居住用不動産の譲渡の特別控除を使用する際の注意点
投稿日:2023年01月11日
マイホームなどの居住用の財産を売却した際には3,000万円という非常に大きな控除を受けられます。
しかし、この制度を利用したために税金的に損をすることや、そもそも控除が使えない場合があるので注意が必要です。
「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」の概要や注意点について解説していきます。
居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例
「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」とは、マイホームを譲渡した際に、所有期間とは無関係に、譲渡所得から3,000万円の控除を受けられる制度です。
マイホームを売却して3,000万円を超えるような譲渡所得が出ることはほとんどありません。
そのため、この制度があることによって、ほとんどの人はマイホーム売却時には譲渡所得税は課税されません。
3,000万円の特別控除を受けるための6つの条件
「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」を受けるためには次の6つの条件をクリアしなければなりません。
1.自分が住んでいる家屋を売るか、家屋とともにその敷地や借地権を売ること。
なお、以前に住んでいた家屋や敷地等の場合には、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の
12月31日までに売ること。
(注)住んでいた家屋または住まなくなった家屋を取り壊した場合は、
次の2つの要件すべてに当てはまることが必要です。
イ その敷地の譲渡契約が、家屋を取り壊した日から1年以内に締結され、
かつ、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること。
ロ 家屋を取り壊してから譲渡契約を締結した日まで、その敷地を貸駐車場などその他の用に供していないこと。
2.売った年の前年および前々年にこの特例またはマイホームの譲渡損失についての損益通算及び繰越控除の特例の適用を受けていないこと。
3.売った年、その前年および前々年にマイホームの買換えやマイホームの交換の特例の適用を受けていないこと。
4.売った家屋や敷地等について、収用等の場合の特別控除など他の特例の適用を受けていないこと。
5.災害によって滅失した家屋の場合は、その敷地を住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること。
6.売手と買手が、親子や夫婦など特別な関係でないこと。
現在居住していないマイホームでも、そのマイホームが3年以内に居住していた家を売却する場合には、この特例が適用される可能性があります。
また、この3年間については特に要件がありませんので、例えばその売却予定の物件を3年間賃貸していた場合でも、3年後の12月31日までに売却が行われればこの特例を受けることができます。
居住用財産譲渡の3,000万円の特例使用時の注意点
「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」を使用すれば、確かに譲渡所得税はかかりません。
しかし、本制度を利用する際には次の2つのケースで注意が必要になります。
- マイホーム売却後に住宅ローンを利用して住み替える場合
- 売却後3年以内に再度売却する場合
「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」は注意点もよく理解した上で利用しないと、大きな損失を負ってしまう可能性もあります。
「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」を使用する前に確認したい2つのポイントについて詳しく解説していきます。
居住用財産譲渡の3,000万円の特例使用後3年間は住宅ローン控除は使えない
「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」を使用した後、3年間は住宅ローンの控除が使用できなくなります。
住宅ローン控除とは、住宅ローンを使用して住宅の新築や取得を行なった場合、住宅ローンの年末借入残高の0.7%を所得税(一部、翌年の住民税)から最大13年間税額控除する制度です。
住宅ローン減税の適用要件には次のような決まりがあります。
居住年およびその前2年の計3年間に次に掲げる譲渡所得の課税の特例の適用を受けていないこと。
- 居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例
- 居住用財産の譲渡所得の特別控除
- 特定の居住用財産の買換えの場合の長期譲渡所得の課税の特例
- 財産を交換した場合の長期譲渡所得の課税の特例
- 既存市街地等内にある土地等の中高層耐火建築物等の建設のための買換え及び交換の場合の譲渡所得の課税の特例
このうち2番の居需要財産の譲渡所得の特別控除とは、まさに「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」のことですので、この控除を過去3年以内に受けた人は住宅ローン減税を利用できません。
住み替えの際にはシミュレーションが必要
古いマイホームを売却し、住宅ローンを利用して新しい住宅に住み替える人は、「住宅ローン減税の適用を受けること」と「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例の適用を受けること」どちらにメリットがあるのかをしっかりと比較してから住み替えを進める必要があります。
3,000万円の住宅ローン(期間30年金利1%)を2022年1月1日に借りた場合、借入以後13年間の年末残高は以下のようになります。
住宅ローン年末残高 | 住宅ローン控除額 | |
2022年12月 | ¥29,210,308 | ¥204,400 |
2023年12月 | ¥28,413,346 | ¥198,800 |
2024年12月 | ¥27,462,018 | ¥192,200 |
2025年12月 | ¥26,574,681 | ¥186,000 |
2026年12月 | ¥25,678,430 | ¥179,700 |
2027年12月 | ¥24,773,175 | ¥173,400 |
2028年12月 | ¥23,858,826 | ¥167,000 |
2029年12月 | ¥22,935,291 | ¥160,500 |
2030年12月 | ¥22,002,479 | ¥154,000 |
2031年12月 | ¥21,060,295 | ¥147,400 |
2032年12月 | ¥20,108,645 | ¥140,700 |
2033年12月 | ¥19,147,437 | ¥134,000 |
2034年12月 | ¥18,176,572 | ¥127,200 |
合計 | ¥2,165,300 |
このケースであれば13年間で210万円以上の控除を受けられます。
もしも住宅ローン借入前の3年以内に「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」を使用していたら、このケースであれば210万円以上の住宅ローン控除が受けられないことになります。
もし、今まで住んでいた住宅を売却して、新しい住宅ローンを組んで「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」を使用する場合には、3,000万円の特別控除の特例の駅用前に「住宅ローン控除によって受けられる控除額」と「居住用財産譲渡の特例で受けられる控除額」を比較して、メリットが大きい方を選択しましょう。
相続した住宅で取得価額が分からない場合を除けば、通常は取得価額が分かりますので譲渡所得の金額が、少ない場合もあります。
今回の場合でしたら譲渡所得税の税率は15.315%(住民税も合わせると、20.315%)となりますので、譲渡所得金額が1,371万円以上(210万円÷15.315%=1,371万円)でるのであれば、居住用財産を譲渡した場合の3,000万円控除の特例を受けた方が良いということになりますが、それ以下の場合には、住宅ローン控除の特例を受けた方が特になるということも考えられるのです。
居住用不動産譲渡の特例は1回使用したら3年間は使えない
「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」は1度使用した後は3年間は使用できません。
「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」には以下のような条件があるためです。
『売った年の前年および前々年にこの特例またはマイホームの譲渡損失についての損益通算及び繰越控除の特例の適用を受けていないこと。』
3年以内に2回以上、マイホームを売却する人はあまり存在しませんが、急な転勤などで3年以内に取得した住宅を売却するケースも考えられます。
このような場合には、居住用財産の3,000万円特別控除は使用できないので注意しましょう。
また、住宅ローン控除にも同じように、住宅ローン控除を使った後に、居住用財産を譲渡した場合には、居住用財産を譲渡した場合の3,000万円が使えないという制限規定があります。
同一年度中は使える
なお、本制度は同年中であれば、複数回利用できます。
2022年1月に自宅を売却し、2月に新しい自宅を取得、10月に自宅を売却して11月に新しい自宅を取得するようなケースでは、売却の都度「居住用財産の3,000万円特別控除」が使用可能です。
ただし、控除金額の上限は3,000万円が限度となりますので、注意が必要です。
売却が年をまたいでしまうと、3年間は使用できなくなるので注意しましょう。
参考サイト:https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/joto/18/02.htm
まとめ
マイホームを売却した場合には「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」を使用することで、譲渡所得に対して3,000万円までの控除を受けられます。
しかし本制度を利用した後3年間は住宅ローン減税が受けられません。
「自宅を売却して、売却代金と住宅ローンで新たな家へ住み替える」と計画している方は、「居住用財産譲渡の3,000万円特別控除」と「住宅ローン減税」のどちらにメリットがあるのか、慎重に検討した上で住み替えを行いましょう。
また、住宅に関しては住まいの給付金、団信など様々なお金に関する問題が発生します。
それらの知識を総合的に判断ができる、税理士やFPの方に相談をされることをお勧め致します。
住宅の売却、購入にかかる税務は丸山会計事務所までご相談ください。
この記事の監修
税理士
丸山会計事務所代表 丸山 和秀(1986年生まれ)
税制支援20年以上、不動産税務、事業承継&M&A、法人資産税、設備投資時の優遇税制を得意とする。
「ともに未来を描く」を経営理念として、お客様と一緒に未来を描くことができる、提案型の“攻める税理士”として、経営ビジョンやニーズに寄り添い、適切なタイミングで、お客様のお悩みを解決するご提案を行う。
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