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2023年税制改正|生前贈与制度の加算と相続時精算課税制度の変更点を解説

投稿日:2023年02月01日

2023年の税制改正によって生前贈与制度の加算と、相続時精算課税制度の内容が大きく変更となりました。

相続発生前の贈与については、相続財産として課税される範囲が大きくなる一方、相続時精算課税制度は今まで以上に利用しやすくなっています。

 

「子供や孫にどのようにして財産を渡すのか」に大きく関わる問題ですので、生前贈与の加算と、相続時精算課税制度の変更点について詳しく見ていきましょう。

生前贈与加算

生前贈与したものについて、贈与した人が亡くなった場合、亡くなる一定期間内に贈与を受けたものは「相続財産に加算しなければならない」決まりになっています。

これを「生前贈与加算」といいます。

2023年の税制改正によって生前贈与加算が変更になりました。

従来の制度と変更点について見ていきましょう。

 

税制改正前の特徴

変更前の従来の制度は、「相続税計算の際に過去3年間生前に贈与した分を加算する」というものでした。

例えば以下のような条件で相続が発生した場合の相続税を考えてみましょう。

  • 被相続人の財産:預金1億円
  • 相続人:子供2人
  • 毎年子供2人に対して110万円ずつ贈与をしている

相続財産=預金1億円+(生前贈与加算110万円×2名×3年分)=1億660万円

相続人が長男と長女だけであれば、相続税額は2人で892万円となります。

税制改正による変更点

2023年の税制改正によって、生前贈与加算における変更点は次の2点です。

  • 加算される期間が3年から7年に延長
  • 相続開始前4~7年の間に取得した財産から100万円を控除できる

それぞれの変更点について詳しく解説していきます。

 

加算される期間が3年から7年に延長

税制改正によって加算期間が3年から7年へと延長されました。

これまでは被相続人が死亡する前の贈与は、直近3年分しか相続財産に加算されませんでしたが、制度の変更によって直近7年分の贈与が相続財産として加算されることになります。

ただし、直近7年分が加算されるようになるのは令和12年に相続を開始した分からです。

令和12年以前に相続を開始した場合には、加算される期間は次のようになります。

  • 令和9年相続開始:最長4間加算
  • 令和10年相続開始:最長5年間加算
  • 令和11年相続開始:最長6年間加算
  • 令和12年相続開始:最長7年間加算
  • 令和13年相続開始:7年間加算

令和13年以降に死亡した場合には、完全に7年が加算されることになります。

相続開始前4~7年の間に取得した財産から100万円を控除できる

相続を開始する4年〜7年前に贈与によって取得した財産は、取得価格の合計から100万円を控除できます。

年間100万円ではなく、4年前〜7年前の間に取得した財産の「合計額」から100万円を控除できるだけですので注意しましょう。

 

例えば4年前〜7年前の間に440万円の贈与を受けていた場合、100万円が控除されて340万円が相続財産として加算されます。

改正後の方が相続税は高くなる

制度の改正によって相続財産として加算される期間が長くなったため、改正後の方が相続税は高額になります。

 

先ほどと同じ、以下の条件で相続税のシミュレーションをしてみましょう。

  • 被相続人の財産:預金1億円
  • 相続人:子供2人
  • 毎年子供2人に対して110万円ずつ贈与をしている

相続財産=預金1億円+(生前贈与加算110万円×2名×7年分)-控除100万円※=1億1,440万円

相続税額は1,048万円となります。

従来の制度よりも相続税額は156万円多くなります。

※現行の大綱ベースでは100万円の控除は被相続人ベースの金額となり、100万円のみになる可能性が高いです。

 

なお、この3年から7年への期間の変更が適用される贈与は、令和6年1月1日以降の贈与の為、令和4年、令和5年については贈与金額を少し多めにすることも検討する必要があります。

 

相続時精算課税制度

相続時精算課税制度とは、60歳以上の父母または祖父母などから、18歳以上の子または孫などに対し、財産を贈与した場合において選択できる贈与税の制度です。

参考:国税庁|No.4103 相続時精算課税の選択

 

60歳以上の父母や祖父母が子供や孫に贈与を行った場合、贈与を受けた際には贈与税を支払いますが、その後贈与をしたものが亡くなった時に贈与を受けた財産を相続財産として相続税を計算し、すでに支払った贈与税を精算します。

この制度は2,500万円までの控除枠があるので、2,500万円の範囲内であれば何度贈与を受けても実質的に贈与税がかかりません。

 

税制改正前の特徴

2023年の税制改正前は、相続時精算課税制度には次のような特徴がありました。

  • 一度利用すると110万円の暦年贈与による非課税が認められない
  • 少額の贈与でも贈与税の申告をしなければならない

 

最大の特徴は、一度、相続時精算課税制度を利用すると、年間110万円まで認められている非課税の贈与枠である110万円の暦年贈与が認められなくなるという点です。

そのため、年間110万円ずつ暦年贈与を使用して贈与をした方が、相続時精算課税制度を利用するよりもメリットがある場合もあります。

 

例えば暦年贈与を使用して年間110万円の贈与を23年間行った場合には、合計2,530万円の贈与を非課税で行えます。

しかし、相続時精算課税制度を利用した場合には、2,500万円までしか非課税で贈与ができない上に2,500万円には相続税がかかります。

そのため被相続人が暦年贈与を使用して長生きする期間が長い場合には、相続時精算課税制度にはメリットがありませんした。

また、精算課税制度を使って贈与した財産は、相続税の計算時に財産を全て、贈与時の価額で持ち戻して相続税の金額を計算することから、贈与時から相続時までの間に値上がりをする財産、その贈与した財産から収益を生む財産などのようなものでない限り利用が進まない状況でした。

また、相続時精算課税制度を利用した後に贈与を行った場合には、どんなに少額の贈与でも、贈与税の申告が必要でした。

税制改正による変更点

精算課税制度については、精算課税制度の2,500万円の非課税金額の他に毎年110万円の非課税金額を作りました。

 

今までは精算課税制度の特徴であった精算課税制度を選択すると毎年の110万円の非課税枠が無くなってしまいましたが、令和6年1月1日以降の贈与については、精算課税制度にも110万円の非課税枠が創設されます。

 

そしてその110万円については、相続財産への持ち戻しも無く、非常に使い勝手が良いものとなっています。

今後は精算課税制度については今まで以上に使い機会が増えると思われます。

 

税制改正を受けての今後の対応

暦年課税制度の3年から7年間への生前贈与加算制度の期間の延長については、相続又は遺贈により、相続財産を取得する者に限定されているため、通常孫などは相続又は遺贈により財産を取得しないため、今までどおり、暦年贈与の方が、有利になると思われます。

 

精算課税制度で間違い易いポイントとしては複数の精算課税適用贈与者(2人以上の場合:例えば父、母など)から贈与を受けた場合には、110万円の贈与税の非課税金額が、財産金額に応じて按分となりますので、注意が必要です。

2人の精算課税の贈与者から贈与を受けたからと言って、贈与税の非課税枠が2倍の220万円になる訳ではありません。

しかし、暦年贈与と、精算課税制度の場合には非課税枠は、暦年贈与と精算課税制度に一つづつ付く予定となります。

 

例えば、令和7年に父から精算課税制度(既に令和6年で2500万円の非課税枠は使用済み)で200万円贈与をもらい、祖父から200万円の贈与を受けた場合には、子供が納める税金は、27万円(18万円+9万円※)になる予定となります。

 

※父からの精算課税贈与:(200万円-110万円)×20%=18万円

祖父からの暦年贈与:(200万円‐110万円)×10%=9万円

 

そして、祖父からの財産については通常祖父の相続の時には、孫は相続又は遺贈で財産を取得しないため、3年から7年への相続財産への持ち戻しの対象になりませんが、父の相続の時には、2,500万円の精算課税適用財産については持ち戻しの対象になりますが、110万円の非課税金額については持ち戻しの対象になりません。

 

このように贈与一つにしても、どのような形態をとるかにより、贈与税及び今後の相続税について、大きな影響を及ぼします。

まとめ

税制改正によって、生前贈与加算は加算期間が3年〜7年に、相続時精算課税制度は暦年課税制度の110万円の非課税制度が創設されました。

「どんな財産を移転したいのか」「被相続人の年齢からどのような対策を、どれぐらいの時間をかけて対策するか」によって、相続人に対して財産をどのような形で残すのがベストなのかは異なります。

相続、贈与についてお悩みの方は丸山会計事務所までお気軽にご相談ください。

 

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この記事の監修

丸山会計事務所 税理士 代表 丸山和秀

税理士
丸山会計事務所代表 丸山 和秀(1986年生まれ)

税制支援20年以上、不動産税務、事業承継&M&A、法人資産税、設備投資時の優遇税制を得意とする。
「ともに未来を描く」を経営理念として、お客様と一緒に未来を描くことができる、提案型の“攻める税理士”として、経営ビジョンやニーズに寄り添い、適切なタイミングで、お客様のお悩みを解決するご提案を行う。

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