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インボイス制度下における消費税の計算方法を解説

投稿日:2023年06月14日

インボイス制度が2023年10月1日より始まります。インボイス制度下においては、消費税の計算方法がインボイス制度開始前と大きく変わります。そこで本記事では、インボイス制度下における消費税の計算方法を解説します。ぜひ本記事を読んで、インボイス制度が始まる前に、消費税の計算方法を理解しておきましょう。

1.消費税の計算方法は2種類ある

消費税額の納税額は、売上に対する消費税額から仕入に対する消費税額を控除して計算をします。すなわち、以下の計算式で算出します。

【売上に対する消費税額-仕入に対する消費税額=納付する消費税額】

「売上に対する消費税額」と「仕入に対する消費税額」の計算方法には、それぞれ「割り戻し計算方式」と「積み上げ計算方式」の2種類あります。本章では、それぞれの計算方式の特徴を解説します。

「割り戻し計算方式」とは

「割り戻し計算方式」とは、課税期間の税込課税売上(仕入)高を税率ごとに集計したものに消費税率を乗じて計算した金額により、「売上に対する消費税額」と「仕入に対する消費税額」を計算します。計算例をみてみましょう。

<前提条件>

1個250円(税込み)消費税22円の商品を10,000個販売した場合

【例】

税込課税売上高2,500,000円×100/110=2,272,727円(税抜金額)→2,272,000円(千円未満切り捨て)

2,272,000円×10%=227,200円

※実際の消費税の申告書上では、国税分と地方税分を分けて計算しますが、ここでは簡便的に国税分と地方税分を合計した税率を用いて計算しています。

 

インボイス開始前の現行では、「割り戻し計算方式」を用いて計算することがほとんどです。

「積み上げ計算(積み上げ残)方式」とは

「積み上げ計算(積み上げ残)方式」とは、請求書に記載された消費税額を一つ一つ足して積み上げたものを「売上に対する消費税額」と「仕入に対する消費税額」とするものです。計算例をみてみましょう。

 

【例】請求書に記載された消費税額等22円を10,000回積み上げた場合

22円×10,000回=220,000円

 

差額として、7,200円(227,200円―220,000円=7,200円)の差額が出ます。

売上にかかる預かり消費税が低いということは、消費税の計算上、通常の場合納付税額が安くなります。

 

インボイス制度開始前の現行では、「売上に対する消費税額」を計算する際には、積み上げ方式での計算は原則認(経過措置として一部残っていました)められていません。ただし、「仕入に対する消費税額」を計算する際には、積み上げ方式を用いることができます。

2.インボイス制度下においてどちらの計算方法を用いればよいか?

先述したように、インボイス制度開始前においては「割り戻し計算」を用いることが原則とされています。しかし、インボイス制度開始後は、それぞれ事業者の状況に応じて、「割り戻し計算方式」と「積み上げ計算方式」のいずれかを選択することができます。

 

売上税額の計算方法は「割り戻し計算方式」が原則である

「売上に対する消費税額」を計算する際には、「割り戻し計算方式」を原則用いることとされています。ただし、特例として「積み上げ計算方式」を用いることも可能です。

 

仕入税額の計算方法は「積み上げ計算(積み上げ残)方式」が原則である

「仕入に対する消費税額」を計算する際には、「積み上げ計算方式」を用いることが原則とされています。ただし、特例として「「割り戻し計算方式」」を用いることも可能です。

 

「売上に対する消費税額」と「仕入に対する消費税額」の原則とされている計算方法が違うことに注意が必要です。

 

有利な計算方法はどっち?

インボイス制度下においては、事業者が各々計算方法を選択できることから、どちらの計算方式を選択したほうが有利か頭を悩ませることでしょう。計算方法を勘案する際には、次の点に留意してください。

 

・小売店や飲食店などの請求書(領収書)の多い事業者は、「売上に対する消費税額」の計算方法に「積み上げ計算方式」を選択した方が有利

 

「積み上げ計算方式」と「割り戻し計算方式」の基本的な違いは、端数処理の仕方です。前者はその都度端数を処理したものを積み上げますが、後者は積み上げたものに対して最後に端数処理をします。端数処理の回数が多ければ多いほど、「積み上げ計算方式」を選択した方が「売上に対する消費税額」が少なくなります。よって、請求書(領収書)の多い事業者は「積み上げ計算方式」を選択したほうが有利です。

 

・「売上に対する消費税額」の計算方法に「積み上げ計算方式」を選択したら、「仕入に対する消費税額」も「積み上げ計算方式」を選択しなければいけない

 

計算方法の違いを利用した納付税額の軽減を排除する目的で、「売上に対する消費税額」を「積み上げ計算方式」を用いた場合、「仕入に対する消費税額」の計算方法も統一する必要があります。

3.「積み上げ計算方式」を用いたい場合にやるべきことを紹介

前章で述べたように、「積み上げ計算方式」を用いたいとお考えの小売店や飲食店は多いでしょう。しかし、インボイス制度開始前の現行では「積み上げ計算方式」は実務上ほとんど用いられていないことから、インボイス制度下においても「積み上げ計算方式」に移行することが憚られる場合があります。

 

本章では、「積み上げ計算方式」を用いたい場合に取り組むべきことを紹介します。

 

会計データをPOSデータに合わせる

レジで出力できるPOSデータ(POSレジから収集される顧客の消費行動をデータ化したもの)に会計データの形を一致させましょう。すなわち、会計データに税込金額を入力したあとに税抜処理するのではなく、「消費税」と「消費税を除いた金額」の2つの仕訳を入力すれば問題ありません。

 

インポートデータの体裁を整える

POSデータを出力できるような売上規模になってくると、基本的には会計ファイルにデータをインポートすることが多いです。会計ファイルに取り込む前に、インポートデータの体裁を整えておけば、簡単に「積み上げ計算方式」を用いることができるでしょう。

4.まとめ

本記事では、インボイス制度下における消費税の計算方法を紹介しました。事業者各々が自身に有利な計算方法を選択するようになりますので、「割り戻し計算方式」と「積み上げ計算方式」のどちらが有利であるかについてご自身で判断するのは難しいかもしれません。消費税の計算方法やインボイス制度など、税務や会計でお困りの際は、丸山会計事務所までお気軽にご相談ください。

この記事の監修

丸山会計事務所 税理士 代表 丸山和秀

税理士
丸山会計事務所代表 丸山 和秀

税制支援20年以上、不動産税務、事業承継&M&A、法人資産税、設備投資時の優遇税制を得意とする。
「ともに未来を描く」を経営理念として、お客様と一緒に未来を描くことができる、提案型の“攻める税理士”として、経営ビジョンやニーズに寄り添い、適切なタイミングで、お客様のお悩みを解決するご提案を行う。

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