カーボンニュートラル促進税制

カーボンニュートラル促進税制とは?

2020年10月に、政府は2050年までにカーボンニュートラル(温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させることで、実質的に温室効果ガスの排出量をゼロにする)を目指すことを宣言しました。このカーボンニュートラルを実現するためには、民間企業による脱炭素化に向けた投資が不可欠です。そこで、企業の脱炭素化を推し進めるために、令和3年度の税制改正において、カーボンニュートラルに向けた投資促進税制(以下、カーボンニュートラル促進税制)が創設されました。

カーボンニュートラル促進税制では、一定の要件を満たした設備を導入した際に、税額控除または特別償却を受けることができます。
そこで、本稿ではカーボンニュートラル促進税制の税制措置の内容、適用となる設備、申請までのスケジュール等について解説します。

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カーボンニュートラル促進税制で受けられる税制措置

カーボンニュートラル促進税制では、産業競争力強化法の事業適応計画の認定に基づき、以下の設備を導入した際に、税額控除または特別償却のどちらかを選択適用することができます。

1 大きな脱炭素化効果を持つ製品の生産設備導入

税額控除 投資額の10%の控除
特別償却 通常の減価償却費とは別に50%までを追加計上

2 生産工程等の脱炭素化と付加価値向上を両立する設備導入

2-1 炭素生産性が3年以内に10%以上向上する場合

税額控除 投資額の10%の控除
特別償却 通常の減価償却費とは別に50%までを追加計上

2-2 炭素生産性が3年以内に7%以上向上する場合

税額控除 投資額の5%の控除
特別償却 通常の減価償却費とは別に50%までを追加計上

措置対象となる投資額は500億円までとなります。また、控除税額は、同じく産業競争力強化法に基づく税制措置であるDX投資促進税制と合算して法人税額の20%と定められています。

カーボンニュートラル促進税制の適用対象となる設備

大きな脱炭素化効果を持つ製品の生産設備導入

大きな脱炭素効果を持つ製品の生産設備とは、「エネルギーの利用による環境への負荷の低減効果が大きく、新たな需要の拡大に寄与することが見込まれる製品の生産に専ら使用される設備」となっており、機械装置が対象設備となります。
大きな脱炭素効果を持つ製品として、以下の5つの製品が定められています

① 化合物パワー半導体
※電力の制御若しくは電気信号の整流を行う化合物半導体素子又は当該素子の製造に用いられる化合物半導体基板が対象

② EVまたはPHEV向けリチウムイオン蓄電池
※電気自動車又はプラグインハイブリッド自動車を構成するリチウムイオン蓄電池が対象

③ 定置用リチウムイオン蓄電池
※7,300回の充放電後に定格容量の60%以上の放電容量を有するものに限る

④ 燃料電池
※定格運転時における低位発熱量基準の発電効率が50%以上であるものもしくは総合エネルギー効率が97%以上であるもの又は水素のみを燃料とするものに限る

⑤ 養生風力発電設備の主要専門部品
※洋上風力発電設備(一基あたりの定格出力が9MW以上であるものに限る。)を構成する商品のうち、次に掲げる部品が対象:ナセル、発電機、増速機、軸受、タワー、基礎

生産工程等の脱炭素化と付加価値向上を両立する設備導入

まず、事業適応計画において、設備投資による効果以外も含めて、炭素生産性を3年以内に7%以上向上させる計画を作成し、認定を受けることが必要となります。
この認定された計画に記載された設備のうち、導入によって事業所の炭素生産性を1%以上向上させる機械装置、器具備品、建物付属設備、構造物が対象となります。
これらの設備を導入することにより、計画に定められた炭素生産性の向上の実現を目指します。

炭素生産性の考え方は、付加価値額(営業利益+人件費+減価償却費)/ エネルギー起源二酸化炭素排出量で計算され、設備の対象となる具体的な事例は以下の通りです。

(設備導入前)
付加価値額:50,000千円
CO2排出量:500t / CO2
炭素生産性:50,000千円÷500t / CO2 = 100

(設備導入後)
900千円の機械装置の導入により、CO2排出量が8t /CO2改善される場合
付加価値額:50,900千円
CO2排出量:492t / CO2
炭素生産性:50,900千円÷492t / CO2 ≒ 103.5
従って、炭素生産性が3.5%向上され、1%以上向上されることから、この機械装置の導入は税制対象となります。

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カーボンニュートラル促進税制の適用事業者

カーボンニュートラル促進税制の適用には、青色申告書を提出し、かつ、産業競争力強化法に基づく事業適応計画を作成・提出し、認定されることが必要となります。業種や資本金の規模による制限はありません。

カーボンニュートラル促進税制の適用に必要な事業適応計画

カーボンニュートラル促進税制の適用要件として、産業競争力強化法に基づく事業適応計画の認定が求められています。

産業競争力強化法では、日本の成長戦略として事業再構築・DX・カーボンニュートラルの実現に向けた取り組みが「事業適応」として定められており、カーボンニュートラル促進税制は、産業競争力強化法の中で定義されている「エネルギー利用環境負荷低減事業適応」という取り組みに即した税制措置となっています。

そのため、カーボンニュートラル促進税制の適用を受けたい事業者は「エネルギー利用環境負荷低減事業適応」に基づいた事業適応計画を作成することが求められ、事業を所管する大臣の認定を受ける必要があります。

申請事業者
事業適応計画の認定要件
生産性の向上 炭素生産性を7%以上向上させること
新需要の開拓 需要開拓商品について十分な販路を開拓すること
財務の健全性 経常収入>経常支出の達成が見込まれること
取組内容 環境への負荷の低減に資する取組を行うことにより、生産性の向上又は需要の開拓を図ること
全社的な取り組み 取締役会等の経営方針に係る決議・決定
に基づくものであること

カーボンニュートラル促進税制の税制優遇を受けるまでのフロー

カーボンニュートラル促進税制の税制対象投資の実施を行うまでには、事業適応計画の認定が必要となりますので、計画的にスケジュールを組んでおく必要があります。
具体的なスケジュールイメージは以下の通りです。

1.事前相談

事業を所管している省庁に対して、事業適用計画の要件に合致しているかどうかの事前相談を行います。事前相談の開始から正式な申請(審査開始)までは概ね1~2か月かかります。

2.計画の申請(審査開始)

事前相談で所管省庁による確認が取れたのち、所定の申請書と添付書類を提出することで正式な申請を行い、所管省庁による審査が開始されます。所管省庁による審査は概ね1か月程度かかります。

3.計画の認定・税制対象投資の実施

事業適応計画に定められている投資設備が税制対象設備であるかどうかを含めて審査上で確認がなされ、事業適応計画の認定を受けます。認定を受けたのち、カーボンニュートラル促進税制の適用期間内(2024年3月末まで)に設備を取得します。

4.税務申告

対象設備を取得した年度の確定申告にて、認定計画と認定書の写しを添付の上、特例措置の申請を行います。

まとめ

カーボンニュートラル促進税制の税制優遇内容や対象となる設備、申請手続きについてご説明しました。カーボンニュートラル促進税制の優遇措置を受けるためには、炭素生産性の向上計画や事業適用計画の作成等煩雑な手続きが発生します。税制の適用方法についての詳細の内容を知りたい方は、お気軽にご相談ください。


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