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居住用財産の特別控除は共有者1人ごとに3,000万円が控除可能

投稿日:2023年12月06日

マイホームを譲渡して利益(所得)が出た場合、所得税の課税対象になります。しかし、一定の要件を満たした場合には3,000万円の特別控除が適用でき、課税所得から差し引くことが可能です。適用できれば大きな節税となるでしょう。

ただし居住用財産の特別控除の適用は建物の所有者だけであり、土地だけでは受けられません。また、例えば建物を夫婦で共有している場合は、二人合わせて3,000万円ではなく、夫婦それぞれ最高3,000万円の控除が受けられます。このブログでは、居住用財産の特別控除の概要、および夫婦で控除を多く活用する方法を紹介します。

 

1.居住用財産を譲渡した場合の3,000万円特別控除の概要

居住用財産の特別控除の概要と、適用要件、注意点を紹介します。

概要および適用要件

居住用財産(マイホーム)を売却した場合に利益(所得)が出たら、譲渡所得として所得税の課税対象になります。課税所得の計算は、以下のとおりです。

課税所得=売却価格-(取得費+譲渡費用)-特別控除の金額

一定の要件を満たす場合には3,000万円の特別控除を受けることができます。

主な要件は以下のとおりです。

 

  • 原則として居住している建物、建物および土地等を売却すること。以前に住んでいた場合は、退去してから3年後の年の12月31日までに売却すること。
  • 売却した年の前年および前々年に、同じ特例、マイホームの譲渡損失についての損益通算・繰越控除の特例を受けていないこと
  • マイホームの買換えなど、他の特例の適用を受けていないこと
  • 売り手と買い手が親子や夫婦などでないこと

 

要件を満たせば、所有期間の長短に関係せずに適用できます。

詳しい要件は国税庁タックスアンサーNo.3302も参照してみてください。

 

注意点

主な注意点は以下のとおりです。

  • 土地だけの譲渡では適用できない
  • 一時的な目的で入居した場合は適用できない
  • 特例目的のみで入居したと判断される場合は適用できない
  • 適用するには確定申告が必要
  • 買い換えの場合、タイミングによっては新住居で住宅ローン控除が適用できない

 

2.建物を共有している場合は共有者1人ごとに3,000万円が控除可能

共有のマイホームを売却した場合の、居住用財産の特別控除の適用について紹介します。概要は以下のとおりです。

 

  • 適用できるかどうかは共有者ごとに判定する
  • 特別控除額は共有者全員で3,000万円ではなく、適用できる方1人につき最大3,000万円である
  • 原則として建物の所有者以外、特例は適用できない。例えば夫婦で土地を共有し、建物は夫名義の場合は、妻は特例の原則対象外ですが一定の場合には、適用を受けることができます。その場合の限度額は3,000万円までです。

詳しい要件は国税庁タックスアンサーNo.3311も参照してみてください。

 

もし夫婦で建物を共有しており、ともに居住用財産の特別控除の要件を満たしていれば、夫婦それぞれで最大3,000万円の特別控除が適用できます。もし譲渡所得が3,000万円の特別控除を差し引いてもプラスとなり、税額が発生する見込みがある場合には、事前に建物を共有しておくと、大きな節税になるでしょう。

 

土地が大きく値上がりしていて、建物と土地合わせて「売却価格-(取得費+譲渡費用)」が1億円の所得が発生していた場合の事例を考えてみます。

 

・建物も土地も夫名義、長期譲渡所得で税率20.315%の場合

1億円-特別控除3,000万円=7,000万円に対して税額がかかり、税額は7,000万円×20.315%=約1,422万円。

 

・建物も土地も夫婦で半分ずつの持分、長期譲渡所得で税率20.315%の場合

夫5,000万円、妻5,000万円の所得、それぞれ5,000万円-特別控除3,000万円=2,000万円に対して税額がかかり、税額はそれぞれ2,000万円×20.315%=約406万円、夫婦合計で約812万円。

 

このように、特に譲渡所得がプラスになる場合は、節税効果が大きくなります。

 

3.共有のためにはおしどり贈与の活用もあり

もし夫婦で建物を共有しておらず、これから共有しようとする場合、例えば以下のようなケースが考えられます。

 

  • 土地、建物ともに夫名義→一部、建物の名義を妻にする
  • 土地が妻名義、建物が夫名義→一部、建物の名義を妻にする

 

しかし、無償または時価よりも低額で配偶者へ名義変更する場合、贈与税の課税対象となります。

また、時価で譲渡した場合でも、取得した時と比べて値上がりしている場合は譲渡所得税の対象となりますし、取得した側は不動産取得税がかかります。かかる税金と、特別控除の恩恵を比較して検討しましょう。

 

ただし夫婦間の場合には、一定の要件を満たせばいわゆる「おしどり贈与」が適用できる可能性があります。

「おしどり贈与」は、夫婦間で居住用の不動産を贈与したときに、贈与税の特別控除(配偶者控除)が最大2,000万円までとれる制度です。

 

主な要件は以下のとおりです。

 

  • 夫婦の婚姻期間が20年を過ぎていること
  • 居住用の不動産であること
  • 贈与された方が贈与された不動産に居住しており、今後も引き続き居住する見込みであること
  • 一定の書類を添付して確定申告をすること

 

おしどり贈与は贈与税の負担を減らすことが可能ですが、引き続き居住する見込みでなければなりません。

このため居住用財産の特別控除を増やすために贈与をする場合、すぐに売却してしまうとおしどり贈与の特例が適用できなくなります。将来売却の予定があれば、早めに共有名義にすることを検討しておくとよいでしょう。

また、おしどり贈与を使用すると、司法書士の費用及び不動産取得税が発生します。そのため利用は計画的に行い、一生住み続けるのか、売却の見込みがあるのか、その売却金額はいくらぐらいになりそうなのか等、考慮していく必要があります。

詳しい要件は国税庁タックスアンサーNo.4452も参照してみてください。

 

4.まとめ

以上、居住用財産の特別控除の概要、および夫婦で控除を多く活用する方法を紹介しました。不動産の売却時には居住用財産の特別控除を始めとしてさまざまな特例があり、適用できると大きく節税が可能です。どの特例が適用できるか、どうすれば大きく節税できるか、事前に検討しておくと効果的です。

居住用財産の特別控除を始めとして、不動産税務や会計でお困りの際は、丸山会計事務所までお気軽にご相談ください。

 

この記事の監修

丸山会計事務所 税理士 代表 丸山和秀

税理士
丸山会計事務所代表 丸山 和秀

税制支援20年以上、不動産税務、事業承継&M&A、法人資産税、設備投資時の優遇税制を得意とする。
「ともに未来を描く」を経営理念として、お客様と一緒に未来を描くことができる、提案型の“攻める税理士”として、経営ビジョンやニーズに寄り添い、適切なタイミングで、お客様のお悩みを解決するご提案を行う。

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