわれます。

これによって、親が認知症になったり、高齢で管理や運用、処分がむずかしくなったりしても、子供が親に代わって適切に処理できるメリットがあります。

では、この信託を活用した相続税対策とはどういった手法でしょうか。

2信託を利用した贈与の手法

信託契約で受益権を「元本受益権」と「収益受益権」に分け、「元本受益権」を生前贈与する手法です。
元本受益権とは信託期間終了時に信託財産そのものを受け取る権利を言います。

一方、収益受益権とは信託期間中に信託財産から生じる利益を受け取る権利です。

たとえば、信託財産が土地だとすると、土地そのものを受け取る権利は元本受益権、土地の地代収入を受け取る権利が収益受益権です。
具体的には、親のもっている土地などの不動産を信託財産として、収益受益権を父が、元本受益権を子供が受け取る信託契約を設定します。

この信託契約によって、信託期間中は父が地代収入を受け取り、信託期間終了時に子供が信託財産を受け取れます。

では、元本受益権を生前贈与すると、なぜ節税になるのでしょうか。

3元本受益権の評価額は?

財産評価基本通達202で、受益権の評価は次のように定められています。

元本の受益者と収益の受益者とが異なる場合においては、次に掲げる価額によって評価する。

イ 元本を受益する場合は、この通達に定めるところにより評価した課税時期における信託財産の価額から、ロにより評価した収益受益者に帰属する信託の利益を受ける権利の価額を控除した価額

ロ 収益を受益する場合は、課税時期の現況において推算した受益者が将来受けるべき利益の価額ごとに課税時期からそれぞれの受益の時期までの期間に応ずる基準年利率による複利現価率を乗じて計算した金額の合計額

簡単にいうと、収益受益権の評価額は「将来にわたって受け取る収益の合計額」、元本受益権の評価は「信託財産の評価額-収益受益権の評価額」です。
たとえば、信託財産3,000万円の土地、信託期間20年、収益率5%だとします。そうすると毎年150万円の地代を受けるとことができます。

将来にわたって受け取る収益の合計額は、3,000万円×5%×20年=3,000万円です。
ただし、収益受益権の評価額は将来の収益額を現在価値に割り引いて計算しなければいけません。

現在の3,000万円は利息がつき、将来は3,000万円以上の価値になるためです。
このため、将来の3,000万円は今どのくらいの価値があるのか、現在価値に割り引いて収益受益権の評価を行います。

収益受益権の評価額は3,000万円×5%×18.231(20年の複利現価率の合計※令和5年2月参考)=約27,346,500円です。
元本受益権の評価額は3,000万円-27,346,500円=2,653,500万円となります。

割引現在価値の計算につかう基準年利率、複利年金現価率は国税庁サイトをご参照ください。

4受益権を分けると節税になるのか?

税金が発生するタイミングは信託設定時と相続発生時の2回です。
設例をつかってご説明します。

【設例】

・委託者・収益受益者:父

・受託者・元本受益者:子供

・信託財産:3,000万円の土地

・信託期間:20年

・収益率(年):5%

信託開始時の税金

収益受益者(父):もともと父本人が持っている土地なので、信託の設定をしても税金はかかりません。

元本受益者(子供):贈与税がかかります。ただし、上記で説明したとおり元本受益権の評価は110万円と大幅に低くなっているため、土地をそのまま贈与したときに比べて贈与税額も低くなる見通しです。

相続発生時の税金

信託期間終了後に相続が発生したときは、すでに土地が元本受益者である子供の財産となっているため相続税はかかりません。

信託期間中に相続が発生したときは、父の持っている収益受益権を相続財産として子供に相続税がかかります。

たとえば、信託開始後15年を経過した時点で相続が発生したとします。
残り5年の信託期間がありますので、収益受益権の評価は5年分です。
3,000万円×5%×4.988(複利現価率)=約748万円が相続税の対象となります。

3,000万円だった土地が、信託の活用で約1,011万円(贈与時:約263+相続時:約748万円)まで評価が下がりました。

このように、受益権の生前贈与による節税効果は絶大です。
とはいえ、これだけ節税効果の高い手法ですので注意点も確認しておきましょう。

5注意点

注意点は主に2つです。

収益受益権の評価は難しい

収益受益権の評価額は「将来にわたって受け取る収益の合計額」です。
土地や賃貸マンションなどを持っていても、空き部屋が出たり、賃貸料が変わったりと将来の収益額を見積もることは容易ではありません。

このため定期借地権契約のような地代が固定されているもの、沖縄県の米軍基地用地のように将来の収益見込みが立てやすい財産でなければ、評価の妥当性に疑問が残ります。

相続発生時に法解釈が変わっていることがある

相続税は相続が発生したときの法律・法解釈に従います。

このため、相続対策をおこなったときと相続が発生したときで法律が変わっていて、相続対策にならない可能性があります。

6まとめ

受益権を元本受益権と収益受益権に分け生前贈与すると、大きな節税メリットがあることが分かりました。

一方、適用できるケースが限られていることや法解釈が変わる可能性があるため注意も必要です。
不動産の相続対策など、税務や会計でお困りの際は、丸山会計事務所までお気軽にご相談ください。

丸山会計事務所では法人向けのコンサルティング、個人向けの不動産コンサルティングを始めとして、確定申告だけではなくお客様に寄り添った提案型のサービス提供を得意としています。仕事内容に興味のある方は、ホームページの採用情報をぜひご覧ください。

この記事の監修

丸山会計事務所 税理士 代表 丸山和秀

税理士
丸山会計事務所代表 丸山 和秀

税制支援20年以上、不動産税務、事業承継&M&A、法人資産税、設備投資時の優遇税制を得意とする。
「ともに未来を描く」を経営理念として、お客様と一緒に未来を描くことができる、提案型の“攻める税理士”として、経営ビジョンやニーズに寄り添い、適切なタイミングで、お客様のお悩みを解決するご提案を行う。

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