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高額の退職金を計上して損金算入が認められるには?

投稿日:2023年05月19日

役員などに高額な退職金を支給することで、多額の経費計上を行い、多くの節税をすることができます。

しかし、会社が支払った退職金の全てが必ずしも経費として認められるわけではありません。

可能な限り多くの退職金を支給して、さらに経費として認められるための方法を詳しく解説していきます。

一般的な退職金の計算方法

一般的な退職金の計算方法は次のように計算します。

 

『最終報酬月額×勤続年数×功績倍率』

 

例えば、最終報酬月額が120万円で、30年勤続した役員の功績倍率が3だった場合、退職金は120万円×30年×3=1億800万円となります。

一般的に、このような計算式で退職金を算出すれば、税務上、損金として認められると言われています。

ただし、この計算式は法律によって定められているものではなく、過去の事例や慣習によるところが大きくなっています。

そのため、そのほかに合理的な理由があれば、上記の計算式から算出される退職金を超える金額でも、損金として認められる可能性があるということを理解しておきましょう。

 

税務上は不相当に高額な退職金については、損金の額に算入しないという規定になっており、不相当に高額でなければ損金に認められるものとなります。

その不相当高額か否かの判定は、国税庁側は類似法人の支給事例を基に決定する場合が多いです。

 

退職金の税務上の優遇措置

退職金は会社にとっては多額の損金を計上できるという点で、税務上のメリットがあります。

しかし、退職する役員や従業員にとっても次の3つの税務上のメリットがあります。

 

  • 退職所得控除額
  • 分離課税
  • 課税所得が2分の1になる

 

退職金には退職所得控除という控除があります。

勤続年数(A) 退職所得控除額
20年以下 40万円 × A
(80万円に満たない場合には、80万円)
20年超 800万円 + 70万円 × (A – 20年)

 

例えば30年勤続した方は800万円+70万円×(30年−20年)=1,500万円の控除があります。

また、退職所得は分離課税なので、他の所得とは分離して課税されるので税負担が少なくなる仕組みとなっています。

さらに、退職所得は次のように計算します。

『(収入金額(源泉徴収される前の金額) - 退職所得控除額) × 1/2 = 退職所得の金額』控除後の課税所得がさらに1/2になるので課税所得を非常に少なくすることができます。

会社によっては損金算入できない部分の退職金を「賞与」として計上することもあると記載されている記事もありますが、退職した事実の問題であり、退職した事実が存在する場合には、不相当に高額な部分は損金の額には参入されませんが、賞与として認定されることはありません。

 

例え退職金が高額で損金として認められなかったとしても、退職金は退職金として計上した方が、会社側の社会保険料の観点、退職金を受け取る役員や従業員側の手取金額からメリットがあります。

 

適切な退職金の計算方法はいくらか?

退職金はできる限り多く計上した方が企業にとっても退職する役員や従業員にとっても税務上のメリットがあります。

できる限り多くの退職金を計上するにはどうすればよいのでしょうか?

一般的に退職金計算の計算式となっている「最終報酬月額×勤続年数×功績倍率」ですが、必ずしもこの計算式で退職金を計算しなければならないという法律は存在しません。

そのため税務署が「退職金として適正である」と判断すれば、最終報酬月額を基準とした退職金を超える金額であっても損金算入が認められる可能性があります。

 

過去の判例によると、退職金は「最終報酬月額を基準としていなくても、同業他社と比較して適正だと判断されれば問題ない」とされています。

つまり、最終報酬月額を基準とするのではなく、最適報酬月額を基準として退職金を計算しても、損金算入が認められる可能性が高いです。

 

なお、最適報酬月額とは同業他社と比較して最適と思われる水準のことです。

 

例えば、自社で退職する役員の最終報酬月額が120万円で、同業他社の役員の退職時の月額報酬の平均が180万円であれば、180万円を基準として退職金を計算することも可能です。

勤続30年、功績倍率3倍の場合、最終報酬月額120万円であれば退職金は1億800万円ですが、同業他社の数字から最適報酬月額が180万円と算出した場合には、退職金は1億6,200万円です。

 

このように、計算と基準となる報酬月額が同業他社と比較して最適であると認めらる金額であれば、「最適」報酬月額を基準として退職金を計算しても、その退職金が損金として認められる可能性が高いでしょう。

 

高い退職金を支給するために準備すべきこと

できる限り高い退職金を支給して、退職金が損金として認めらるために次のような準備をしましょう。

 

  • 最終報酬月額を引き上げる
  • 退職3年前くらいから同業他社の情報をリサーチする
  • 税務署に資料を提示し、事前照会を行う

 

最もオーソドックな方法が、退職する3年程度前から月額報酬を引き上げておくという方法です。この方法であれば最終月額報酬が自ずと高くなるのでその金額を基準として退職金を計算しても、何ら不自然ではありません。

 

ただし、退職する1年くらい前になって急に月額報酬を引き上げても、税務署は認めてくれない可能性が非常に高いため、3年以上前から報酬を引き上げておきましょう。

 

また、同業他社と同じ水準である「最適」月額報酬で退職金を計算したい場合には、これも過去3年分程度の同業他社の役員報酬を調べ、その情報を蓄積した上で、税務署へ「この退職金で良いか」と事前照会を行うことで退職金の損金算入が認められる可能性があります。

 

いずれにせよ、実際の退職金を支給するタイミングの3年程度前から準備しておかなければ、高額な退職金の損金算入は認められにくいのが実情です。

 

まとめ

退職金は損金算入することによって節税効果が大きく、退職金を支給される従業員や役員にとっても通常の所得よりも税制上のメリットが大きくなっています。

そのため、企業にとっては「できる限り多くの退職金を支給し、その全てが損金算入できる」という状態がベストです。

 

退職金の金額は「最終報酬月額×勤続年数×功績倍率」で計算するのが一般的です。

しかし、この計算式は法律で決められているわけではありません。

しっかりとリサーチし、情報を蓄積すれば、同業他社の報酬月額を基準として、自社の報酬月額で計算した退職金よりもさらに高額の退職金が損金として認められる可能性もあります。

 

退職金の損金算入など、税務や会計でお困りの際は、丸山会計事務所までお気軽にご相談ください。

この記事の監修

丸山会計事務所 税理士 代表 丸山和秀

税理士
丸山会計事務所代表 丸山 和秀

税制支援20年以上、不動産税務、事業承継&M&A、法人資産税、設備投資時の優遇税制を得意とする。
「ともに未来を描く」を経営理念として、お客様と一緒に未来を描くことができる、提案型の“攻める税理士”として、経営ビジョンやニーズに寄り添い、適切なタイミングで、お客様のお悩みを解決するご提案を行う。

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