26/9/25配信:本当の期限は令和9年1月1日ではありません(貸付用不動産の通達案が公表)
投稿日:2026年09月25日
朝4時起き名古屋の税理士、丸山です。
最近朝は過ごしやすくなりましたね。
こちらのメルマガについて、母校の専門学校でも
回覧をしていただいているようで
お世話になった母校に少しでも
自分が貢献できていると聞いて、嬉しく思います。
さて、
今年5月に、ブログで
「賃貸不動産の5年ルール」について
お伝えしました。
あのときはまだ、
令和8年度税制改正大綱に
方針が書かれただけの段階でした。
それが、いよいよ動き出しました。
先週、令和8年9月18日、国税庁から
「貸付用不動産の評価について」の
法令解釈通達(案)が公表され、
パブリックコメント(意見募集)が
始まっています。
締切は10月18日です。
不動産オーナーの方から
「令和9年からですよね」
というご質問をよくいただきます。
結論から申し上げますと、
本当に意識すべき期限は
令和9年1月1日ではありません。
「改正を通達に定める日」——
つまり、この通達が
正式に発遣される日です。
そして今回の案では、
その日までに何が
どこまで進んでいなければならないかが、
かなり具体的に書かれました。
順にご説明します。
■ そもそも:何がどう変わるのか
(1)これまで
賃貸アパートやマンションを取得すると、
土地は路線価、建物は固定資産税評価額。
そこに貸家建付地・貸家の評価減が乗り、
相続税評価額が購入価格を
大きく下回ることがありました。
国税庁が示した事例では、
取得価額21億円の一棟賃貸マンションが
相続税評価額4.2億円。
かい離は約5倍です。
(2)これから
課税時期の前5年以内に、
対価を伴う取引で取得または新築した
貸付用不動産は、
「通常の取引価額に相当する金額」で
評価することとされます。
平たく言えば、実勢価格ベースです。
(3)安全弁としての80%
ただし、一定の場合には
次の金額の80%で評価できます。
土地は、取得価額に「地価変動率」を
掛けた金額。
地価変動率とは、
課税時期の年の路線価等を
取得した年の路線価等で割った割合です。
買ったときと相続のときで、
路線価がどれだけ動いたか、
ということです。
建物は、取得価額から
取得時から課税時期までの減価償却費を
差し引いた金額。
定額法、法定耐用年数で計算します。
その80%です。
ここは大事なので繰り返します。
8割です。
これまでのように
時価の3割、4割まで下がるわけではありません。
■ 80%が使えない場合があります
ここは見落とされやすい点です。
この80%のただし書きが使えるのは、
「取得価額が、取得したときの
通常の取引価額に相当すると認められる場合」
に限られます。
つまり、相場どおりに買っていること。
相場より高く買っていた場合や、
同族法人・親族との間で
取引価額に説明がつかない場合は、
80%の計算に乗れず、
課税時期の実勢価格そのもので
評価される可能性があります。
「取得価額の8割で済む」と
決めてかからないでください。
適用は、
令和9年1月1日以後に相続・遺贈・贈与で
取得する財産からです。
いつ買ったかは関係ありません。
令和9年に相続が発生すれば、
令和5年に買った物件も、
令和7年に買った物件も、
5年以内であれば対象です。
■ 狙い撃ちされたのは「直前に買った土地」でした
経過措置が置かれています。
通達制定日までに、
次の土地の上に新築した家屋
(その日に建築中のものを含む)は、
この改正の対象外です。
(1)制定日前5年以内に
取得したもの以外の土地
——要するに、5年超持っている土地
(2)制定日前5年以内に
相続等により取得した土地
お気づきでしょうか。
先祖代々の土地も、
最近相続で引き継いだ土地も、
どちらも経過措置に乗ります。
外れるのは、
直前に「買った」土地だけです。
今回の改正が本当に止めたかったのは、
相続が近づいてから
現金を土地と建物に換える動き
——そこだと読み取れます。
明暗を分けるのは、
その土地を「買ったのか、受け継いだのか」です。
■ 「建築中」の中身が決まりました
今回いちばんの実務論点です。
通達案の注書きで、
「建築中」がこう定義されました。
制定日までに請負契約等が締結され、
その日において工事が行われており、
かつ、費用の全部または一部が
支払われていること。
契約・工事・支払い。
3つそろって、初めて「建築中」です。
「契約だけは済ませてある」では足りません。
「来月着工予定」でも足りません。
制定日の時点で、
現場が動いていて、お金が出ている必要があります。
いま計画が動いている方は、
この3つの進捗を
今週中にご確認ください。
■ では、その「日」はいつなのか
まだ空欄です。
通達案にも
「令和8年●月●日」と書かれています。
ただ、前例があります。
いわゆるタワマン節税に対応した
「居住用の区分所有財産の評価について」の
通達案は、
令和5年7月21日に意見募集が始まり、
8月20日に締め切られ、
10月6日に発遣されました。
締切から発遣まで、約1か月半です。
今回の締切は10月18日。
同じペースなら、
12月上旬には発遣される計算になります。
「令和9年1月1日まで、あと3か月ある」
とお考えではないでしょうか。
期限は、そこではありません。
発遣が12月上旬だとすれば、
残りは2か月と少し。
その間に、契約を結び、
工事を始め、
費用を支払うところまで
進めておく必要があります。
建築計画は、
思い立ってから着工まで
数か月かかるのが普通です。
判断のタイミングは、今です。
■ 今日からできる備えは3つ
(1)取得日と取得価額を一覧にする
お持ちの貸付用不動産について、
取得・新築の年月日と取得価額を
一覧にしてください。
すべてはここから始まります。
(2)進行中の建築計画を棚卸しする
土地をいつ、どうやって取得したか。
請負契約の締結日、着工日、
支払いの進捗はどうか。
経過措置に乗れるかどうかは、
発遣日の時点で
どこまで進んでいるかで決まります。
(3)5年経過日と年齢を逆算する
令和6年3月に取得した物件なら、
令和11年3月に5年を経過します。
5年を超えれば、
原則として従来の評価に戻ります。
「待てば抜けられる」制度である以上、
ご自身の年齢と健康状態からの逆算が、
そのまま対策になります。
■ 最後に
念のため申し上げますが、
私は「急いで建ててください」と
申し上げているのではありません。
改正直前の駆け込みは、
かえって財産評価基本通達6項の
対象になりやすい行為です。
そもそも今回の改正は、
6項の多用によって
納税者の予測可能性が損なわれている
という批判に応えるものでした。
ルールが明確になるということは、
ルールの外側にはみ出した行為が
これまで以上にはっきり見える
ということでもあります。
大切なのは、
期限に間に合うかどうかではなく、
その賃貸経営が、
税金を抜きにしても
成り立つ事業なのかどうかです。
そのうえで、
制度の期限を味方につける。
順番を間違えないでくださいね。
この投資大丈夫かな?
そう思われた方が、是非ご相談ください。
■ 追伸
二点だけ
ひとつ。
「では法人で買えばいいのか」という
ご質問をよくいただきます。
今回の通達案の注書きには、
純資産価額(評価通達185)を計算する際の
土地・建物には、
この5年ルールの適用がない旨が
明記されました。
法人が持つ不動産の株価計算は、
従来どおり「3年ルール」で動きます。
大綱では読み取れなかった論点が、
ここではっきりしました。
ただし、結論を急がないでください。
その3年ルール自体は残りますし、
財産評価基本通達6項も残ります。
形式が整っていても
著しく不適当と認められれば、
時価で評価される。
この扱いは今回の改正で消えません。
また、現在、株価計算についても60年に
一度の大改革中です。
通達の流れを見守る必要があります。
もうひとつ。
通達案では、一定の要件のもとで
対象から除かれる資産も定められています。
収用等に伴う代替資産、
固定資産の交換(所得税法58条)、
特定の事業用資産の買換え(措置法37条)
などです。
区画整理や収用を経験された地主の方は、
ご自身のケースが
この除外に当たらないか、
一度ご確認ください。
お手元の物件一覧と建築計画について、
「これは対象になるのか」
「間に合うのか」を確認されたい方は、
大きな一手を打つ前に、
ぜひ一度ご相談ください。
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この記事の監修
税理士
丸山会計事務所代表 丸山 和秀(1986年生まれ)
税制支援20年以上、不動産税務、事業承継&M&A、法人資産税、設備投資時の優遇税制を得意とする。
「ともに未来を描く」を経営理念として、お客様と一緒に未来を描くことができる、提案型の“攻める税理士”として、経営ビジョンやニーズに寄り添い、適切なタイミングで、お客様のお悩みを解決するご提案を行う。


