売価の5%だと損になる!価格不明の建物を売却する際の税金を抑える方法
投稿日:2023年08月02日
居住用の住居資産売却時の譲渡所得
不動産の譲渡所得の計算方法
不動産を売却した際の譲渡所得と、譲渡所得に対して課税される不動産譲渡所得税の計算方法について、まずは理解しておきましょう。
売却金額–取得価格=不動産譲渡所得
不動産譲渡所得税=譲渡所得×税率
取得価格が1,000万円の不動産を1,500万円で売却した場合、不動産譲渡所得は1,500万円-1,000万円=500万円です。
不動産の譲渡所得税の税率は、不動産の所有期間が5年以内の場合は「短期譲渡所得」となり、税率は39.63%です。
一方、所有期間その譲渡日を含み年の1月1日において、5年を超える場合は「長期譲渡所得」となり、税率は20.315%です。
この所有期間が5年超の場合には、不動産譲渡所得500万円×20.315%=1,015,750円が譲渡所得税となります。
譲渡所得は取得した価格と売価の差額で決定し、譲渡所得税は取得価格の20.315%または39.73%となると、まずは理解しておきましょう。
建物の取得価格が分からない場合の一般的な計算方法
建物をいくらで取得していたのかが分からないケースなどは、親の代から所有する不動産などの古い建物を売却するケースではよくあります。
その場合、取得価格は売価の5%と計算して税金を計算する税理士が非常に多いです。
この計算方法によると売価のうち95%が売却利益という考えになるので、売却金額の大半が課税対象となります。
譲渡所得税の計算方法は次の通りです。
譲渡所得=売却価格×95%
譲渡所得税=(売却価格×95%)×20.315%(所有期間が5年超の場合)
取得価格の分からない建物を500万円で売却した場合の譲渡所得と譲渡所得税は次のようになります。
譲渡所得=500万円×95%=475万円
譲渡所得税=475万円×20.315%=964,962円
建物の購入価額が分からないような、建物を売却しただけで、実に100万円近くの税金が発生することになってしまいました。
この方法の場合、計算は簡単ですが、売価の95%もの部分が譲渡所得となるため、税金は高くなりがちです。
標準的な建築価格表を使った場合の計算方法
取得価格が分からない建物を売却する際の譲渡所得の計算方法は売価の5%で計算する方法以外にも、国税庁のルールに基づいて標準的な建築価格表を使うことで計算することができます。
標準的な建築価格表とは、建物の取得費を算出するうえで基準となる金額でその当時建物を立てた場合の単価を把握することができます。
国土交通省が定めた、建築価格表を直近40年だけ抽出すると以下のようになります。
木造 木骨
モルタル |
鉄骨鉄筋
コンクリート |
鉄筋
コンクリート |
鉄 骨 | |
1982年(昭和57年) | 101.3 | 170.9 | 143 | 93.9 |
1983年(昭和58年) | 102.2 | 168 | 143.8 | 94.3 |
1984年(昭和59年) | 102.8 | 161.2 | 141.7 | 95.3 |
1985年(昭和60年) | 104.2 | 172.2 | 144.5 | 96.9 |
1986年(昭和61年) | 106.2 | 181.9 | 149.5 | 102.6 |
1987年(昭和62年) | 110 | 191.8 | 156.6 | 108.4 |
1988年(昭和63年) | 116.5 | 203.6 | 175 | 117.3 |
1989年(平成元年) | 123.1 | 237.3 | 193.3 | 128.4 |
1990年 (平成2年) | 131.7 | 286.7 | 222.9 | 147.4 |
1991年 (平成3年) | 137.6 | 329.8 | 246.8 | 158.7 |
1992年 (平成4年) | 143.5 | 333.7 | 245.6 | 162.4 |
1993年 (平成5年) | 150.9 | 300.3 | 227.5 | 159.2 |
1994年 (平成6年) | 156.6 | 262.9 | 212.8 | 148.4 |
1995年 (平成7年) | 158.3 | 228.8 | 199 | 143.2 |
1996年 (平成8年) | 161 | 229.7 | 198 | 143.6 |
1997年 (平成9年) | 160.5 | 223 | 201 | 141 |
1998年(平成10年) | 158.6 | 225.6 | 203.8 | 138.7 |
1999年(平成11年) | 159.3 | 220.9 | 197.9 | 139.4 |
2000年(平成12年) | 159 | 204.3 | 182.6 | 132.3 |
2001年(平成13年) | 157.2 | 186.1 | 177.8 | 136.4 |
2002年(平成14年) | 153.6 | 195.2 | 180.5 | 135 |
2003年(平成15年) | 152.7 | 187.3 | 179.5 | 131.4 |
2004年(平成16年) | 152.1 | 190.1 | 176.1 | 130.6 |
2005年(平成17年) | 151.9 | 185.7 | 171.5 | 132.8 |
2006年(平成18年) | 152.9 | 170.5 | 178.6 | 133.7 |
2007年(平成19年) | 153.6 | 182.5 | 185.8 | 135.6 |
2008年(平成20年) | 156 | 229.1 | 206.1 | 158.3 |
2009年(平成21年) | 156.6 | 265.2 | 219 | 169.5 |
2010年(平成22年) | 156.5 | 226.4 | 205.9 | 163 |
2011年(平成23年) | 156.8 | 238.4 | 197 | 158.9 |
2012年(平成24年) | 157.6 | 223.3 | 193.9 | 155.6 |
2013年(平成25年) | 159.9 | 258.5 | 203.8 | 164.3 |
2014年(平成26年) | 163 | 276.2 | 228 | 176.4 |
2015年(平成27年) | 165.4 | 262.2 | 240.2 | 197.3 |
2016年(平成28年) | 165.9 | 308.3 | 254.2 | 204.1 |
2017年(平成29年) | 166.7 | 350.4 | 265.5 | 214.6 |
2018年(平成30年) | 168.5 | 304.2 | 263.1 | 214.1 |
2019年(平成31年/令和元年) | 170.1 | 369.3 | 285.6 | 228.8 |
2020年 (令和2年) | 172 | 279.2 | 277 | 230.2 |
2021年 (令和3年) | 172.2 | 338.4 | 288.3 | 227.3 |
2022年 (令和4年) | 176.2 | 434.4 | 277.5 | 241.5 |
例えば、平成10年建築の鉄筋コンクリートの建物の単価は203.8千円です。
建物の面積が100㎡であれば、建物の取得価格は2,038万円 となります。
そして、この建物を令和4年の6月に売却した場合には、売却した建物のの減価償却累計額は約687万円程度です 。
標準的な建築価格表の取得価格- =建物の取得価格
で計算することができますので、この場合の取得価格は次のようになります。
建物の取得価格=2,038円万円-687万円=1,351万円
この建物を1,500万円で売却した場合の譲渡所得税は次の通りです。
譲渡所得税=(1,500万円-1,351万円)×20.315%=30万円前後
非事業用建物の耐用年数は事業用の建物の耐用年数の1.5倍になります。
そのため、取得価格を事業用建物よりも大きくできるというメリットがあります。
売価の5%と標準的な建築価格表を使った場合はどちらが安い?
平成10年建築の建物を1,500万円で売却した場合、どちらが譲渡所得税が高くなるのか計算してみましょう。
・売価の5%を取得価格とする場合
譲渡所得税=1,500万円×95%×20.315%=2,894,800円
・標準的な建築価格表を使用する場合
建物の取得価格=2,038万円-687万円=1,351万円
譲渡所得税=(1,500万円-1,351万円(減価償却累計額控除後)×20.315%=302,600円
このケースでは、標準的な建築価格表を使用した方が取得価格が大きくなるので譲渡所得が小さくなり、譲渡所得税の金額は10分の1程度になりました。
まとめ
取得価格の分からない建物を売却する際の取得価格は「売却価格の5%を取得価格とする方法」と「標準的な建築価格表を使用して取得価格を求める方法」の2つの方法があります。
非事業用の建物の耐用年数は法定耐用年数の1.5倍へ延長されるので、よほど古い建物でない限りは、標準的な建築価格表を使用して取得価格を求めた方が取得価格は売価の5%よりも高くなり、譲渡所得は小さくなります。
取得価格が分からない建物を売却する際の譲渡所得税を抑えたいのであれば、標準的な建築家価格表を使用して取得価格を求めるようにしましょう。
不動産税務など、税務や会計でお困りの際は、丸山会計事務所までお気軽にご相談ください。
この記事の監修
税理士
丸山会計事務所代表 丸山 和秀(1986年生まれ)
税制支援20年以上、不動産税務、事業承継&M&A、法人資産税、設備投資時の優遇税制を得意とする。
「ともに未来を描く」を経営理念として、お客様と一緒に未来を描くことができる、提案型の“攻める税理士”として、経営ビジョンやニーズに寄り添い、適切なタイミングで、お客様のお悩みを解決するご提案を行う。
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